第150号
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大学・研究機関の研究成果実用化が加速―契約金額121億元に

2019年3月22日 劉垠(科技日報記者)

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科学技術研究成果の平均取引契約額が顕著に上昇し、その額は前年比24%増の122万元に達している。うち、技術出資額が激増し、値踏み出資契約額は前年比1.1倍増の52億元に、平均契約額は前年比1.3倍増の1000万元以上に達した。(画像は取材対応者提供)

 2017年、中国の2,766の研究開発機関、大学などによる譲渡、許可、値踏み出資などの方法での、科学技術研究成果を実用化する契約の金額、件数が急増した。契約額は合わせて前年比66%増の121億元、契約件数は同比34%増の9,907件だった。

 中国科技成果管理研究会や国家科学技術評価センター(国家科技評估中心)、中国科学技術情報研究所(中国科学技術信息研究所)がこのほど北京で発表した「中国科技成果転化2018年度報告(大学・科学研究院所篇)」によると、科学技術研究成果実用化関連の政策・法規の段階的な実施が促進されるにつれ、各研究開発機関、大学の研究成果の実用化も日に日に活発になり、顕著な進展と成果を見せ、実用化の件数は急増し、その質も向上し続けている。

実用化の質が向上し、科学技術研究成果が利益を創出

 科学技術研究成果の実用化の件数が急増すると同時に、実用化の質も向上し続けている。報告によると、科学技術研究成果をめぐる取引の平均契約額は明らかに上昇し、実用化関連の契約の平均金額は前年比約24%増の122万元(1元=約16.58円)だった。また、実用化をめぐる契約による収入が1億元を超えた機関は前年比55%増の31件だった。

 国家科学技術評価センターのセンター長で、中国科技成果管理研究会の常務理事長の解敏氏によると、年度報告は、中国全土の2,766の公立研究開発機関、大学をサンプルとし、それらの機関の科学技術研究成果の実用化の進展、効果、典型的な経験、存在している主な問題などを総合的に分析した。

 解氏は、「報告は、テクノロジーを通してより多くの経済的利益が生まれていることを示している。科学研究員が獲得した現金や株式の所有権、奨励などの金額は大幅に増加し、2017年は前年比24%増の47億元に達した。政策のボーナスの分配が顕著に進んでいる。『大衆による起業・革新(イノベーション)』を支える能力は強化されたというのが、2017年の中国における科学技術研究成果の実用化の大きなポイントとなった。例えば、大学の技術やサービスを提供する能力は継続的に強化され、技術譲渡、技術開発、技術コンサルティング、技術サービスなどの水準は向上し続けている。2017年、企業と共同で立ち上げられた研究開発機関、技術移転機関、実用化サービスプラットフォームの件数は前年比37%増の6,457件だった」と説明する。

形式は多様化し、参考となる経験も生まれる

 上海交通大学は科学技術研究成果実用化制度体系を整備し、複数の実用化スタイルを生んだ。山東理工大学が開発した「ノンフロンポリウレタン化学発泡剤」は、実用化により5億2,000万元の利益が生まれ、一つの成果の実用化が生んだ利益としては最高額を記録した。中国農業科学院哈爾濱(ハルビン)獣医研究所は重点製品研究開発計画を策定し、産業の需要を満たす複数のハイバリュー成果を実用化してきた。

 解氏は、「一部の機関は政策に合わせた文章をすぐに発表し、実用化の環境を継続的に改善している。一部の機関は、市場の需要に焦点を合わせ、ハイバリューの成果の産業化を促進し、テクノロジーイノベーションの出どころの設計を重視し、数多くのハイバリュー科学技術研究成果を生み、政策を追い風として、実用化を継続的に実現している。その他、一部の研究開発機関は、技術移転機関を立ち上げ、科学技術研究成果の実用化を対象にしたサービスを提供している。イノベーションをめぐる産学研連携により、成果の実用化効率が向上している。さらに、一部の機関は、科学研究員に対する奨励を強化し、審査・評価体系を整備し、イノベーション奨励メカニズムなどの施策を制定し、科学技術研究成果の実用化の原動力を強化している」と説明する。

 報告は、大学や科学研究所が科学技術研究成果の実用化において直面している問題や課題を、避けることなく指摘しており、注目に値する。例えば、一部の科学技術研究成果の実用化関連政策には不備があり、実施が困難だ。「中華人民共和国科技成果転化(実用化)促進法」は、研究開発機関や大学は、価格交渉や発足取引、オークションなどを通して科学技術研究成果の価格を確定することができると規定しているものの、実際には、事業機関国有資産管理制度が職務科学技術研究成果の譲渡と値踏み出資は評価が必要と規定しており、多くの機関の評価業務は形式的なものにすぎない状態だ。

 もう一つの決して見逃してはいけない問題は、科学技術研究成果の実用化を対象にサービスを提供している機関や人材チームが不足している点だ。技術移転専門機関を設立している機関はわずか9.5%(264機関)にとどまっており、技術移転に特化したサービスの能力が明らかに不十分だ。報告の調査研究によると、技術移転専門機関を設立していない機関の多くは、テクノロジー管理部門が成果の実用化業務を担い、成果の実用化管理、サービスに従事する専門の複合型人材が不足している。その他、科学技術研究成果の実用化を促進する評価体系が効果的に構築されておらず、実用化の需要を満たす高い水準の研究成果の供給が不足しており、企業の実用化能力は依然として低いという問題もある。

 そのため、報告は、成果の実用化関連の政策整備や専門のサービス機関、人材の育成、科学研究機関や科学研究員の審査・評価体系の構築、科学技術研究成果源の供給の質向上などの面から、対策に関する提案を示している。

 報告は、関連当局が「国有資産評価管理弁法」などの政策を改訂、整備し、科学技術研究成果の実用化規律に適した国有無形資産管理規定を制定し、実用化を促進する審査・評価体系を構築し、研究開発機関、大学などの機関、科学研究員の分類評価改革を秩序立てて推進し、研究成果の実用化を機関や人員に対する評価、科学研究資金支援の参考、根拠とするようにと提案している。


※本稿は、科技日報「簽下121億元合同,高校院所実用化路上跑得快」(2019年3月7日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。