2009年07月06日-07月10日
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中国と日本、GDPに一喜一憂すべきでない

2009年07月10日

 「中国の国内総生産(GDP)が日本を追い抜く」との情報が、中日両国に大きな衝撃を与えている。危機に遭遇しても、中国のGDPは減少せずに増加し、ここから少なくとも中国の経済発展の健全さがうかがえる。中国の情況を受けて、日本はこの情報を非常に重視するようになっている。「環球時報」が10日伝えた。

 実際には、喜びであれ落胆であれ、GDPを何度も何度も比較して一喜一憂することは望ましくない。1990年以降、国際連合はGDPを超越した発展観を打ち出して、寿命、教育、一人あたりGDP平均値などの指標を参考にし、加重平均により算出した、生活の質を反映する人間開発指数(HDI)を採用するようになった。GDPなどの伝統的な視点だけに基づいて行われる評価システムは過去のものになり、特にGDP成長率ばかりを強調することには非常に大きな誤りがあるとされるようになった。

 「中国のGDPが日本を追い抜く」との情報について考えてみると、現在のこうした変化は(不可逆的な現象だとみなされはするが)中国と日本の世界経済における基本的な立ち位置を変えるものではない。中国は進歩してはいるものの、依然として相対的に立ち後れた発展途上国であり、まだ満足できるほど十分な資本を備えていないし、手柄を自慢し着飾るほどの資格もない。GDPはやや増加しているが、これは最大限に評価しても万里の長征における一歩を踏み出したものに過ぎない。これからも実際に基づいて適切に行動し、計画に力を注ぎ、苦難の中で奮闘する精神を維持しなければならない。

 日本の懸念はもっともである。中国経済はここ数年、新たな段階への飛躍を繰り返し、GDPはドイツを抜き、米国債の保有残高は世界一となり、こうした勢いは減速することがなく、当然のことながら日本にとって圧力となっている。全体的にみて、中国は経済面だけでなく、政治、社会、文化の面で、特に国際的な地位の面でここ数年来全面的に上昇している。さきの情報はこうした総合的な変化を敏感に反映したものであり、日本が反応するのは当然だといえる。だが日本は世界2位の先進国であり、GDP規模の変化によって自信を喪失するほど弱ることはない。日本の懸念が強くても、これは大きな時代状況を反映したものであり、GDP問題の占める割合はそれほど大きくはない。

 最も強調しなくてはならないのは、発展観がGDPの変化にとどまらなくなったように、中日関係も過去のような勝ち負けを競うゼロサムゲームの局面を超越して、戦略的互恵の方向へと重要な一歩を踏み出したことである。各種のデータが示すように、日本が中国の成長によって得た利益は、今後もたらされるかもしれない損失をはるかに上回る。中国と折り合いの悪かった小泉純一郎元首相ですら、「中国の発展は脅威ではない」と繰り返し述べている。こうしたことから日本が中国のGDPや社会経済の全体的な成長の中で有利な位置に立っており、大きな利益を占めていることがうかがえる。

 中日両国の間には、質の高い戦略的互恵関係が形成されつつある。相互に補完しあい、長期にわたり磨き上げられた、最も合理的な配置の戦略的互恵関係だ。軽工業、従業などの従来型産業の成長であれ、省エネ・環境保護などの進行型産業の成長であれ、両国が相互に依存しあい、互いに協力すべきであることは明白だ。

 中国は不振にあえぐ日本を見たいとは思わない。中日両国の強い連携は中国の願いでもあるからだ。日本も中国のGDPおよび全体的な経済の急速な伸びを願っている。中国の牽引作用は日本にとって間違いなく「福音」だからだ。両国はこれからの世界経済の舞台で、気持ちの通い合ったダブルスのパートナーになろうとしており、どちらかが好調な時やラッキーな時には双方にとってプラスになり、どちらかが不調だったり不運だったりした時には双方が損害を被ることになる。

 注意すべき点は、中日のこうした協力には波及効果があって、東アジアはもとより世界経済のムードにも影響し、互恵や相互利益の方向に向かって発展を続けるということだ。中日両国はGDPの比較に躍起になり、一喜一憂すべきではない。それよりもお互いの好調ぶりを両手を挙げて歓迎すべきである。互恵の枠組はすでに固まっているのだから。

(筆者は日本JCC新日本研究所の庚欣副所長)

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