2010年05月10日-05月14日
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コウモリの飛行 エネルギーシステムの進化がカギ

2010年05月14日

 コウモリは哺乳動物でありながら、なぜ鳥類や昆虫のように飛ぶことができるのだろうか。この問題をめぐり、中国科学院(科学アカデミー)昆明動物研究所の張亜平院士がこのほど、エ ネルギー代謝の観点からコウモリの飛行の秘密を解明した。「科技日報」が14日伝えた。

 張院士とその指導する博士課程の沈永義さんは、動物が飛行時に消耗するエネルギーは走行時の3-15倍であることに注目し、飛 行には骨格などの形態の変化のほかにエネルギー供給システムの高効率化が必要であり、飛行時のエネルギー必要量の急激な増加に対応できるようにならなくてはいけないことをつきとめた。ミ トコンドリアは細胞のエネルギー工場であり、酸素呼吸のはたらきを通じて生物体にエネルギーの95%を供給し、動物の運動に必要なエネルギーや動力を供給するエンジンだ。研究チームの仮説では、ミ トコンドリアのエネルギー生産システムの進化が、コウモリが飛行能力を獲得するようになったプロセスと密接に関連しているという。同チームはゲノムの比較分析を通じて、コ ウモリが飛行能力を獲得するプロセスの中で、ミトコンドリアの酸素呼吸のはたらきに関連するゲノムが選択されて、ミトコンドリアと細胞核とで構成されたゲノムがともに進化し、飛 行能力獲得プロセスにおけるエネルギー必要量の急激な増加に対応できるようになったことを証明した。

 この研究成果は先月26日に世界的な学術刊行物「米国科学アカデミー紀要」(PNAS)のオンライン版に発表された。同アカデミーの専門家はこの研究を高く評価し、非常に優れた、か つ人をワクワクさせる研究で、ミトコンドリアの分子生物学的側面や進化、飛行に関する分子の適応メカニズムの解明にとって幅広い意義があると評する。

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