2010年12月20日-12月24日
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中国工程院 三峡ダムプロジェクトに対する評価報告を発表

2010年12月20日

 三峡ダムプロジェクトは1993年に起工し、何万人もの建設者による努力を経て、現在までにほぼ完成した。しかし、「三峡ダムプロジェクトの建設前に行われた論証は科学的だったのか?」「プロジェクトの建設により、ダム地域の水質汚染が悪化したのではないか?」など、プロジェクトに対する疑問の声は後を絶たない。中国工程院はこのほど、「三峡ダムプロジェクト段階性評価報告(以下、評価報告)」を発表し、三峡ダムプロジェクトの建設と運行に関する全面的な評価を行うとともに、プロジェクトに関する多くの疑問にも正式に回答した。「科技日報」が19日に伝えた。


 評価報告によると、プロジェクト建設前に10のテーマをめぐって行われた論証は、全て正確、又はほぼ正確だったと言え、それぞれの論証の結論と予測指標は、程度は異なるものの、実際の状況との近似度が高かった。それぞれの論証は、大まかに以下の3種類に分けることができる。

 (1)主にエンジニアリングに関する内容で、地質と地震、水文と洪水防止、枢軸建築物、電力系統、機械・電力設備の5テーマに属するもの。これらの論証の結論と予測指標は、実際の状況との近似度が高かった。ただし、土砂の予測指標は実際の状況とやや食い違いがある。これは、論証において土砂問題の複雑性を十分に考慮し、結論の確実性・信頼性を保証するために余地を比較的大きく残したためだ。現在、三峡ダムへの土砂流入はすでに6割減少した。このため、論証の「ダムの有効貯水量は長期的に保つことが可能」という結論は合理的で信頼できるものだ。

 (2)主にプロジェクト管理に関する内容で、水上運輸、移民、財務、経済に関するもの。これらの論証の結論の一部と予測指標は、実際の状況とそれぞれ程度は異なるものの食い違いがあり、それぞれの予測指標の近似度はそれほど高くなかった。水上運輸では、長江の水上運輸の急速な発展に対する予測が足りなかった。移民に関しては、物理指標と環境容量の予測が実際の状況と比較的大きな違いがあった。この原因は、三峡プロジェクトの建設期間が長く、また、改革の深化、開放の拡大、経済社会の急速発展という時期にあったため、当時は20年間にわたる経済社会の発展指標を正確に予測することが難しかったためだ。

 (3)科学とエンジニアリングに属する内容、又は経済発展に密接に関わる生態環境に関するもの。現在、生態環境問題とその影響は、論証で報告された予測範囲を基本的には超えていない。定量予測ではいくらか食い違いはあるものの、大きな悪影響を生み出すまでにはいたっていない。

 予測が足りなかった、又は予期していなかった問題は以下のとおり。▽ダム地域の構造的な汚染が突出し、汚染物の排出量が予測を大きく上回っている▽影響地域、上流地域での汚染物排出と水質への悪影響を予期していなかった▽農村の面源汚染への予測が足りなかった。

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