2011年09月26日-09月30日
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新型運搬ロケット「長征2号F」の特徴

2011年09月29日

 実験用宇宙ステーション「天宮1号」がいよいよ打ち上げられる。今回「天宮1号」を宇宙に送り届けるキャリア・ロケット(運搬ロケット)は、「神の矢」と称される「長征2号F」だ。人民日報が29日に伝えた。

 3年前の有人宇宙船「神舟7号」打ち上げ時に用いられた「長征2号F」と比べ、今回の「天宮1号」打ち上げ用ロケット「長征2号F」は、170項目にのぼる技術課題に改良が施されたという。有人宇宙飛行プロジェクトキャリア・ロケットチームの総設計師を務める荊木春氏は「大掛かりな改良によって、ロケットは全く新しく生まれ変わった」と話す。

 ▽「天宮1号」の大きさに合わせ、ロケット整流カバーも大型化

 荊氏によると、改良版「長征2号F」ロケットは、「天宮1号」は、実験用宇宙ステーションと有人宇宙船の2種類を打ち上げる機能を備えており、運搬能力は実験用宇宙ステーションが8.6トン、有人宇宙船が8.1トンと、これまでの「長征2号F」に比べ、それぞれ0.6トンと0.1トン向上した。

 今回打ち上げられる「天宮1号」は、無人で打ち上げられるため、打ち上げロケットにはエスケープ・タワー(緊急用脱出装置)は取り付けられていない。

 「天宮1号」打ち上げ用ロケットが外観上で最も大きく変わった点は、「整流カバー」だ。整流カバーはロケットの先端に装備され、「ロケットの王冠」と呼ばれている。ロケット打ち上げ前には、地上で宇宙船や衛星を保護し、これらの温度、湿度、清潔さを一定に保つ役目を果たし、ロケットが打ち上げられ、大気圏を突破する際には、宇宙船や衛星が空気抵抗や熱による損傷を受けないよう守る。

 ▽「頭脳」がオールリニューアル、軌道突入精度アップ

 荊氏は、改良型「長征2号F」ロケットの制御システムは全面的に改良されたと強調した。従来の「長征2号F」と比べ、計画、原理、具体的設備、ハードウェアなど各面において、非常に大きく変わっており、ロケットの「頭脳」がオールリニューアルされた。

 ロケットの制御システムの核心をなす慣性測量システムは、ロケットの軌道突入精度の鍵を握るコア部品でもある。改良前のものと比べ、改良型「長征2号F」の制御システムは、2組の慣性測量システムを測量装置として採用している。

 ロケットチームの宋征宇・副総設計師は誘導方式について、「今回のロケット誘導方法は、反復誘導法(Iterative guidance)を始めて導入した」と話した。

 反復誘導法は、コンピュータ技術や最先端制御理論の発展に伴い登場した、適応性の高い誘導技術であり、ロケットの速度、位置、予想軌道突入ポイントなどに基づき、絶えず自らの飛行軌道の調整を続ける方法という。

 ▽信頼性・安全性指標ともに各種ロケットで最高

 整流カバーの外形が変わったほか、ロケットタワー部分の推進補助ロケットの先端の形も、従来の楕円体形から錐体形に変わった。荊氏は「推進燃料をより多く搭載する目的で形の改良が行われた。これにより、ロケットの運搬能力が100キログラム以上アップした」と語った。

 改良型「長征2号F」ロケットでは、タワー部分の動力システムにおいても、15項目の技術改良が行われ、ロケットの信頼性が高められた。同ロケットの信頼性指数は0.97、安全性指数は0.997に達し、国内の各種ロケットの中で最も高い。

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