2011年10月10日-10月14日
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軍事医学科学院、72時間不眠の薬を開発

2011年10月17日

 中央テレビの報道によると、中国人民解放軍最高軍事医学科学研究機構の軍事医学科学院は、院の創立60周年の式典において、近年研究開発した600件以上の新技術と成果を発表した。「夜鷹」と呼ばれる青色の錠剤は、服用後72時間だるさや眠気を催すことがなく、かつ正常な思考と体力を維持できるという。同薬品の最大の用途は、部隊の特殊任務の実行だ。夜鷹の登場により、ネットユーザーの注目が集まっている。あるネットユーザーは、「こんなすごい薬があるなら、試験前に飲めばいい。苦しい時の神頼みより効果があるだろう」と書き込んだ。銭江晩報が16日に報道した。

 杭州市の精神科の睡眠研究専門家である、浙江大学医学院付属第二医院精神科の李恵春主任医師、浙江省立同徳医院精神科の馮斌主任医師を取材し、同薬品と睡眠について質問した。

 ◆人は眠らなければどうなるか?

 --実験により、危険性を証明

 かつて米国の科学者が200時間不眠の実験を行おうとした際に、ピーター・トリップさんが自ら参加を申し出た。その結果、ピーターさんの神経に異常が出たのは3日目だった。何もおかしなことがないのに、腹を抱えて笑う。何も悲しいことがないのに、声をあげて泣く。さらに自分の頭に帽子がかぶさっており、苦しいと言う。5日目になると、ピーターさんは発狂し叫ぶようになった。誰かの体を虫が這い回っていると言い、別の都市の火災にあった家から逃げてきたと言う。200時間後、ピーターさんは精神病患者のようになった。実験終了後、ピーターさんは9時間睡眠した。

 200時間が困難ならば、72時間ではどうか。李主任医師は、「海外では、長時間不眠でも疲れを感じない薬の研究が続けられている。結局のところ、これらの薬の原理は中枢興奮剤と類似している。中枢神経の興奮により、疲れを感じさせないのだ。日常生活では、濃いお茶、コーラ、コーヒーなどに同様の効果があるが、カフェインやカテキンによる中枢神経の刺激が原因だ。また多くの覚せい剤にも、中枢神経の刺激による興奮作用がある」

 ◆1日に必要な睡眠時間
 --個人差により睡眠時間は異なる

 科学研究によると、個人の体質が異なるため、必要とされる睡眠時間も異なってくる。嬰児の睡眠時間が最も長く、毎日20時間が必要とされる。その後は年齢の増加に伴い、睡眠時間が短くなる。一般的に、小学生は9時間、中学生は8時間、成人は7時間、老人は6時間が必要とされる。

 薬の力を借りなければ、普通の人ならば24時間後に体の不調を感じる。李主任医師は、「人の心臓、胃腸、大脳の機能は、睡眠によって維持される。長時間睡眠をとらなければ、人によって異なる影響が出る。健常者は72時間睡眠をとらなければ、倦怠感、注意力散漫、いらだち等の症状が見られるようになり、感情的になりやすくなる場合もある。深刻な場合は、幻覚を見るようになり、痙攣を引き起こす人も一部出てくる。睡眠不足が一度だけならば、人体は回復活動を行うが、これが頻繁になると体が拒絶反応を起こす。例えば長時間睡眠をとらなければ、大脳の神経が休息をとれない。これが繰り返されれば脳に損傷が生じ、焦り、憂いといった気持ちの問題が現れる。そのため夜鷹(不眠薬)のような薬物を繰り返し服用すれば、大脳の損傷を招くだろう」と指摘した。

 馮主任医師は、「この薬を服用すると、人体は72時間の興奮状態に置かれるが、その後は虚脱状態に陥る。体の負担が大きければ、うつ病、情緒不安定、記憶障害、睡眠障害を引き起こす危険性がある」と説明した。

 これまでの研究によると、17時間不眠の際の判断力は、アルコール血中濃度が50mg/100ml(飲酒運転に相当)と同様になる。24時間不眠の際の判断力は、アルコール血中濃度が100mg/100ml(酒酔い運転に相当)と同様になる。

 不眠により大脳にどのような損傷がもたらされるのか。この点について、まだ十分な研究がなされていない。しかし長期的に不眠を強いれば、負荷がかかった状態に置かれることになるため、免疫系統、血圧、心拍に影響が出る。米国プリンストン大学の研究グループは、マウスを72時間眠らせない実験を行った。その結果、不眠によりマウスの海馬にストレスホルモンがたまり、新たな記憶細胞の成長を妨げることが分かった。

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