2011年10月17日-10月21日
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神舟8号と天宮のドッキング任務、リスクはこれまでで最大

2011年10月26日

 ドッキング目標機「天宮1号」と無人宇宙船「神舟8号」のドッキングがまもなく実施される。中国のドッキング技術の特徴とは?直面するリスクと試練とは?新華社が伝えた。

 ▽コストを抑えて効率よく

 中国有人宇宙飛行プロジェクトの周建平・総設計師は「中国のドッキング技術プランには、中国有人宇宙飛行プロジェクトがこれまで一貫して持ち続けてきた優位と特色が充分に現れている」と語る。

 米国とロシアがかつて、1度のドッキング実験のために2つの宇宙船を打ち上げていたのに比べ、中国は1つのドッキング目標機(天宮)に3つの宇宙船を相次いでドッキングさせる、という方法を取るため、2回分の打上げが不要となり、コストが大幅に削減できた。

 このほか、この方法を使えば他に3つの問題が解決できる。

 第1に、宇宙実験室の開発プロセスが短縮される。天宮1号の各性能指標は宇宙実験室の開発に向けて設計されたものであり、宇宙実験室は主に天宮1号を基礎として建設される。
 
 第2に、宇宙ステーションの重要技術に対する事前の検証と経験の蓄積ができる。天宮1号は、宇宙ステーションで必要となる再生式環境制御・生命維持技術のうち、要となる技術(制御技術、電源技術、推進剤タンク技術など)のテストを行う。ある程度の改良・改善が行われた後、将来的には宇宙ステーションに直接応用することができる。

 第三に、天宮1号上で多くの科学実験を行うことができる。

 米国・ロシアは40年以上前にはすでにドッキング技術を掌握していた。13年前、16カ国が参加する国際宇宙ステーションの1つ目のモジュールが打ち上げられた。中国は新参者であり、世界との差は大きい。周総設計師は「我々は3歩分の距離を2歩で進み、コストを抑えて効率的に多くの成果を上げることで、初めて飛躍的発展を遂げ、他国に追付くことができる」と語る。

 ▽高速で移動する中でのドッキング、多くの試練

 ドッキングの技術は理論上では主に軌道ダイナミックスと制御理論が基礎となっているが、実際に実現するのは容易いことではない。中国は海外の成熟した技術を導入したことがなく、ゼロから研究をスタートするしかなかった。

 周総設計師によれば、中国人はこれにより、以下の3つの試練に直面したという。

 第1の試練は測量だ。2つの宇宙機の距離がわずか数十キロにまで近づいた時、観測制御ネットワークはそれぞれの相対的な位置をそれ以上正確に取得することができなくなる。このため、宇宙機同士が相互に感知し合い、徐々に接近しなければならない。マイクロ波レーダー、レーザーレーダー、画像測定など世界最新鋭の技術を採用しているものの、地上では宇宙空間を完全に再現することができないため、成功するかどうかは今回のテストで初めて検証される。

 第2の試練は制御だ。まず、制御の精度という点から見ると、ドッキングの前には、神舟8号を天宮との横方向のずれがわずか数センチ以内の範囲にコントロールしなければならない。また、今回打上げられる物は1キロ、1グラムの重さにいたるまで、全て綿密に計算されている。

 第3の試練はドッキングだ。複雑な測量と制御を経て、2つの宇宙機はますます接近する。最も緊張する瞬間だ。フック状をした宇宙機上の捕捉機関がもう一つの宇宙機を捕捉する。その後の引き寄せ、ロックなどの一連の動作は一気に行われなければならない。もし少しでもミスがあれば、毎秒7.7キロのスピードで飛行する宇宙機が重大な事故を招く可能性もある。

 周総設計師は「我々はこのドッキング任務が有人宇宙飛行プロジェクト史上、最大のリスクを持つ任務だと認識している。これまでにドッキングの経験が無く、またシステムが複雑なため、我々の認識が至らない部分もあるだろう。それこそが最大のリスクだ」と語る。

 これまでの宇宙事故のほとんどは事前に思いつかなかった点が原因となっている。周は「我々はまず、設計の正確さを保障し、地上でのテスト・検証を確実かつ充分に行い、品質を保証するべく全力を上げ、その上で予想外のアクシデントなどを充分に考慮し、しっかりと緊急対応マニュアルを作成するという構想で指導を行っている。宇宙事業に携わる者は、リスクに直面する勇気をもたなければならないが、盲目的に危険を冒してもならない」と語る。

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