2011年11月28日-11月30日
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人工皮膚、鉄腕アトムの誕生も夢じゃない?

2011年11月29日

 中国科学院合肥物質科学研究院合肥智能機械研究所は、最新のロボット用「人工皮膚」を発表した。これは3次元力を持続的に感知できる新型の「皮膚」である。
 人が触覚を通じて外界の物事を感知するのと同様、ロボットにとっても触覚は重要だ。よりスマート化されたロボットの設計と研究は、現在のスマート化研究の重要な方向であり、触覚センサー(人工皮膚)の研究はその重要な内容の一つだ。人型ロボットの3次元触覚センサは外部環境を敏感かつ正確にキャッチし、かつ柔らかな材質によりロボットのフレキシブルな動きを実現しなければならない。
 「3次元力を感知できる」とは、具体的な力を受ける部分と3方向からの力をリアルタイムで測定することだ。これには垂直方向のみならず、側面からの摩擦力もある。同技術は材料科学、ナノ技術、センサ技術、人工知能理論を総合的に応用したものだ。
 中国科学院合肥智能機械研究所の葛運建氏は、「人工皮膚はスマート化されたロボットの皮膚に用いられる。これはロボットに触覚情報を提供する、皮膚に似た触覚センサであり、外界から皮膚に加えられた力の情報を感知することができる。同研究所が研究した人工皮膚は、多方向から加えられる力の情報を連続的に測定できる点で秀でている」と説明した。
 葛氏によると、これまでのロボットの人工皮膚は1次元の力、つまり1方向からの力しか測定できなかった。これまでの人工皮膚は、柔らかい材料の上に一つ一つの単独のセンサを取り付けていた。昔の兵士が着用していた鎧を例とすると、センサの全てが硬く、持続的な測定を完全に実現することはできなかった。今回発表された新型の人工皮膚には、単独のセンサが存在しなく、一体化されている。例えるならば卓球ラケットのラバー部分や自動車のタイヤのようで、全体的に柔らかく伸ばすことも捻ることも可能となり、これまでの鎧に似たセンサの欠陥を補った。また、新型の人工皮膚の基礎材料は、新たに開発された流動成形が可能な電導ゴムである。生産方法は、鉄筋による骨組みを構築してからコンクリートを流し一つの建物とする、家の建築によく似ている。この人工皮膚は上下二層に網の目のような電動ポイントを敷き、その中間に新型の電動ゴムを流し込んで作られた。
 同分野の研究は現在注目を集めており、海外では米・英・日等の先進国がロボットに用いる皮膚の研究を重視している。中国では、清華大学、西安電子科技大学ハルピン工業大学ロボット研究所が、同分野の研究を行っている。しかし開発されたセンサは、人間の皮膚が持つ柔らかさと敏感度に達しておらず、コストが高く信号処理が複雑で、広い面積での持続的な測定に向かず、加工に高い技術が必要とされるといった問題がある。
 合肥智能機械研究所の今回の研究成果は、ロボットの敏感かつ正確な外部環境の感知を実現するのみならず、フレキシブルな動作を実現し、人間と安全かつ自然に接触することができる。圧縮性と高い敏感度を持つ人工皮膚、ナノ材料による人工皮膚の改良により、その他の性能が向上した。また多層式3次元触覚センサの構造設計、3次元力情報の処理モデル、量子力学の計算法による新型触覚センサの分離計算の面で、画期的な研究成果を得た。葛氏は、「国内外で、同様の方法や成果に関する報道は確認されていない」と語った。
 葛氏によると、863重点プロジェクトの「障害者・老人介護用の着用可能なスマート化ロボットのモデルプラットフォーム」において、人工皮膚の主な役割は力の感知とされている。人工皮膚を老人や障害者の膝に取り付ければ、介護ロボットが老人や障害者の膝関節運動を補助する際に、膝に加えられた力や関節の角度に関する情報をロボットに伝えることができる。介護ロボットはこの情報を参考に、老人や障害者の歩行支援をスムーズに行うことが可能だ。
 人工皮膚の応用は、スポーツ選手の練習にも応用できる。北京オリンピック期間中、智能所は国家陸上管理センターに、1次元力の感知が可能なデジタル陸上トラックを提供した。選手がこのトラックを走ると、地面にかかる圧力と歩幅を測定することが可能だ。「3次元力の測定が可能な人工皮膚を陸上トラックに応用したならば、選手のトラックに対する垂直方向の圧力のみならず、横向きの揺れや地面を踏み込む力を測定することができる。これによりスピードに影響している無駄な力を発見し、走る姿勢の改善や練習の質の向上を促し、成績向上につなげることができる」。
 新型人工皮膚の登場により、ロボットは顔と四肢の他に、筋肉と皮膚を得ることができる。人型ロボットと介護ロボットの発展、また航空、宇宙、先進製造、スポーツ、医療等の各分野における応用が期待される。人工皮膚は、具体的な国民生活における応用まで普及の可能性を秘めている。葛氏は、「本研究所の研究成果は、原理上のサンプルにとどまっている。実用性、安定性、信頼性、共通性等の面で、さらなる研究と改善が必要である」と語った。

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