2012年03月05日-03月09日
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大亜湾ニュートリノ実験で新たなニュートリノ振動を観測

2012年03月09日

 広東省・大亜湾ニュートリノ実験の王貽芳・首席科学者(中国科学院高能物理研究所所長)は北京で8日、同実験でこのほど新たなニュートリノ振動を観測し、その振動確率を測定したことを明らかにした。同結果に関する論文は7日に米学術雑誌「Physical Review Letters」に提出され、プレプリントはネット上で既に公開されている。自然界の最も基本的な物理パラメータを測定したこととなり、物質界の基本法則に対する新たな認識になると見られている。人民日報が9日に伝えた。

 王氏によると、ニュートリノとは電荷がなく、質量が極めて小さな素粒子であり、物質を構成する最小の基本単位のひとつ。電子ニュートリノ・ミューニュートリノ・タウニュートリノの3種類があると考えられており、これまでに見つかった素粒子12種類のうち、4分の1を占める。ミクロ的な素粒子物理学だけでなく、マクロ的な宇宙の起源・進化においても極めて重要な役割を果たすニュートリノは特殊な性質を持ち、飛行中に別の種類のニュートリノに変化することができる。これをニュートリノ振動と呼ぶ。

 原則的には1つの振動で2種類のニュートリノが互いに入れ替わるため、振動の種類は3種類と見られている。ニュートリノ振動の観測は1960年代から始まっており、当時は「太陽ニュートリノ問題」「大気ニュートリノ問題」などと呼ばれていた。その後2種類の振動は発見され、数多くの実験で証明されているが、3種類目の振動がまだ発見されていなかった。そのような振動は存在しないのではないか(振動確率ゼロ)とする理論的予測も出たほどだ。このたび発見された3種類目のニュートリノ振動は中国大亜湾原子力発電所で発生した大量のニュートリノから観測されたもの。

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