欧州合同原子核研究所(CERN)は北京時間4日午後、ATLAS(A Toroidal LHC Apparatus)実験およびCMS(Compact Muon Solenoid)実験により新粒子を観測したことを発表した。この新粒子は、世界の物理学者が長年追い求めてきた「神の粒子」と呼ばれるヒッグス粒子であると見られている。中国新聞社が報じた。
中国科学院高能物理研究所は4日午後、同実験結果に関するCERNの記者会見の様子をネット中継した。CERNの両実験に参加した同研究所の科学者は「ヒッグス粒子と見られる新粒子が観測されたことは一里塚的な意義を持ち、ミクロの世界を探索する上での大きな進歩と言える」とした。科学者によると、世界各国が協力するCERNの実験において、中国が提供している経費および中国人科学者の割合はわずか約1%だが、中国の果たした貢献は1%を大きく上回るという。
CMS実験に参加した中国科学院高能物理研究所の陳国明研究員は、「CMS実験で使われるミューオン検出器の3分の1および、全ての電磁カロリメータ用結晶は中国が開発し提供したものだ。また、シグナルとバックグラウンドを区別するための多変量解析の採用、粒子検出感度の向上などの面で、今回は中国チームの方法を採用したが、昨年の米国チームの方法よりも感度が3%高まった」と語る。
また、Atlas実験に参加した同所の婁辛丑研究員によると、Atlas実験の中国チームは実験に使う検出器の建造面で貢献を果たしたほか、実験データの物理分析にも参加したという。
上述の科学者は「CERNが発表したのは暫定的な結果であり、新粒子がヒッグス粒子であると最終的に確認されたわけではない」との見方を示す。多くの科学者はこの新粒子が「神の粒子」であるとの見方を強めているものの、この結果を科学的な厳密さで確認するには少なくとも1年以上かかり、新たな電子・陽電子衝突型加速器を建設して、さらなる研究を進める可能性もあるという。また、観測された新粒子が別の粒子である可能性もゼロではない。
英国の物理学者ピーター・ヒッグス氏により提唱されたヒッグス粒子は、素粒子の標準模型の中で最後まで未発見の粒子であり、科学界はこの粒子の存在を証明するため長年努力してきた。なかなか見つからず、極めて重要であることから「神の粒子」とも呼ばれる。その他の粒子に質量を与え、宇宙形成の基盤を作ったとされるヒッグス粒子は、素粒子物理学の標準理論において重要な意義を持つ。もしヒッグス粒子の存在が否定された場合、標準理論が大きく崩れることになるが、これまでヒッグス粒子の存在を信じ続けてきた科学界は、その発見が時間の問題だと見ている。