2012年10月01日-10月05日
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ノーベル賞選考委員を悩ます「神の粒子」発見

2012年10月09日

 今年7月4日、欧州原子核研究機構(CERN)が「ヒッグス粒子」とみられる新たな粒子を観測したことを発表した。「神の粒子」とも呼ばれるヒッグス粒子の最新観測結果は、ここ30年間で最も偉大な科学的発見の1つと見られているが、本日ノーベル物理学賞を発表する予定の選考委員にとって、これはなかなか頭を悩ませる問題のようだ。米サイト「Phys Org」の記事を引用し、中国科技網が報じた。

 2012年科学界最大のニュースは何といっても7月4日にCERNが発表したヒッグス粒子とみられる粒子の観測だ。数年前に建造されたCERNの大型ハドロン衝突型加速器の目的はまさに、この「神の粒子」を見つけることだった。この粒子の存在が予測される前、素粒子物理学の基本的な枠組みである「標準モデル」には質量がないという致命的な矛盾があった。1964年、ピーター・ヒッグス博士がヒッグス場というフィールドの存在を提起し、ヒッグス粒子が質量の源であると仮設を立てたことで、矛盾が解かれたのだ。

 ゆえに、7月のCERNによる発表は歴史的な意義を持っている。英国物理学会のピーター・ナイト会長は「同発見の物理学界における地位は、生物学界におけるDNAの発見に匹敵する」と語る。多くの人が、この発見はノーベル物理学賞に値するとの見方を示している。

 この発見が物理学界の最高賞を受賞できるかどうかは、発表まで誰もわからない。しかし、発見された粒子はまだ公式にヒッグス粒子であると確認されたわけではなく、一部の関係者らは態度を保留している。ヒッグス粒子ではない可能性もごくわずかながら確かに存在するためだ。キングス・カレッジ・ロンドンの理論物理学者、ジョン・ エリス氏は「ヒッグス氏はいつかノーベル賞を受賞するだろう。しかし今年ではない。まだ最終的に実証されていないからだ」と指摘する。

 また一方で、ヒッグス粒子であると確定されたところで、誰がノーベル賞を受け取るのか?という疑問の声もある。理論的には1964年、6人の物理学者が4カ月の間に同理論に関連する一連の文書を発表しているが、それぞれの研究は他人の研究を基にしたものだ。粒子の発見のプロセスとなるとさらに複雑だ。数千人の物理学者がCERNで研究に従事している。

 このように、この発見がノーベル賞を受賞するとしても、誰に賞を授与するか決定しなければならないという問題がある。フランス原子力委員会の物理学者・クライン氏は「ヒッグス粒子が最終的にノーベル物理学賞を受賞することはほぼ間違いない。ピーター・ヒッグス博士、同時期に同様の理論を発表したフランソワ・アングレール博士、CERNの3者に賞を授与するのはどうか」と建議する。ノーベル賞の受賞者は、1つの賞につき1年で最大3人(機関)の枠があり、かつ生存者にかぎられる。

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