2012年12月10日-12月14日
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宇宙空間での骨損失 中国が画期的な予防策を開発

2012年12月12日

 中国宇宙飛行士科学研究訓練センター宇宙医学基礎・応用国家重点実験室の李英賢氏が率いる研究チーム、香港中文大学、軍事医学研究院等の共同チームは、約4年の実験を経て、無重力環境での骨損失に関する系統的な分子医学研究を実施し、世界レベルの画期的な成果を獲得した。中国新聞社が伝えた。

 研究者らは同研究を通じて無重力および加齢性の骨形成能力の低下を引き起こす核酸の機能を発見し、これについて説明を行った。また実験の中で、同核酸を対象として開発した治療薬を使用し、模擬無重力および加齢による骨形成能力の低下、および骨損失を緩和した。同研究成果は北京時間12月10日、世界的な学術誌「Nature Medicine」のウェブサイト上にて発表された。

 長期的な宇宙飛行による人の健康への影響に関するリスク分析により、無重力による最大のリスクは骨損失であることがわかった。米国・ロシアの長期的な宇宙飛行任務において、さまざまな物理・薬物・栄養等の手段からその予防策が講じられてきたが、宇宙空間における骨損失の問題が宇宙飛行士を依然として苦しめている。宇宙空間の骨損失は、人類の宇宙長距離飛行を制約するボトルネックとなっており、月面基地の建設および火星探索の前に解決すべき、宇宙飛行士の安全・健康問題となっている。

 中国は現在、高齢化社会に突入している。老化と密接に関わる骨粗鬆症およびそれに伴う骨折など骨の疾病は、高齢者の健康と生活水準を著しく損ねている。

 専門家は、「中国宇宙飛行士センターが実施した無重力環境における骨損失の研究は、画期的な進展を実現した。中国宇宙飛行士の宇宙ステーションの長期滞在による骨損失の予防、および高齢者の骨粗鬆症の治療等の面で、確かな一歩を踏み出した」と語った。

 同研究成果はすでに国家発明特許に出願された。同研究チームは2012年に米国の整形外科医による年次総会に特別招待され、一連の報告を行い、第10回国際骨粗鬆症基金(IOF)大会でイノベーション団体賞を受賞した。

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