2012年12月24日-12月28日
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宇宙育種を専門家が解説:放射線の心配は無用

2012年12月27日

 宇宙育種とは一体何か?宇宙育種によって生産された食品の安全性に今、注目が集まっている。

 ▽宇宙船への搭載は宇宙育種の第一歩

 国家宇宙飛行育種プロジェクト首席科学者、中国農業科学院作物科学研究所宇宙育種センター主任の劉録祥氏は、「宇宙育種とは、宇宙の微小重力や放射線といった環境を利用し、生物の遺伝子に変化をもたらすというもので、突然変異が生じた種を地上に持ち帰った後、専門家による育成・選別などを経て、新たな品種を作り出す」と語る。

 ▽宇宙育種による農作物の変化は様々

 劉氏によると、宇宙育種を経た農作物の一部は果実が大きくなるが、これは性質を制御する遺伝子の様々な変化のうちの1つであり、作物の色や形、味なども変化する可能性があるという。「これまでに100種類あまりの品種を審査したが、様々な変化が見られた。宇宙育種を経た農作物を育成すると、性質も一部変化するが、変化はランダムに生じるため、コントロールすることはできない。宇宙育種を経た品種で果実が大きいものがあるが、これはそのような特徴のみを保留し、審査を経て販売しているということだ」。

 ▽放射線の心配は無用

 宇宙船に搭載された種は宇宙の放射線を浴びるが、育成された品種に危険性はないのだろうか?

 これについて劉氏は、「国連の国際原子力機関(IAEA)と食糧農業機関(FAO)は突然変異育種分野の技術を推進する共同機関を設立した。過去80年間の中で、同分野の安全性に問題が生じたことは無い。我々は人工的な手段を使って遺伝子の変化を加速しているだけだ。これは生物の進化の過程で起こる自然変異と本質的には同じであり、ただその頻度を高め、変異のバリエーションを増やしているだけだ」と語る。

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