2013年02月04日-02月08日
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北斗システム、電波干渉を防ぐ「電磁波シールド」の開発成功

2013年02月05日

 中国衛星測位システム管理弁公室の冉承其主任はこのほど、「中国の衛星測位システム・北斗(BDS、以下北斗システム)建設の第二段階はすでに完了し、アジア太平洋地域をカバーする安定的・継続的なサービス能力を備えた」と語った。中国の北斗システムの建設スタートは米国のGPSに丸20年遅れたが、発展のスピードは速い。技術面でどのような特徴を持つのだろう?ラジオ中国之声「央広新聞」が伝えた。

 米国のGPSは軍事用と民間用に分かれている。米国以外で使用されているのは民間用信号で、精度の高い軍事用信号は自国でのみ使用されている。軍事用信号の精度は約1メートル、第2世代GPSの使用が始まれば精度は20-30センチに達する。しかし、北大西洋条約機構(NATO)を含む他国に提供しているGPS信号の精度は10メートル以上に制限されている。

 中国の北斗システムもまた、軍事用と民間用に分かれている。北京大学地球・宇宙科学学院の焦維新教授は「北斗システムの測位精度は10メートル、速度精度は0.2メートル/秒、時間精度は10ナノ秒で、今後さらに向上する余地がある。特にアジア太平洋地域の測位精度ではGPSに負けない」と語る。

 北斗システムはユーザーに自分の位置を知らせるだけでなく、他のユーザーに自分の位置を知らせることもでき、ナビゲーションやモバイルデータ通信が必要な場面での使用に適している。例えば軍事面では、個人の戦闘能力を大幅に引き上げることが可能だ。山岳地帯・密林であれ、沙漠・荒野であれ、北斗システムの端末さえあれば兵士は自分の位置を把握し、自分の動きをリアルタイムで指揮部門に伝えることができる。指揮部門は兵士の動きを随時把握しながら指令を出し、方向やルートの間違いも防ぐことが可能だ。

 高密度かつ強力な電波干渉はこれまで、北斗システム建設における大きな難題だった。現在、世界は様々な周波数・強度の電磁信号で覆われている。北斗の実験でも、測位衛星と受信端末が干渉を受けた際、衛星と地上ステーション・各種端末間の通信に深刻な影響がもたらされ、使用効果が低減するという現象が頻繁に見られた。しかも、一部国家は精密誘導兵器の性能を弱めるために測位信号に干渉を与える研究を行っている。この問題を解決できなければ、中国の戦闘機やミサイルなど、ナビゲーションや測位に頼る兵器の役割を最大限に発揮できず、戦闘能力が下がる。例えば戦闘機は効果的なナビゲーションを受けられずに攻撃され、ミサイルは精確な攻撃ができなくなるといった具合だ。

 これを受け、国防科学技術大学・衛星測位センターは北斗システムへの電波干渉を防ぐ「電磁シールド」の開発に成功した。これは北斗システムの正常な運行に向けた保障となる。

 北斗システムを運用することは、中国の軍事費節約にもつながる。国防部(国防省)の研究報告によると、GPS設備を搭載した戦闘機1465機の戦闘能力は、GPS設備のない戦闘機1714機分の戦闘能力に相当するという。両者の差である戦闘機249機分のメンテナンス費は年間約70億ドルに達する。ある専門家は、「北斗システムの建設とカバー面積の拡大が進むに伴い、北斗システムは中国軍の戦闘力と効果を倍増させるだろう」と指摘する。

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