2013年04月08日-04月12日
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中国第29次南極科学観測隊 一連の成果を総まとめ

2013年04月10日

 中国第29次南極科学観測隊は9日、観測船「雪竜」に乗り、上海極地観測国内基地埠頭に無事帰還した。今回の観測において、南極科学観測隊は長城ステーション、中山ステーション、崑崙ステーション、雪竜で計53の科学観測および建設工事を完了し、各分野で大きな成果を手にした。人民日報が伝えた。

 1.アイスドームA地区、氷床深層コアの掘削に成功

 氷床コアは「古代の気候が記録された書物」、氷床深層コアは生きた化石と呼ばれ、太古の時代の気温・降水などの気候環境情報をとどめている。

 今回の観測で、中国人科学者はアイスドームA地区で初めて3.83メートルの氷床深層コアを掘削し、100万年以上に渡る地球の気候・環境変化の情報を獲得した。

 科学観測隊は計11.2メートル分の氷床深層コアを持ち帰った。中国は4年をかけて、計3000メートル以上の氷床深層コアを掘削し、100万年以上に渡る地球の気候・環境の変化に関する情報を取得する予定だ。

 2.宇宙望遠鏡のデータを獲得

 南極アイスドームA地区は、地球上で天文台による宇宙観測に最も適した場所だ。中国が独自に開発したAST3南極宇宙望遠鏡はここに設置され、南極で使用されている最大口径の光学宇宙望遠鏡となった。今回の科学観測期間に、隊員らは初めて宇宙望遠鏡の観測データ(昨年3月15日から5月8日にかけて撮影された約2万枚の写真)を獲得した。

 3.風力ロボットが活躍

 中国が独自に開発した初の風力ロボット「極地漫遊者」が、南極中山ステーション付近のアイスドームで、一歩目を踏み出した。

 同ロボットは風力発電により昼夜を分かたず歩行し、50センチ以上の高さを持つ障害物を跨ぎ、アイスドームの複雑な地形でマルチセンサー融合の自主ナビゲーション抑制、および衛星リンクによるリモートセンシングを行うことが可能だ。同ロボットは、スマートロボットによる科学観測ステーションの当直に向けた基礎固めを行った。

 4.氷床観測で重要な発見

 今回の科学観測で、科学観測チームは崑崙ステーション核心エリアおよび断面重要エリアで、アイスレーダーによる氷床観測を行い、世界で解像度が最大の3D深層氷床構造および地形に関するデータを獲得した。またアイスドームが底部で急速に「成長」する3Dレーダー画像の証拠を獲得し、アイスドームの安定性および界面の変化に新たな視野を提供した。

 科学観測チームはまた、中国が独自に開発した深層レーダーシステムおよびFMCW浅層高解像度アイスレーダーなどの設備を用い、アイスドームの観測を実施した。中国は米国に続き、同技術を把握した世界で2番目の国となった。

 5.南極海の断面調査を実施

 南極大陸は広大な南極海に囲まれている。科学観測チームは今回、東経73度の断面で、物理海洋・地質・地球物理・化学・生物の総合調査を実施し、海水・海底面・浅層・中深層から海洋環境変化の歴史とすう勢を全面的に反映した。

 観測結果によると、海洋最大の還流である南極環流の水温が上がっており、同時にその位置が高緯度に向けて移動しており、南極の氷と海水の相互作用が加速している。これらは、南極東部の氷河の消失に関する歴史、その世界気候変化との関係、生物および石油ガス資源の埋蔵量・分布状況の分析に、重要なデータを提供する。

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