2013年05月27日-05月31日
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様々な分野へ応用が広がる3Dプリンタ 中国の現状は?

2013年05月31日

 かつて「エコノミスト」誌に「第3次産業革命の代表的な生産ツール」と評された3Dプリンタを代表とするデジタル生産技術は近年、世界的なブームになりつつあり、注目が高まっている。従来の生産方式とは異なる特徴を持ち、理論的にはどの分野にも応用可能な3Dプリンタは今、科学技術界・産業界を刺激している。人民日報が伝えた。

 しかし、ブームの裏で様々な疑問も出て来る。3Dプリンタ技術は本当にそれほど素晴らしいものだろうか?中国と世界先進レベルとの差は?産業の将来的な方向性は?----

 5月29日から31日にかけて北京で開催された2013年世界3Dプリンタ技術産業大会で、上述の問題が提起された。

 ▽伝統的な生産方式の代替となるのは不可能

 3Dプリンタ技術は1980年代に米国で誕生したもので、正式名称を積層造形技術(Additive Manufacturing)という。材料を高温で溶かし積層させて造形するというもので、原材料を切り削り造形する従来の「切削加工」とは反対だ。

 華中科技大学材料科学・工程学院の史玉昇教授は「3Dプリンタはビル建設と同じように、低層部分から一層一層材料を積み重ねていくことで、最終的に立体物を造形する。理論的には、材料を粉末状にすれば、プラスチック、金属、陶器、砂などいかなる物質も『インク』として使うことができる」と語る。

 スピーディで、材料を無駄にせず、複雑な構造の物体を簡単に生産できる3Dプリンタ。これだけのメリットがありながら、なぜ誕生から30年たった今も大規模に普及していないのだろうか?

 中国3Dプリンタ技術産業連盟の羅軍秘書長はこれについて、「3Dプリンタ技術は、従来の生産技術を代替することができない。一部の製品の小規模生産や、金型の生産ではメリットがあるが、大量生産となると、3Dプリンタはスピードとコスト面で従来の生産モデルにかなわない。使える材料が単一的でコストも高いため、価格敏感性が低い製品にしか使えず、応用分野が限られる」との見方を示す。

 ▽中国の3Dプリンタ技術、設備・材料・応用分野などで世界と格差

 中国における3Dプリンタ技術の研究開始は比較的早く、1980年代には西安交通大学華中科技大学清華大学などの大学が研究を開始した。

 現在も中国の3Dプリンタ技術の研究は主にこれら3つの大学が担っており、西安交通大学は光硬化技術の研究を、華中科技大学はレーザ粉末焼結技術の研究を、清華大学はプラスチック積層技術の研究を重点的に行っている。

 史教授によると、中国製の3Dプリンタの機能はすでに世界先進レベルに近づいているが、設備の信頼性と材料開発の面で格差が見られるという。3Dプリンタの重要部品の一部は輸入に依存しており、国産部品で生産した3Dプリンタは安定性に欠ける。このほか、中国の材料の質・種類は米国やドイツほど豊富でなく、実験材料の多くも輸入に頼っている。さらに、応用面でも遅れており、国外では3Dプリンタ技術はすでに新製品の開発やバイオメディカル、宇宙・航空、映画・テレビ・教育・クリエイティブといった各方面で応用されているのに対し、中国では金型の出力、文化・クリエイティブ製品などの少数分野に限られている。

 史教授は、「3Dプリンタ技術の将来的な発展方向は、生きた臓器を生産することだ。人体が受容できる材料が見つかりさえすれば、ネット状の物体を出力し、この上で体細胞を培養することによって、人の臓器を生産できる」と語る。

 しかし、臓器の出力は今のところ未来のビジョンに過ぎず、材料・技術面でのさらなる研究、および生物・医学・コンピュータなど、各分野の学際的な研究が必要だという。

 ▽今後3-5年が発展の重要時期

 羅秘書長は「今は3Dプリンタ技術が産業化したばかりの段階であり、今後3-5年が発展の最も重要なチャンスとなるだろう」と指摘、「中国でも産業連盟が成立し、国内の3D業界は相互協力しながら発展するという構想を持った。今後3年以内に生産高は100億元に達するだろう」と予測した。

 羅秘書長はまた、「市場の突破口が開けば、国内の3Dプリンタ市場規模は少なくとも2倍以上のペースで成長を続け、世界の中心になる可能性もある」としたほか、「3Dプリンタ技術が社会やユーザーから受け入れられるためには、ハイエンドな工業レベルの応用に留まっていてはならない。3Dプリンタ写真館やオーダーメイドサービスなどは、3Dプリント技術の普及に役立つ。人々に3Dプリンタ技術を理解してもらうことは、今後の大規模な普及に向けた基盤となる」と述べた。

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