2013年06月17日-06月21日
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中国初の宇宙授業 その全過程を追う

2013年06月21日

 有人宇宙船「神舟10号」の宇宙飛行士の聶海勝氏、張暁光氏、王亜平氏は20日午前、地球上から300キロ以上離れたドッキング目標機「天宮1号」で、全国の青少年に向け神秘的な宇宙授業を実施した。新華社が伝えた。

 ◆シーンその一 宇宙遊泳

 神舟10号の宇宙飛行士の姿が10時11分、中国人民大学付属中学校報告ホールの大スクリーンに、はっきりと映し出された。

 王氏はまるで魚のように船内のカメラに向かい遊泳した。王氏は今回の宇宙授業の講師だ。指令長の聶氏は助手となり、講師の教材の管理、教室の秩序維持に力を貸した。張氏は今回の授業のカメラマンになった。張氏は無重力環境で自分の体を壁に固定し、ビデオカメラで長時間にわたり安定的な撮影を行った。

 宇宙の無重力状態をより良く示すため、指令長の聶氏はあぐらをかいた状態での「空中浮遊」を行った。王氏が指一本で軽く触ると、聶氏は揺れながら遠くに飛んでいった。


 ◆シーンその二 宇宙の体重計

 宇宙飛行士の実演は、学生らに疑問をもたらした。無重力環境において、宇宙飛行士は自分が太ったか、それとも痩せたかを調べたい場合、どうするべきか?この場合は、質量測定装置が役立てられる。これは天宮1号の壁に取り付けられた、支持台のような形をした装置だ。聶氏が自らを支持台の一端に縛り付け、王氏がその支持台を外側に引っ張り、そっと手を放すと、支持台はバネの力により元の位置に戻った。測定の結果、聶氏の体重が74キロであることが分かった。

 王氏は、天宮内の質量測定装置は、ニュートン力学の運動の第2法則(物体の受ける力=質量×加速度)を応用していると説明した。実験に使用されたバネは永久に不変の力を生むことができ、加速度を測定できるシステムも採用された。これにより、運動の第2法則を使うことで、身体の質量を計算できるようになった。


 ◆シーンその三 不思議な振り子

 T字型の台に、細糸で黄色の鉄球が吊るされた。王氏が鉄球を一定の位置に持ち上げ手を放すと、鉄球は地球上でよく見られる振り子の動きをせず、空中で停止した。王氏が指で鉄球を斜め方向にそっと押すと、不思議な現象が生じた。鉄球は台の軸心を巡り回転運動を始めたのだ。地上での実験では、大きな力で鉄球に十分な初速を与えなければ、軸を巡り回転することはない。

 中国人民大学付属中学校の学生の徐海博さんからは、「宇宙では上下の方向感覚があるか」という質問が出た。

 聶氏の力を借り、王氏は「雑技」の動きにより生徒の疑問に回答した。王氏は空中に横たわり、さらに逆立ちをした。

 王氏は、「宇宙では方向感覚は関係ない。私たちの頭がどちらを向いていようとも、私たちの感覚は変わらない。しかし宇宙で生活する際には、人為的に上下を決め、地球側を下として床を敷いている」と説明した。


 ◆シーンその四 コマ回し

 地球上でよく目にするコマは、宇宙では理想的な教材になる。王氏はまず、オレンジ色のコマを宙に浮かべ、その上部をそっと押すと、コマは前に回りながら前進した。次に、王氏は同じコマをもう1つ取り出し、今度は勢いよく回転させてから宙に浮かべ、同じように上部を手でそっと押した。すると今度は、コマは前に回ることなく、軸の方向を保ちながら前進した。

 王氏は、「高速回転するコマの軸の特徴は、宇宙でさまざまな用途を持つ。天宮1号にはさまざまなコマ型の方向指示器があり、これにより宇宙船の飛行状態を正確に測定できる」と説明した。


 ◆シーンその五 不思議な水滴

 王氏は宇宙飛行士の飲用水の袋を手にし、開け口を開いたが、水は流れ落ちて来なかった。袋の水を絞り出すと、管の先から透明の水滴が出てきた。袋をそっと揺すると、水滴は宙に浮かび上がった。

 王氏は、「李白が宇宙で生活していたならば、『飛流直下三千尺』という名句は思い浮かばなかっただろう。無重力の環境では、水が流れ落ちることはないのだから」と笑いながら語った。

 王氏が次に飲用水を詰めた袋に金属の輪を入れ、金属の輪をゆっくりと引き出すと、美しい水の膜ができた。金属の輪を揺らしても水の膜は破裂せず、小さな水滴が散らばるだけだった。王氏はさらに水の膜の表面に、「中国結び」が描かれたシールを張ったが、水の膜は壊れなかった。この地球上ではめったに見ることのできない神秘的な現象は、地球の生徒たちを驚嘆させた。

 水の膜の中にゆっくりと水を注ぎ込むと、やがて透き通った大きな水滴になった。注射器により水滴内に空気を入れると、二つの整った形をした球形の気泡ができた。気泡は水滴の中から出ることもなく、水滴に溶けこむこともなかった。続いて王氏が注射器で赤い液体を水滴に入れると、赤い液体はゆっくりと広がり、透き通っていた水滴が「赤ちょうちん」になった。

 ◆シーンその六 宇宙からのメッセージ

 神秘的な宇宙の実験が終了し、地球上の学生らの質問に回答した後、宇宙飛行士たちは地球から300キロ以上離れた宇宙から、学生たちにメッセージを送った。

 聶氏:必死に勉強し、知識を増やし、「中国の夢」に彩りを添えますように。

 張氏:広大な宇宙には尽きることのない神秘があり、その探索は終わりを知らない。力を合わせてがんばろう。

 王氏:宇宙飛行の夢は永遠に重力を失わず、科学の夢は無限の張力を持つ。

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