2013年07月15日-07月19日
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米軍、軍事用ロボットの開発に注力 現時点ではまだ「脇役」

2013年07月17日

 ボストン・ダイナミクス社が米軍のために開発した世界最先端の汎用ヒト型ロボット「Atlas」がこのほど公開された。同ロボットは危険な環境下で、人間のかわりに救助作業ができる。米国国会は、2015年までに軍事用地上車両の3分の1を無人化する法案を可決し、1270億ドルに上る研究経費を投入している。人類に仕えるロボット、そしてロボットの人類に対する反逆は、SF小説や映画でよく出てくるテーマだが、現実の世界でもロボット戦争が始まろうとしているのだろうか?銭江晩報が伝えた。

 ▽米軍、2015年までに軍事用地上車両の3分の1を無人化

 Atlasは身長1メートル90センチ、体重150キロと、まるでラグビー選手のような体格だ。三次元センサーの目と、器用な両手を持ち、遠隔操作を通じて複雑な地形でも移動できる。

 ボストン・ダイナミクス社がネット上で公開したビデオによると、Atlasは高いバランス能力を持つ。例えば、▽ベルトコンベアーの上で大またで歩く。その途中に突然置かれた木の板を即座に避ける▽高所から飛び降り、安定的に着地する▽両足を広げて両壁に押しつけながら進み、穴を避ける▽階段を上り下りする▽片足で立ち、ボールが横からぶつかっても倒れない--といった動きが可能で、いずれも従来のロボットでは実現できない動きだ。

 実際のところ、米陸軍はすでに多くの軍用ロボットを服役させている。2007年には5000体のロボットが米軍に「入隊」し、イラク・アフガニスタンでは少なくとも10種類の軍用ロボットが作業を行った。

 中央電視台(CCTV)の報道によると、米国国会はこのほど、2015年までに軍事用地上車両の3分の1を無人化する法案を可決し、このために1項目の軍事研究費としては米国史上最大となる1270億ドルの研究費を投入している。攻撃、防御、目標探知など、戦場で必須となる全ての任務を行うことができる軍事用ロボットの開発を目指しており、将来的には、米陸軍の1旅団あたり151体以上の軍事用ロボットが投入される計画だ。

 軍事科学院の専門家・杜文竜氏は「これほどの巨額を投じれば、戦略的なけん引作用がもたらされるだろう。米国には非常に先進的な装備計画があるが、本当に実現される計画は少ない。しかし、そのために開発された技術は、軍事用ないしは民用分野に大きなけん引作用をもたらす。もし軍事用ロボットプロジェクトが現実になれば、スターウォーズ計画がミサイル防衛技術の発展を促したように、なんらかの技術の発展を促すだろう」と語る。

 ▽軍事用ロボットは現時点では脇役

 感情がなく、投降せず、疲れを知らず、飢えることも、痛みを感じることもない。パワーや感知能力、スピード、忍耐力は人類を大幅に上回る----。このような、まるで「ターミネーター」のような軍事用ロボットが現実のものになるのだろうか?

 これについて杜氏は「現在の技術レベルから見ると、軍事用ロボットはまだ初歩的な段階にあり、自律的に作戦を遂行するには遠く及ばない」とし、「無人機を含む現在のロボットのほとんどは、遠隔操作で動いている。自律的に飛行できるとされる無人機X-47Bも、プログラムに沿った動きをするだけだ」と指摘した。

 今のロボットは、危険の多い戦場での生存能力がまだ低い。これは、自律的に動くロボットはまだ頭が悪く、臨機応変に対応する能力が低いためだ。一方、遠隔操作のロボットも、命令の通信が干渉を受けやすく、絶対的に命令を聞くという保証がない。

 ゆえに、人工知能の研究で飛躍的な成果が達成されない限り、戦場におけるロボットは「脇役」でしかない。彼らは人類のかわりに危険な環境で任務を遂行したり、重労働を行うことができる。Atlasも救援用のロボットだ。

 杜氏は「軍事用ロボットは2足歩行のヒューマノイドである必要はない。ヒューマノイドは被弾面積が大きく、安定性が悪く、力も弱い。手榴弾の攻撃を受ければ一発で鉄くずになってしまう」と指摘、「防御力・攻撃力・成熟度が高い戦車や戦闘機、艦艇に人工知能が搭載されれば、戦闘効率は最大化される。将来の軍事用ロボットはSF映画のイメージに束縛されるべきではない」との見方を示した。

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