2014年06月02日-06月06日
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心臓弁膜症、中国で低侵襲治療の時代が始まる

2014年06月04日

 脳出血と卒倒の病歴があり、呼吸不全を患っている82歳の患者が3日、北京の阜外心血管病医院で経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)を受け、同日午後から食事を始めた。これは中国初となる経カテーテル弁膜症臨床試験プロジェクトの、最後の手術となった。同プロジェクトの完了により、中国における心臓弁膜症の低侵襲治療の新時代が切り開かれた。経済日報が伝えた。
 同臨床試験は2011年9月7日に始まり、国家ハイテク研究発展計画(863計画)、第12次五カ年計画科学技術支援計画の支援を受け、中国国内で独自に開発された「VENUS-A」経カテーテル大動脈弁植え込み装置を採用した。同装置は主に、深刻な大動脈弁狭窄症により外科手術ができないケースや、手術に危険の伴う患者の治療に用いられる。
 同プロジェクトは、中国工程院院士で、有名な心臓内科の専門家である高潤霖氏が担当した。同プロジェクトは80人の患者を治療し、そのうち最年長が92歳で、85歳が20%以上を占めた。現在すべての手術が完了し、77人の治療に成功し、世界的に見ても高い水準となった。
 高氏は、「心臓には四つの弁膜があり、これが扉のようになり、血液の正常な流動を保証している。大動脈弁は血液を全身に向かわせる大きな扉で、これに深刻な狭窄症が生じると、血液が順調に全身まで送り届けられなくなり、一連の健康問題を引き起こす。患者には脱力、胸の痛みや息苦しいといった症状が現れ、深刻な場合は卒倒し、心臓衰弱や急死に至ることもある」と説明した。
 20年前、中国の心臓弁膜症の圧倒的多数はリウマチ性心臓病であったが、高齢化の加速に伴い、心臓弁膜の退化がその主因となった。国家心血管病センター、阜外心血管病医院冠状動脈性心臓病センター副センター長の呉永健氏は、「弁膜症の治療には通常、伝統的な薬物治療と心臓外科の弁膜取替の2種類がある。しかし高齢の患者は体が弱く、合併症があり、症状が悪化する可能性があり、心臓外科の手術に耐えられない場合がある。流行病の調査によると、3分の1以上の高齢の患者が、複数の合併症により手術治療を受けられない。これらの患者に対しては、新たなTAVIが効果的な代替案となる」と説明した。
 上述した臨床試験は、2015年6月に患者全員の1年間の訪問観察を完了する予定だ。中国が独自に開発した弁膜は、来年もしくは再来年に発売される見通しとなっている。

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