2014年08月01日-08月01日
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緊急地震速報アプリ、救命の神器になるか?

2014年08月06日

 雲南省昭通市昭陽区に住む高校3年生の耿芳東さんは8月3日午後4時30分、家で静かに勉強をしていた。ふとアラーム音が鳴り、携帯電話の画面に「地震速報 揺れ到達6秒前、震源地は42キロ先、16時30分に雲南省魯甸県でM6.5の地震が発生」と表示された。これを目にした耿さんは飛び上がり、自宅のトイレに駆け込み、身を低くした。2−3秒後、強震が発生した。光明網が伝えた。
 「これのおかげだった」耿さんが避難のために使ったのは、「地震予警」と呼ばれるスマートフォン用アプリだった。このアプリは、地震発生時の「救命の神器」になるだろうか?
◆中国が開発したICL緊急地震速報システム
 魯甸県で発生した地震の揺れが昆明市に到達する57秒前に、昆明市の同アプリのユーザーは緊急地震速報を受信していた。
 携帯用アプリで地震速報が可能なのだろうか?同アプリを開発したのは、成都市民政局および科学技術局が設立した、成都ハイテク減災研究所だ。同研究所の所長で、「千人計画」(海外ハイレベル人材招致計画)に入選した学者の王暾氏は、「同アプリは、実際には携帯型の緊急地震速報受信端末で、中国が独自に開発したICL緊急地震速報システムを採用している」と説明した。
 同システムは2012年に四川省科学技術庁による科学技術成果審査に合格した。同システムは、全国一部地区の3000の地震観測機器、1カ所の緊急地震速報センター、さまざまな種類の緊急地震速報受信端末によって構成される。地震が発生すると、地震観測機器が得られた揺れのデータを緊急地震速報センターに送る。数秒間の分析・処理により、緊急地震速報受信端末(アプリをダウンロードしたスマートフォン、コンピュータ、専用の緊急地震速報受信装置など)を通じて緊急地震速報が出される。これにより、第一波が到達する前に、難を逃れる時間が生まれる。
 この緊急地震速報は、100%の的中率を保証できるのだろうか?
 地震学者、中国工程院院士の許紹燮氏は、同システムの技術検証に参加したことがある。許氏は、「緊急地震速報は地震の予報と異なる。電波は地震の揺れの速度を上回るため、地震が発生した際に震源地から壊滅的な揺れが到達する数秒、数十秒前に警報を出せる。ブン川大地震(ブンはさんずいに文)の発生後、現地で発生した多くの余震により、緊急地震速報技術などの開発が進められた。同システムは2009年以降の数百回の実験により、安定的なコンディションを維持している」と説明した。
 中国地震局地震予測研究所の研究員である陳会忠氏は、「緊急地震速報は複雑で、100%の的中率は困難だ。この緊急地震速報は、『警報』と表現する方がより適切で、慎重に判断する必要がある」と指摘した。
 この「摩訶不思議」なアプリには、欠点は存在しないのだろうか?王氏は、「同システムにも技術の盲点がある。既存の技術によると、震源地から半径21キロ内の地域では、電波が地震の揺れを追い抜くことができず、緊急速報を出すことは不可能だ。ゆえに震源地から半径21キロ内は緊急地震速報の盲点であり、現在の技術面の難題になっている。地震技術に強い日本でも、この半径は30キロとなっている。ゆえに同システムの既存の技術は、非常に先進的であることが分かる」と述べた。

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