2014年10月13日-10月17日
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月探査プロジェクト、初の再突入・帰還飛行試験を実施へ

2014年10月23日

 中国国家国防科技工業局月探査・宇宙プロジェクトセンター長、中国月探査プロジェクト副総指揮の劉継忠氏は22日、「中国の月探査プロジェクトは初の再突入・帰還飛行試験を実施する。飛行試験機は10月24-26日の間に、西昌衛星発射センターから打ち上げられる。試験は8日間を予定している」と述べた。科技日報が伝えた。
 月探査プロジェクト第3期副総設計者のカク希凡(カクはおおざとへんに赤)氏は同日、「今回の試験は、関連データの収集を主要目的とする。初めて半弾道式跳躍の帰還方式を採用し、未来の嫦娥5号(月探査機)の帰還に関する重要技術の試験・検証を行う」と説明した。
 劉氏によると、月探査機「嫦娥3号」が2013年12月に任務を成功させると、中国の月探査プロジェクトは全面的に「月周回、月着陸、月からの帰還」という3ステップの発展計画の3段階目に入った。2017年頃に打ち上げを予定している嫦娥5号は、自動でサンプルを収集し帰還する予定だ。宇宙船の再突入帰還の重要技術を把握するため、プロジェクトは再突入・帰還飛行試験を実施することを決定した。まず1基の飛行試験機を打ち上げ、月付近に到着後、自動で帰還させ、内モンゴル中部に着陸させる。
 有人宇宙船「神舟」が毎秒約7.9キロの第一宇宙速度で帰還したのとは異なり、嫦娥5号は毎秒約11.2キロの第二宇宙速度で帰還する。カク氏は、「中国内陸部の着地点の条件を考慮し、長航続距離、少積載の帰還を実現するため、中国は初めて半弾道式跳躍という帰還方式を採用する。宇宙船は石切り遊びのように、大気層の表面で跳躍する。宇宙船は1回目に大気層に入ると制御により跳躍し、再び滑空により大気層に突入し着地点に向かう」と述べた。
この帰還方式は制御の精度に厳しい要求を突きつける。高く跳躍しすぎれば、宇宙船は着地点から外れてしまう。跳躍できなければ、大気圏をそのまま突破し燃え尽きる可能性がある。カク氏は、「地上から60-90キロ離れた上空の大気は変化が激しく、昼と夜、太陽風、地球地場などの要素から影響を受ける。大気の変化は誤差が激しいため、制御誘導システムは変化への対応力を高めなければならない」と指摘した。
 カク氏は、「第二宇宙速度の帰還は、嫦娥5号のすべての重要技術のうち最も難しい部分で、地上のシミュレーションでは十分に検証することができない。今回の試験飛行は、より現実に則した飛行データを収集し、これまでの研究・分析・設計・製造などをチェックし、嫦娥5号の再突入帰還に関連する軌道の設計、空圧、耐熱、制御誘導などの重要技術を検証するため実施される」と話した。
 劉氏は、「帰還方式の他に、今回の任務では中国宇宙事業の多くの『初』を実現する。中国は今回、初めて宇宙機を月から地球に帰還させる。また第二宇宙速度の再突入で、一部の耐熱技術の初の飛躍を実現する。それから、今回の任務に使用される帰還モジュールは神舟の帰還モジュールより小型で、広い範囲における小さな目標を捕捉する能力を検証する。これも初のことだ。今回の試験はハイリスクだが、参加者全員は自信を持っている」と述べた。
 今回の試験で使用される「長征3号丙」ロケット、飛行試験機などの製品は、8月上旬に同センターに輸送されてから、組み立てや試験などの技術準備が進められてきた。各システムは正常で、打ち上げの条件を満たしている。ロケットは22日に推進剤の注入を開始し、すべての準備作業が順調に進められている。

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