2014年12月15日-12月19日
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瞬間記憶能力、中国人科学者がメカニズムを解明

2014年12月15日

 「論語」、さらには分厚い「紅楼夢」などを一目で十行も読み、数分間で本の内容を口にし、具体的な数値まで復唱できる人がいるのはなぜだろうか?この「瞬間記憶能力」を持つ脳の「ルートマップ」は、どのようになっているのだろうか?これは人類のIQと何らかの関係を持つのだろうか?「最強の脳」は先天的なものか、それとも後の学習によって養われるのだろうか?人民日報が伝えた。
 中国科学院上海生命科学研究院神経科学研究所の李澄宇氏が率いる研究チームはこのほど、先進的な光遺伝学の手段により、前頭前皮質が瞬間記憶能力を司ることを明らかにした。
李氏によると、瞬間記憶の実行中に、前頭前皮質が情報の「一時保存」を担当する。瞬間記憶が完了すると、情報の「後続保存機能」がその他の脳のエリアに委ねられる。その際に、前頭前皮質が決定を左右する命令を出す。この研究成果はこのほど、世界的な学術誌「サイエンス」に掲載された。
 瞬間記憶の学名は「作業記憶」で、秒単位の短時間の記憶だ。李氏は、「これは脳の臨時メモリーのようなもので、思考の中間結果の保存を担当する。例えば28×71の暗算を行った際に、作業記憶力が高い人の場合、中間の計算結果を脳に一時保存し、最終的に暗算を完了することができる。日常生活において、ほぼすべての知的作業が作業記憶を必要とする。これは高齢者の痴呆症や中風などの疾患を持つ人、衰弱中の人の作業記憶に問題が生じる理由だ」と説明した。
 李氏の研究チームは、光遺伝学の方法を活用したことで、これまでの研究とは異なる革新を実現した。これまでは実験方法の不足により、科学者は秒単位の瞬間記憶を行う脳細胞を正確に補足することができなかった。そのせいで、脳の処理過程の詳細な「ルートマップ」も余り知られることがなかった。李氏の研究チームはレーザーを利用し、脳の神経細胞の秒単位の正確な制御を実現し、前頭前皮質細胞の機能を証明した。
 李氏は、「前頭前皮質は脳全体の30%を占める。現在の研究結果によると、瞬間記憶の良し悪しは人類のIQと関連性を持ち、先天的な遺伝子とも関連性を持つことが分かっている。しかしその後の学習と訓練によっても、瞬間記憶能力を高めることができる」と指摘した。

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