2015年03月23日-03月27日
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南極科学観測、汚染物質の伝播メカニズムを研究

2015年03月25日

 極地観測船「雪竜号」が出港したその日、中国第31次南極科学観測隊の隊員である鄭宏元氏は重要な任務を担当した。鄭氏は緯度が1度変わるたびに、人の居住地に近い場合はさらに頻繁に、海水と大気のサンプルを収集した。鄭氏は上海から南極・中山基地に至る約40度の間に、53件の海水サンプルと34件の大気サンプルを収集した。新華社が伝えた。
 鄭氏が集めていたのは、典型的な有機汚染物質「パーフルオロアルキル化合物(PFASs)」だ。この化合物は前世紀中頃に添加剤として登場した。簡単に製造でき、化学性質が安定しているため、洗浄剤、消火剤、ガラスの曇り止めなど、工業・生活用品に幅広く利用された。
 しかし同化合物は環境残留性有機汚染物質であることが証明された。同化合物は環境中に長期的に残留し、大気と海洋を通じ世界範囲で移動する。さらに食物連鎖を通じて生物濃縮され、生物および人類に深刻な健康被害をもたらす。
 データによると、同化合物の分布の法則は、人類の活動と関連している。人類の居住地に近づくほど、大気中・水中の含有量が多くなり、離れるほど減少する。しかし南極は気温が低く、大気が下降するため、大気中に含まれる同化合物の濃度はその他の無人地帯と比べ高めとなる。
 南極のサンプル収集、およびこれまでの北極におけるサンプル収集の結果によると、極地の海水、大気、野生動物の体内は、いずれも同化合物に汚染されている。特に食物連鎖の上層に位置する海鳥の卵のすべてから同化合物が検出された。これは同化合物が、生物の種の内部で引き継がれることを意味する。
 鄭氏は、「南極における同化合物の伝播メカニズムの研究は、南極の環境保護に対して切実な現実的意義を持つ。これはまた、中国が関連産業の管理・抑制策を制定するための、基礎的な資料をもたらす」と説明した。

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