2015年03月30日-03月31日
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中国の「宇宙送迎バス」、打上げに成功

2015年03月31日

 中国は30日午後9時50分、「宇宙送迎バス」の使命を担う遠征1号・上段ロケットを最上部に搭載した「長征3号丙」ロケットを、西昌衛星発射センターから打上げた。遠征1号は衛星測位システム「北斗」の衛星を輸送する使命を担い、「デビュー」を果たした。科技日報が伝えた。
 中国航天科技集団公司中国キャリアロケット技術研究院党委員会書記の梁小虹氏は「中国はこれまで、静止衛星に衛星を打上げる場合、ロケットで衛星を楕円形の静止トランスファ軌道に打上げ、一定の傾斜角に達してからロケットと衛星を切り離していた。衛星はその後軌道を制御し、円形の静止軌道に入った。遠征1号・上段ロケットを使えば、衛星が静止トランスファ軌道に入ってから十数時間後に再点火を行うことで、衛星を直接静止軌道に送り込むことができる」と指摘する。
 梁氏は、「衛星の目的は、軌道上で作業を実施することだ。軌道制御は衛星の任務ではないが、これをせざるを得ない。衛星が軌道制御を行うには専用のエンジンを搭載する必要があり、さらに大量の燃料を消耗する。上段ロケットにこれを担当させることで、衛星の自重と燃料消費量を減らし、その使用寿命を延ばすことができる。上段ロケットは任務完了後、自動的に宇宙ゴミの軌道に入り、貴重な静止軌道の資源を無駄にすることはない」と説明した。
 梁氏によると、遠征1号、あるいはその改良型上段ロケット、長征ロケットを柔軟に組み合わせることで、ロケットの打上げ能力を最大限に発揮できる。上段ロケットの軌道制御能力を利用し、一つのロケットで複数の衛星を打上げることで、打上げ効率を効果的に引き上げられる。また、打上げ回数とコストを減らすことで、日増しに増加する宇宙船の高密度打上げの需要を満たすこともできる。未来の月・火星探査などの深宇宙探査任務、軌道制御、宇宙ゴミの除去などの軌道上のサービス、新材料・新技術の検証といった宇宙実験において、これは重要な力を発揮する。1台の送迎バスが乗客をそれぞれ異なる地点に送り届けるように、遠征1号は1基もしくは複数の宇宙船を異なる軌道に直接投入することができる。ゆえに研究者らは遠征1号を、「宇宙送迎バス」と分かりやすく呼んでいる。

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