2015年04月06日-04月10日
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「賢い細胞」、臓器移植の拒絶反応を防止

2015年04月07日

 南京医科大学はこのほど、「自己免疫誘導治療」を成功させた。新しい治療を受けた肝移植患者の劉さん(仮名)の術後の経過は、予想を上回るほど良好だ。医師は劉さんに対して、治療期間後に免疫抑制剤を服用する必要はないと告げた。この治療技術は世界の臓器移植業界をリードするもので、多くの患者に希望の光をもたらした。科技日報が伝えた。
◆「賢い細胞」で「人見知り」を回避
 「制御性T細胞免疫誘導治療」とは、どのような治療法なのだろうか?南京医科大学第一付属病院の王学浩氏は、「従来型の免疫抑制では薬を使用する必要があるが、この新たな治療法は『自己管理』」を実現した」と語る。
 免疫システムは人体の「武装勢力」のようなもので、敵味方を区別し、敵を排除し自身を保護しようとする。しかし免疫システムは移植された臓器を「侵入者」と判断し攻撃を加え、拒絶反応を起こす。研究チームは、移植する臓器を免疫システムに自己と認識させ、「人見知り」させないための研究を進めている。
 王氏の研究チームに所属する呂凌准教授によると、人体の免疫システムには、免疫応答の抑制的制御を司る制御性T細胞が存在している。患者自身の細胞を体外で培養し、移植される臓器を自己と認識する制御性T細胞を生成する。さらにこれを患者の体内に戻すことで、人体は移植された臓器を「味方」とみなすようになり、拒絶反応を起こさなくなる。こうして患者は免疫抑制剤を一生飲み続ける苦しみを免れる。
 同研究チームはすでに8人の肝移植後の免疫誘導治療を実施済みだ。2015年には、計20人の患者の治療を行う予定。

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