2015年06月29日-06月30日
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中国人科学者、最も複雑なHIV組換えウイルスを発見

2015年06月30日

 中国科学院昆明動物研究所が発表した情報によると、中国・ミャンマー国境地帯のミャンマー人の長距離トラック運転手に対して、HIV-1のほぼ全長の遺伝子の解析を行った結果、このHIV-1 CRF01_AE/B/C組換えウイルスが、12年前に報じられたミャンマー由来のHIV組換えウイルスよりも複雑であることが明らかになった。新華網が伝えた。
 エイズウイルスの学名は「後天性免疫不全症候群」で、人体に侵入すると免疫システムを破壊する。患者は治療が困難な感染症や腫瘍によって死に至る。HIVはHIV-1とHIV-2に分かれる。世界的に見ると、HIV-1の感染が中心となっている。
 中国科学院昆明動物研究所動物模型・人類疾患メカニズム重点実験室の鄭永唐研究員が率いるチームは、国境地帯の静脈注射薬常用者および国境を跨ぐミャンマー人の長距離トラック運転手に対して、HIV-1分子疫学の研究を行った。周衍衡氏は国境地帯のHIV-1の遺伝の多様性を把握するため、雲南省出入境検験検疫局と協力し、鄭永唐氏の指導のもと、2008−2010年の105件の血液サンプルから、国境を跨ぐミャンマー人の長距離トラック運転手のサンプルを選び出し、HIV-1の遺伝子解析を実施した。その結果、HIV-1 CRF01_AE/B/C組換えウイルスは、それまで報じられていた東南アジアのすべてのウイルスの組換え位置と異なっていた。かつ12年前に発見され世界で最も複雑とされた、ミャンマーの性風俗従事者のHIV-1ウイルスよりも複雑であることが分かった。
 HIV-1 CRF01_AE/B/C組換えウイルスには、4つのCRF01_AE亜種、6つのB亜種、5つのC亜種の、計15の組換え点がある。日本人科学者のTakebe氏らが、2003年にミャンマーでHIV-1ウイルスのほぼ全長の遺伝子を発見してから、12年ぶりの発見となった。
 周氏は、「この研究が提供する基礎的な情報は、ワクチン開発などの基礎研究に参考をもたらす。また中国・ミャンマー国境地帯のHIV-1分子疫学のさらなる研究の方針を示した」と述べた。

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