2015年07月13日-07月17日
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エネルギー消費量の少ないパンダ、そのメカニズムが明らかに

2015年07月14日

 中国科学院動物研究所の研究員である魏輔文氏が率いる研究チームはこのほど、北京動物園およびアバディーン大学の学者と協力し、ジャイアントパンダの毎日のエネルギー消費量が極端に少なく、ナマケモノとほぼ同水準であることを明らかにした。また形態、行為、生理、遺伝、ゲノムなどの面から、パンダのエネルギー消費量を抑える代謝のメカニズムを系統的に解明した。
 パンダはそもそも肉食動物だが、草食で知られる。野生のパンダは、ほとんど竹しか食べない。その食習慣には大きな変化が生じたが、パンダの腸は依然として肉食動物の特徴を留めている。竹の栄養価とカロリーが低く、消化しにくいため、パンダは毎日大量の竹を食べなければ生存活動を維持できない。魏氏が率いる研究チームは北京動物園およびアバディーン大学の学者と協力し、野生のパンダと飼育されているパンダのエネルギー代謝を測定した。その結果、パンダのエネルギー代謝率が極端に低いことが分かった。体重90キロのパンダの代謝水準は、同じ体重のヒトの半分にも満たない。
 この研究により、パンダが低いエネルギー代謝率を維持するメカニズムが明らかになった。パンダの長期的な進化の過程において、形態、行為、生理、遺伝、ゲノムなどに適応性の変化が生じた。動物園で見たことがある人ならば、パンダは怠け者で活動を好まないことを知っているだろう。パンダは活動量を減らすことで、エネルギーを節約しているのだ。研究者が野生のパンダにGPS首輪を装着したところ、野生のパンダが毎日半分以上の時間を休憩に使っていることが分かった。1時間の移動距離も平均でわずか20メートル余りで、多くのエネルギーを節約できる。
 エネルギー代謝を調節する甲状腺ホルモンの量が少ないことも、パンダの低エネルギー代謝率の秘密を解き明かす鍵となっている。研究者はパンダのゲノムから、甲状腺ホルモンの合成を調節する重要ゲノム(DUOX2)の突然変異を発見した。これはパンダの甲状腺ホルモンの少ない理由かもしれない。ヒトとラットの場合、この突然変異によって甲状腺機能が低下する。
 エネルギー代謝率が低いことで、パンダがいかに一定の体温を維持するのかという問題が生じる。パンダの毛皮は非常に分厚く、体内の熱を留めやすく、そのため体表面の温度が低いことが分かっている。サーモグラフィの測定結果によると、パンダの体表面の温度は、同じく白黒の模様を持つシマウマやダルメシアンより低めとなっている。

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