2015年07月27日-07月31日
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中国の「宇宙の目」、世界最大の電波望遠鏡の謎に迫る

2015年07月27日

 中国が建設中の、世界最大の口径を誇る球面電波望遠鏡(FAST)の重要設備である反射鏡ユニット(計1000枚)が23日、貴州省黔南プイ族ミャオ族自治州で取り付けを開始した。新華社が伝えた。
 中国の「宇宙の目」と呼ばれるFASTの口径は500メートルで、敷地面積はサッカースタジアム約30個分。中国の「宇宙の目」は、なぜ黔南プイ族ミャオ族自治州に建設されるのだろうか?FASTは「宇宙人」を見つけることができるだろうか?ここからは、このFASTについて見ていこう。
◆100億光年離れた宇宙を見る
 電波は赤外線よりも周波数が低い電磁波だ。電波望遠鏡は衛星の信号を受信するパラボラアンテナに似ており、凹面の部分の反射・集束によって数平方メートルから数千平方メートルの範囲内の信号を一点に集める。より遠くからの電波を受信し、宇宙の奥深くの情報を読もうとするならば、より大口径の電波望遠鏡が必要だ。簡単に言えば、凹面の部分が大きいほど、より遠くの宇宙を見ることができる。
FASTの感度はドイツ・ボンの口径100メートルの望遠鏡の約10倍。これは100億光年離れた所からの電波でも捕捉できることを意味する。
◆なぜ貴州省に?
 衛星写真を見ると、貴州省平塘県の地形はしわだらけの象の肌のようだ。さらに分解能を高めると、大小様々な「じょうご型」の穴があることが分かる。その内の一つが、科学者が長年追い求めてきた、この最大の望遠鏡の「家」だ。
 FASTプロジェクトフィードサポートシステムのチーフエンジニアである孫才紅氏は、自然の窪地「大窩凼」を建設地として選んだ3つの理由について、「まずはこの地形がFASTのくぼみのラジアンと形状に最も近く、掘削が最も容易だ。次に現地のカルスト地形によって雨水が地下に浸透しやすく、水たまりになり望遠鏡を浸食することがない。それから電波望遠鏡は静かな環境が必要だが、『大窩凼』から半径5キロ内に村が一つもなく、理想的な環境となっている」と説明した。
◆宇宙人は見つかるか?
 中国天文学会理事長、中国科学院院士の武向平氏は、「FASTはパルサーの観測に非常に適しており、一般相対性理論の検証が可能だ。これは高エネルギー物理学、極端な条件下の物理学、相対性理論の検証にとって、非常に有意義だ。またFASTは宇宙のより遠くを見ることができ、宇宙の起源、さらには地球外文明の謎の解明を促す」と話した。
 中国天文学会会員、天津市天文学会理事の史志成氏は、「宇宙の生命体、もしくは高い知能を持つ宇宙人が存在すれば、彼らが広大な宇宙に残した情報を、FASTによって確認できるかもしれない」と述べた。

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