2016年02月15日-02月19日
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中国初、江西省の医師が育てた「南極産野菜」

2016年02月29日

 王征氏は上饒市人民病院(江西省)の整形外科医だ。2014年10月30日、国家海洋局の要請を受けた彼は上海から南極へ向かう「雪竜号」に乗り込み、第31次南極探検任務(中山観測基地での越冬任務)に加わった。中国の南極観測基地である中山基地において、彼は隊員たちの診察をするだけでなく、野菜の栽培に成功し、南極観測隊員の健康と栄養面において貢献した。これは中国で初めて南極で栽培された野菜だ。中国広西網が伝えた。
 新鮮な野菜を提供することは中国の南極観測において頭を悩ませてきた大きな問題だった。特に中山基地で1年間に必要な野菜は「雪竜号」が中国国内やオーストラリアなどを経由して補給されているが、コストがかかる上、貯蔵時間も限られている。南極が長い冬に入ると、観測隊員は白菜など数種の限られた野菜を頼りに冬を越す。
 このため、第31次南極観測期間では、2014年度中国科学技術サポート・プログラムの1つ「南極の極限環境における温室野菜生産の中心的技術研究とモデル」として、中山基地で初期の調査研究と実験を行なった。
 現在の先進的な温室栽培技術に助けられ、この夢は中国南極観測基地において現実のものとなった。王征氏は最大の功労者の一人だ。彼は「南極では、それぞれの隊員は本業の任務遂行を除いて、生活における役割も果たさなければいけない。私は野菜室で種の育成、収穫、食用として皆に提供することを任された」と振り返る。
 王征氏は取材に対し、「野菜の温室実験室は16平方メートルの室内で水耕栽培技術を採用している。野菜の栽培は灌漑ポンプ、温度、湿度、照明光、栄養液などを自動制御システムによって調節している。例えば、コンピューターのコントロールにより、LEDライトは野菜の生育状況に応じて自動的に証明時間を調節し、自動灌漑システムは1時間ごとに水槽内に栄養液を注入し、室内湿度が70%以下になると加湿システムが室内でシャワーを噴射する」と語った。
 このほか、野菜の生育を促進するため、野菜の温室実験室は毎日1日じゅうポピュラーミュージックを流している。王征氏は「野菜は観測隊員よりはるかに良い待遇だ」と笑う。
 「生育周期が比較的短く、栽培は簡単なうえ、量産できるため、中山基地で主に栽培している野菜はレタス、白菜、きゅうりだ。きゅうりを例にとると、1本の瓜のつるから平均2日で1本のきゅうりを収穫できる。もし20株植えるとすると、隊員18人が越冬期間中に毎日新鮮なきゅうりが確実に食べられる」と王征氏は言う。
 王征氏は「南極の食べ物は全て外からの輸送に頼っており、肉類が多く、野菜類は非常に乏しい。中山基地での野菜栽培の成功は多くの外国の観測隊員を羨ましがらせている。そのため、彼らはよく中山基地にきてご飯を食べていく」と続ける。
 また、南昌大学(江西省)教授であり国家極地研究センター客員教授の余万霰氏は取材に対し、「中国の南極観測基地が新鮮な野菜を提供できるということは世界から注目されている。なぜなら南極で野菜を自家栽培できるということは南極での健康な生存能力においてその国が世界のトップに躍り出ることを意味し、南極における人類の健康的な居住期間を大きく伸ばすことができるからだ」と語った。

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