2016年03月07日-03月11日
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「宇宙の進化の模索」、中国の国家戦略に

2016年03月09日

 中国は今後5年、小康社会を期限通りに全面的に建設した上で、さらに宇宙の起源と進化について模索し、人類の究極の問いに答えなければならない――。5日に開幕した全国人民代表大会で審議された中国の第13次五カ年計画綱要(草案)は、革新駆動型発展を優先的な位置に据え、中国が今後5年間に渡り進展を目指す基礎的・先進的科学分野のうち、「宇宙の進化」を最重視した。他にも「物質構造」「生命の起源」「脳と認識」などが含まれる。新華社が伝えた。
 中国科学院国家宇宙科学センター長の呉季氏は、「中国はすでに宇宙進出、宇宙応用の能力を付けており、世界の宇宙大国になろうとしている。しかしながら、技術を重視し科学を軽視する長期的な態度により、中国は宇宙大国でありながら宇宙科学小国という苦しい現状に陥っている」と指摘した。
 世界2位の経済体である中国は近年、科学技術の革新水準を高めている。月探査プロジェクト、高速鉄道、大型機などは、中国の科学技術発展を象徴している。しかしながら、重力波の探査といった数十億元、さらには数百億元の資金が必要な重大基礎研究プロジェクトは、中国ではまだ珍しい。
 米国人科学者は今年2月、重力波を直接探査したと発表し、世界を驚かせた。中国の一連の重力波探査プロジェクト「阿里実験室計画」「太極計画」「天琴計画」も相次いで打ち出された。
 中国人科学者はこれまで、基礎研究設備の不足に悩まされてきた。しかしこの状況には、徐々に変化が生じている。計画中の重力波探査装置の他に、中国は昨年12月、初の暗黒物質粒子探査衛星を打ち上げた。貴州省も世界最大口径の電波望遠鏡の建設を急ピッチで進めている。中国の宇宙探査は、直接的な国防・経済効果のみに満足せず、宇宙の運命に関する謎を解こうとしている。
 SF小説「三体」でヒューゴー賞を受賞したSF作家の劉慈欣氏は、重力波探査のような基礎科学分野の重要な成果が公表されると、直ちに社会的なセンセーションを巻き起こしニュースとして取り上げられるようになり、ほとんど注目されなかった20−30年前とは異なると指摘した。当局者はこれを受け、基礎的・先進的な科学研究が、総合的な国力に対して発揮する効果を認識している。
 劉氏は、「国家は第13次五カ年計画の中で、宇宙進化に関する研究を打ち出した。これは中国の指導部が基礎科学の技術応用に対する重要性をさらに認識したことを示している」と述べた。
 第13次五カ年計画綱要に基づき、中国は今後5年に渡り国家戦略を体現する数百件の重大プロジェクトを実施する。これは量子通信、深宇宙探査、節水・灌漑、宅配サービスの農村部普及など各分野を網羅し、中国経済、社会、国民生活に深い影響を及ぼす。

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