2016年03月21日-03月25日
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中国の宇宙科学、今後15年間の発展は?

2016年03月21日

 中国の宇宙科学は、今後15年に渡りいかに発展するのだろうか?この問題については、中国科学院が17日に発表した「2016−30年宇宙科学計画研究報告書」から、答えを導き出せるかもしれない。中国科学院国家宇宙科学センター長の呉季氏によると、主に30人弱の科学者によってまとめられた同計画は、中国宇宙科学の2030年までに研究予定の先進的な科学問題について論述し、中国の2030年までの発展戦略の目標、宇宙科学計画、およびその科学衛星任務を示している。2030年までの中国宇宙科学発展ロードマップも作成された。光明日報が伝えた。
◆「2016−30年宇宙科学計画研究報告書」を作成
 報告書では、中国宇宙科学が2030年までに宇宙の形成と進化、太陽系外惑星および地球外生命体の探査、太陽系の形成と進化、現在の基本物理理論を超越する新たな物理法則、宇宙環境における物質の運動および生命活動の法則といった注目される科学分野で、重大な科学的発展と革新的進展を実現し、宇宙および関連ハイテクの飛躍的な発展を促すという戦略的目標が掲げられた。
 同報告書はこの戦略的目標の実現に向け、2020年・25年・30年の段階的な目標を打ち出した。またブラックホール探査計画、パルサー探査計画、太陽系外惑星探査計画、火星探査計画など、一連の宇宙科学計画を掲げた。
◆「宇宙大国、宇宙科学小国」の現状を打破
 有人宇宙飛行事業、月探査機・嫦娥による月探査など、中国の宇宙技術には飛躍的な発展があった。しかしながら、中国の宇宙科学は常に、世界先進水準に大きく差をつけられ、「宇宙大国、宇宙科学小国」という苦しい立場に置かれている。
 呉氏は、「現在の宇宙科学において、中国は知識の輸入国だ。中国の宇宙科学者は、海外の科学衛星が公開したデータを大量に使用している。データを真っ先に使用するのは海外の科学者だ。この居候のような研究活動では、重大な独創性を持つ革新的な成果を手にしがたい」と指摘した。
 経済発展の面から見ると、米国やEUなどの経験は、宇宙科学が技術革新の大きな推進力であることを証明している。呉氏は「例えば携帯電話に使われている高解像度カメラは、深宇宙探査技術のCMOSイメージング技術を採用している。宇宙科学で画期的な進展を目指すならば、新たな探査方法を採用しなければならない。このような発展は、新たな科学的進展の実現を続け、関連技術の発展を力強くけん引し、かつその他の分野に影響を及ぼし、潜在的な経済効果をもたらす」と例を挙げて説明した。
◆中国の宇宙科学、長期的・安定的な支持が必要
 呉氏は、中国の宇宙科学は現在、歴史上最も理想的な発展の時期を迎えていると述べた。中国科学院宇宙科学戦略性科技先導特別プロジェクトの支持を受け、暗黒物質粒子探査衛星「悟空」が、昨年12月に打ち上げられた。また、微小重力実験衛星「実践10号」が、今年4月に打ち上げられる。量子科学実験衛星、硬X線調整望遠鏡の開発も急ピッチで進められており、今年中に打ち上げられる予定だ。
 呉氏は、「しかしその後はどうするべきか?現在の宇宙科学任務の多くは単発的で、持続性と安定的な経費・予算が欠けている。NASAや欧州宇宙機関のように、宇宙科学の経費・予算を、宇宙事業の予算全体の固定的な比率に基づき拠出することはできないだろうか?こうして初めて科学者に希望をもたらし、中長期計画の制定の条件を整えることができる」と提案した。
呉氏は、「科学者らの願いと共通認識である同計画は、専門家チームの慎重な審査と選考に合格する必要がある。中国が真の科学技術強国になり、革新駆動型発展を実現するためには、目先の利益だけを考えるのではなく、人類に対して中華民族としての貢献を成し遂げなければならない。こうして初めて世界の人々から真の尊重を勝ち取ることができる」と話した。

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