2016年07月11日-07月15日
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タンチョウヅル、3Dプリンターで作ったチタン合金のくちばし装着

2016年07月21日

 10日午後、3Dプリンターで印刷したチタン合金製の「くちばし」を、世界的にも絶滅が危惧されている野生動物のタンチョウヅルに移植する世界初の手術が広州立徳動物病院で無事完了した。新華社が伝えた。
 手術をうけたタンチョウヅルは今年6歳になる「立立」。動物園で他のタンチョウヅルと喧嘩した際に、上のくちばしが折れてしまい、感染がひどくほぼ壊死状態になってしまった。上のくちばしが欠けてしまうと、自力で食事を取ることができなくなるため、生命の危機に瀕してしまうという。
 そのため、同病院の呉院長、広州市陽銘新材料科技有限公司の陳梓煜総経理、華南理工大学付加製造実験室の宋長輝氏が、3Dプリンターで印刷したくちばしを移植し、人類の科学技術の成果をタンチョウヅルの救助に用いることを決めた。
 タンチョウヅルのくちばしを3Dプリンターで印刷したことは世界的にも先例が無く、タンチョウヅルのくちばしは細長く、内部が空洞になっていることと、上くちばしの断裂面が不揃いだったため、ボルトを打ち込める場所が少なかった。神経器官も多いなど状況が複雑であり、くちばしの製作は難易度が非常に高かった。彼らはさらに研究を進め、手術プランを迅速に決めた。それはまずFDM技術により3Dプリンターでプラスチック模型を試しに印刷し、形状を確定した上でチタン合金を材料とし、レーザー焼結設備により印刷するというものだ。
 負傷したタンチョウヅルにはまだ50年以上の寿命があるため、プラスチック製のくちばしを一生用いることはできない。チタン合金は軽量で硬度と耐腐食性が高く、くちばしに最も適した材料だが、確かな研究データがないため、チタン合金を直接3Dプリンターで印刷しても、一回で成功させることは難しい。しかし、何度も印刷すれば時間とコストを浪費することになる。そこでFDMと金属焼結法を結びつけることになった。
 彼らは模型の印刷・改善・取付試験を7回実施し、最終バージョンが確定した。動物病院は10日、正式に手術を開始した。「立立」が麻酔で眠りに落ちた後、医師は事前に計画した手術プランに基づき、30分でくちばしの取付を終えた。「立立」は現在、自分で食べ物を口にすることができるようになっている。

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