2016年07月11日-07月15日
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3Dプリンターで印刷する「中国煎餅」、世界で売れる

2016年07月22日

 柔らかな食感と香ばしい風味。この煎餅(中国風クレープ)は普通の手作り煎餅と見た目は余り変わらないが、実は3Dプリンターで印刷されたものだ。開発者の一人である呉一黎さんは、3Dプリント技術を煎餅に応用した。彼らが開発した装置はプリンターの原理と同じく、タネはインクに相当し、プレートは白紙のようなものだ。数分もしないうちに、異なる形状の煎餅を焼き上げることができる。中国新聞社が伝えた。
◆高給の仕事を断って煎餅売りに
 呉さんは清華大学ソフトウェア学院の卒業生だが、起業した際、コンピュータソフト関係のプロジェクトを選ばなかった。その代わりに、彼は2年前、伝統的な煎餅の店主になった。呉さんが店を開いた最大の理由は、妻の幼いころの夢だった。彼は笑いながら、「妻は幼いころから煎餅が好きで、プレートの熱い蒸気を見るだけで幸せになれる」と話した。
 彼らは7ヶ月をかけて準備を整えた。まったく宣伝を行わず、商品そのもので消費者から認められようとした。彼は「辛味噌は老干媽、ザーサイは■陵烏江産(■はさんずいに倍のつくり)、すべての鶏卵の生産地も覚えている。煎餅は作り立てで、新鮮かつ安心。今日もお元気で」を謳い文句にしていた。美味しい商品と心のこもったサービスにより、彼の商売は繁盛した。店の外では煎餅を買おうと長い列ができることがよくあった。
◆冗談から商品化
 しかし呉さんは満足しなかった。「1億人に影響を及ぼす煎餅店」というより大きな夢を抱いていたからだ。突破口を見出そうとしていた呉さんは、卒業生の同窓会で、同級生の施侃楽さんと出会った。彼は2014年に創業し、3Dプリンター事業を手がけていた。彼らは同窓会で「3Dプリンターと煎餅を結びつけることはできないか」と冗談を言ったが、その後も真剣にこの「冗談」を実現する可能性を検討し、2015年3月から装置の開発を開始した。
 伝統的な煎餅やクレープなど、毎日タネを作り、温度を測定し、3Dプリンターを使い試験を行った。修正と試験を繰り返さなければならず、多くの煎餅が残ってしまったが、捨てるのももったいないので、残った煎餅をすべて食べた。そのため、施さんは半年で、10キロ以上も太ってしまった。彼らは煎餅の開発を諦めることなく、1ヶ月以上をかけて煎餅を印刷する初の装置を完成させた。
◆数より品質を重視
 次々と改善を重ね、現在の装置は第4代目となっている。呉さんは「装置を作るだけの企業ではなく、煎餅を売るニューメディアでもある」と語った。彼らは人々の「煎餅」に対する印象を変え、「6元の価値」しかない伝統的な軽食から、自分を表現するツールにしようとしている。彼らは各種イベントにより、この文化を宣伝している。例えば福州市で開催した第1回「煎餅芸術展示会」で、彼らは印刷した煎餅の写真撮影を行い、さらにキャプションをつけることで芸術作品に仕上げた。
 宣伝手法だけではなく、呉さんはハードウェアの面でも非常にこだわっている。つまり彼らは量ではなく、質を追求しているのだ。温度調節器を例として、彼らが使用するものはネジ型ではなく、チップ型だ。「ネジ型は正確に温度を測定するのが難しく、温度差が30−50度に達するが、チップ型ならば3−5度に抑えることができ、煎餅の加工に適している」と彼は説明し、「誰もが安さと低コストを求めているが、仕事をちゃんとしていない」と頭を振った。現在、彼らが作った3D煎餅プリンターは国内で販売されているほか、海外市場にも進出している。オーストラリア、シンガポール、カナダなどの飲食店がこのプリンターの使用を試みており、世界に「煎餅」を再認識させている。

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