2016年08月15日-08月19日
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グローバル・イノベーション・インデックス、専門家が読み解く

2016年08月19日

 このほど、世界知的所有権機関(WIPO)は米コーネル大学とINSEADとともに、2016年版の「グローバル・イノベーション・インデックス」を発表した。中国は世界25位で、前年より順位を4つ上げた。新華社が伝えた。
同済大学の朱雪忠教授は「報告書を見ると、上位25カ国はこれまで、革新でトップを走っていた高所得エコノミーに独占されていた。しかし今年、高所得エコノミーではない中国が唯一トップ25入りを果たし、注目に値する」と指摘した。
 朱氏は「これは中国が革新への支出を増やし、知的財産権強国戦略、革新駆動型発展戦略などの推進で、大きな成果を手にしたことを示している。また中国が29位から25位に浮上したのは、2016年版に新たな指標が追加され、上位25カ国に大きな変化が生じたという要素についても認識するべきだ」と述べた。
 報告書によると、中国は近年他国と比べ、多くの重要指標で目覚ましい進歩を示している。これには研究開発費、国民の特許出願件数などが含まれる。
 事実、中国の革新の成果は目に見えた形で表れてきている。8月16日未明、中国初の量子科学実験衛星「墨子号」が、宇宙の旅を始めた。7月15日、独自に開発した中国標準新型高速列車が、時速420キロで反対方向の対向車線から走ってくる列車とすれ違い、世界最高速の高速列車すれ違い試験を実現した。また、有人潜水艇「蛟竜号」は中国の海洋科学観測を、水深7000メートルの深海まで拡張した。
 WIPO中国事務局の陳宏兵局長は「世界経済の低迷が続き、中国経済のモデルチェンジ・アップグレードが進むなか、中国の革新発展がこれほどの成果を手にできたのは、中国政府が近年、革新発展を力強く推進したからだ」と指摘した。
▼革新駆動型発展戦略綱要、科学技術成果転化促進法、知的財産権強国建設、第13次五カ年計画科学技術革新計画など、政府は一連の革新発展促進政策を打ち出した。また改革により革新に適した教育環境、ビジネス環境を構築した。
▼行政スリム化、権限移譲などの措置により市場の革新の活力を力強く引き出した。企業は先進技術、特にITのビジネスモデル革新、社会組織・構造の革新などに積極的に取り組めるようになった。
▼対外開放により、中国企業は世界の技術のスピルオーバー効果を十分に利用し、対外協力により外部の革新資源を利用できる。
 専門家はまた、この順位を客観的・理性的に見るべきだと指摘した。中国の順位は大きく浮上したが、中国の経済規模や革新発展の需要と比べると、さらなる向上が待たれる。
 報告書によると、中国は「高等教育機関在籍の外国人留学生」や「エネルギー利用の単位当たりGDP」、「中小投資家保護の容易さ」といった指標で、さらなる改善の余地が残されている。朱氏は「これらの具体的な指標の順位により、中国の革新発展のさらなる取り組み内容が明らかになる。また中国が上位につけた、特許出願件数などの指標についても細かく分析しなければならない。数を求める段階から、革新の質を高め、経済発展を効果的に促す段階に移行するべきだ」と指摘した。

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