2016年09月19日-09月23日
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61万人のファン抱える「玉兎号」の微博アカウント 投稿者は一体どんな人?

2016年09月19日

 微博(ウェイボー)の公式アカウント「月球車玉兎」は7月31日、最後の「おやすみメッセージ」を投稿し、「退職」を宣言した。月面ローバー「玉兎号」の勤務時間は、31ヶ月以上に達した。多くのネットユーザーが玉兎号を目覚めさせようとコメントを続けているが、61万人のフォロワーを集めた「ネット有名人」の玉兎号は、二度と声を出さなくなった。おちゃめで科学知識普及を得意とする玉兎号は、「2014年度中国十大科学知識普及ニュース」に選ばれたことがある。微博の投稿を担当したのは、科学を愛する理知的雰囲気ただよう1989年生まれの成都出身の女性、宗唯伊さんだ。宗さんは「最後のこの100字未満の投稿のため、2時間も頭を悩ませた」と話す。成都商報が伝えた。
 同アカウントは、新華社対外部と科学知識普及サイト「果殻網」による実験的な試みだったが、科学界の「ネット有名人」になるとは思いもしなかった。
 7月31日のメッセージは4万回転載され、2万回読まれた。最近になってもあきらめずメッセージを送るネットユーザーがいるほどだ。兎が中秋節に目覚めることを願い、月餅を食べるよう呼びかけている。
 宗さんは記者に対して「玉兎号は使命を終えた。微博で活躍していた兎も、幕を閉じた。このアカウントは二度と更新せず、眠り続けさせる」と述べた。
 宗さんは当初、人々に月面ローバーそのものと、宇宙探査に注目してもらいたいという非常にシンプルな考えで始めたのだという。多くのメディアの月探査機「嫦娥3号」に関する記事は、見出しからして近づきがたく、わざわざ読もうとする人が少ないかもしれない。「私たちは皆さんに積極的に見てもらうことで、科学知識を伝え、宇宙探査全体に対する好奇心を呼び覚まそうとした」と語る宗さん。
 玉兎号のアカウントの投稿を支えたのは、宗さんだけではない。新華社が玉兎号の権威ある情報源になり、果殻網の科学ニュース編集者、科学技術記事執筆者、専門家から専門的なサポートを受けた。これらの人々のコンビネーションが、玉兎号のすべての投稿の正確性と専門性を保証した。
 微博で玉兎号が全国民から注目されたのは、月上陸3ヶ月目に制動に問題が生じた時だ。宗さんは玉兎号が急に故障するとは想定していなかったため、セリフも事前に決めていたわけではなかったという。「あれ、ぼく壊れちゃった」これは玉兎号が故障してから初の投稿内容だ。宗さんは、玉兎号の故障がネットユーザーから注目されると思ったが、悲しすぎる情報を伝えたくなかった。宗さんは「宇宙探査はこのように、美しくもあり危険でもある」と話す。
 宗さんは「玉兎号を擬人化した投稿でぶりっ子ぶろうとしたことはない。時にはわざと語気助詞を減らし、科学的・理性的な態度を維持した。それと一つの原則があった。それは月面ローバーに関する投稿は、公式メディアの後にということだった」と明かした。

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