2016年10月10日-10月14日
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中国の科学者、ジカ熱治療に構造情報を提供

2016年10月18日

 中国科学技術大学生命科学学院医学センターが発表した情報によると、同校天然免疫・慢性疾患重点実験室の金騰川氏が率いるチームは、金属イオンがNS3ヘリカーゼを活性化させる分子メカニズムを解明した。同研究は金属イオン「NTP」がNS3ヘリカーゼを活性化させるアロステリック効果に初めて構造的証拠を提示し、ジカ熱治療薬の開発に詳細な構造情報を提供した。同成果は学術誌「核酸研究」に掲載された。新華社が伝えた。
 ジカ熱は新生児の小頭症やギラン・バレー症候群といった神経系統の変化を引き起こすため、世界的に注目されており、今年2月には世界保健機関(WHO)によって「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」とされた。しかし現時点では、ウイルス感染を予防し対抗する効果的な薬は開発されていない。中国科学院先端科学・教育局はジカ熱予防を非常に重視しており、2016年2月17日には上海・パスツール研究所でジカ熱予防緊急研究セミナーを開催し、中国科学技術大学のチームも積極的にジカ熱ウイルスの基礎生物学の研究に取り組んでいる。
 ジカウイルスのNS3ヘリカーゼはウイルス複製のメカニズムにおいてRNAヘリカーゼと複製に重要な作用を及ぼし、またアデノシンと金属イオンはヘリカーゼの機能に不可欠な成分となる。中国科学院「百人計画」トップレベル人材である研究者の金騰川氏率いるチームが、X線結晶回折技術を利用して、初めてジカウイルスのNS3ヘリカーゼと結合するヌクレオシド三リン酸(NTP)と金属イオンの活性化初期状態とNTPの加水分解前や加水後の状態をはっきりととらえ、2価の金属イオンがアデノシンの配座の変化を結合し、誘導させることで、NS3ヘリカーゼを活性化させる分子メカニズムを解明した。

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