2016年10月10日-10月14日
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宇宙実験室「天宮2号」のドアに秘められた最新技術

2016年10月20日

 有人宇宙船「神舟11号」は北京時間19日未明、宇宙実験室「天宮2号」に追いつき、しっかりと結びついた。「天宮」の扉は当日朝ゆっくりと開かれ、宇宙飛行士の景海鵬氏と陳冬氏が海を泳ぐ魚のように相次いで船内に入った。天宮2号の船内に設置されているカメラは、この歴史的瞬間を記録していた。科技日報が伝えた。
 天宮にしろ宇宙船にしろそのドアは決して普通のドアのように単純な作りではない。中国航天科技集団が発表した情報によると、宇宙飛行士は宇宙飛行中に船外活動を何度も実施し、その際にドアを開閉しなければならない。ドアの密封性は、船内の空気の維持を左右する。またドアの密封性を速やかに検査・測定するのことも極めて重要だ。
◆船体の密封材、30年間の使用が可能
 中国航天科技集団第四研究院第42研究所は90年代より、国家宇宙技術発展を見据え、国家863計画の「宇宙船動静密封材」の研究を展開してきた。開発された密封材は欧州宇宙機関とアメリカ航空宇宙局の宇宙材料審査基準に合致し、海外の同類材料の先進水準に達した。中国有人宇宙事業のこれまでの飛行において、第42研究所は神舟や天宮1号のすべての船体密封システム、「飛天号」船外宇宙服ゴム部品などの開発・生産任務を担当した。1万点以上の製品を提供し、一次検査合格率が100%に達し、飛行任務の順調な遂行を保証した。
 天宮2号は中国初の本当の意味での正式な宇宙実験室だ。その密封材にはさまざまな規格があり、より高い安全性・安定性が求められる。密封の安全性と信頼性の他に、材料は安全かつ無毒でなければならない。マイナス70度から200度までの急激な温度変化、高真空、強紫外線、荷電粒子放射、原子酸素侵食などの複雑環境の長期的な試練に耐えなければならず、分解・老化・亀裂を生んではならない。
 堅固な技術的基礎と長年の成熟した経験により、第42研究所の科学研究チームは原材料の選択、加工・成型などの数多くの難題を克服し、完全に国産の、無毒・無害の原材料を開発した。密封材にはさまざまな規格と形状があり、大きなものは直径1メートル以上、小さなものは十数ミリのみだ。科学技術者は特製の金型を作り、サイズの誤差を0.01ミリ以内にすることで、製品の性能を保証した。各種バーチャル環境での試験により、今回の任務で使用される密封製品の耐用期間は30年以上で、各種性能が設計上の需要を満たすことが証明された。
◆ドア異常迅速点検装置
 宇宙船は過去には船内全体を加圧し、船内の圧力の変化をチェックすることでドアの密封性を調べていた。この方法は正確で信頼性が高いが、時間がかかる。初期の無人宇宙船の任務にとってはそれほど大きな影響は無かったが、一分一秒を争う宇宙飛行士の宇宙試験任務では大量な時間の浪費となるため、検査・測定手段の改善が必要だ。
 こういった背景から、中国航天科技集団第五研究院第510研究所はドア異常迅速点検装置を開発し、ドアと接触面の異常を迅速かつ正確にチェックし、国内の同分野の空白を埋めた。同装置はすでに有人宇宙船の最低スペックになっている。
 第510研究所スタッフによると、ドアを閉じると、ドアにある2つの密封圏とドア枠の間に「小部屋」ができる。このドアはドア特有の構造を革新的に利用し、稼働中に小部屋内に一定量の点検ガスを注入し、小部屋内の圧力の変化を調べることでドアの密封状況を判断する。漏れがあれば、直ちに報告し指示を出す。宇宙飛行士はドアの処理を行い、ガス漏れのチェックに合格してから、ようやく船内に入ることができる。
 分かりやすく短時間という圧力変化の特徴を利用することで、このドアは8分以内に点検結果を出すことができる。高精度圧力センサーが内蔵されており、点検対象となった小部屋の圧力信号を伝送する。電気制御ユニットの高精度パルス繰返数収集技術を利用し、ガス圧力収集の精度を十数パスカル内にすることで、迅速な点検結果の正確性を保証する。
 中国は数年内に、自国の宇宙ステーションを建設する。このドアの成功は、宇宙ステーションなど今後の宇宙船のドアや各種密封面の点検に応用され、経験を蓄積し、有人宇宙船の安全な飛行を支援し続ける。

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