2017年08月21日-08月25日
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中国の遺伝子組み換えコイ、いつ発売できるか?

2017年08月15日

 ある米国企業は遺伝子組み換えサーモンの発売を発表した。これは初めて人類の食卓に上がることを認められた、遺伝子組み換え動物食品だ。しかし世界で最も早く遺伝子組換え魚の養殖に成功したのが、中国人科学者であることを知る人は少ない。それでは中国ではなぜ、遺伝子組み換え魚の発売が遅れているのだろうか。新華社が伝えた。
 朱作言氏は、中国科学院水生生物研究所の研究員だ。朱氏らは1983年に遺伝子組み換え魚を研究し、1985年に世界初の遺伝子組み換え魚の養殖成功に関する論文を発表し、西洋の同業者より3年以上も先を行っていた。研究チームはその後、ソウギョの成長因子の遺伝子をコイに植え込み、数世代にも渡って遺伝子組み換えコイ「冠鯉」を養殖した。
 彼らは初めてこの冠鯉を試食した時の食感を覚えている。「醤油で煮込んだコイが食卓に上がった。食べてみると美味で、肉質がきめ細やかだった。食感だけでは、遺伝子組み換えとそうでないものの区別がつかなかった」という。
 朱氏は、「一般的なコイと同じ養殖条件であれば、冠鯉の方が成長が早く、1年で販売できるほどの大きさに達する。養殖期間を半分に短縮し、養殖のコストと労働力を節約し、養殖のリスクを引き下げることができる。また、冠鯉の品質は一般的なコイと同じで、成長が早いからといってまずくなるわけではない」と説明した。
 成長を促進させるため、北米で販売された遺伝子組み換えサーモンの体内には、サーモンの中で全長が最大のチヌークサーモンの成長ホルモン遺伝子が植え込まれている。同じように、上述した冠鯉の体内には、成長の早いソウギョの遺伝子が植え込まれているため、その体内にはソウギョの微量の成長ホルモンがある。
 しかしこれは食用の安全に影響を及ぼさない。冠鯉1匹当たりのホルモン摂取量は、普通のコイ2匹分にしか当たらない。また、魚類の成長ホルモンは一種のタンパク質であり、蒸す・煮る・炒めるなどの調理によりアミノ酸に分解され、ホルモンの生理機能を失う。人体の健康を損ねるステロイドホルモンではない。
 武漢大学基礎医学院、国家食品安全リスクアセスメントセンターは冠鯉の栄養学・毒理学・アレルギー性の研究を行い、冠鯉と一般的なコイが実質的にほぼ差がなく、同じく安全に食べられることを系統的に評価・証明した。
 しかし冠鯉はまだ発売されていない。中国の現行の遺伝子組み換え生物安全管理関連法によると、遺伝子組み換え安全評価は実験・研究、中間試験、環境放出、生産性試験、安全証書取得という5つの段階を踏まえる必要がある。冠鯉の安全評価は2000年に中間試験を完了したが、遺伝子組み換え食品に関する民間からの反発などがあり、長期的に進展がない。
 社会と民間は近年、遺伝子組み換え食品への認識を深めている。北米の遺伝子組み換えサーモンの成功も、研究チームに自信を与えている。そこで研究チームは再び冠鯉の中間試験を再申請し、これを完了した。現在は環境放出の試験段階に入っている。
 朱氏は、「初めて人類の食卓に上がることを許された遺伝子組み換え動物食品であるこのサーモンは、約20年の厳しい審査を受けている。これは、遺伝子組み換え魚を含むバイオ技術新産業の管理と方針決定が科学の法則を尊重し、さらに社会・民間の許容力を考慮する必要があることを十分に説明している。関連科学知識の普及、企業による受け入れと産業化は、ハイテクの発展と産業革新の成功に不可欠な条件だ」と述べた。

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