2019年11月01日-11月08日
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中国科学院、天然ものに匹敵する人工ダイヤの「栽培」に成功

2019年11月08日

 人工ダイヤモンドの値段が天然ダイヤモンドの6分の1ならば、あなたはこれを買うだろうか。中国放送網が伝えた。

「中国科学院寧波材料技術・工程研究所科学技術革新起業報告会」において、数多くの「典型的な科学研究成果」が明らかになった。うち実験室で1週間をかけダイヤモンドを作る技術が注目を集めた。「種」を植えればダイヤモンドに育つというのだ。これは本当だろうか。「栽培」されたダイヤモンドは天然ダイヤモンドとの差はあるだろうか。商業的な見通しはどうだろうか。

 中国科学院海洋新材料・応用技術重点実験室は、ダイヤを植えるという摩訶不思議な説を現実に変えた。同実験室の李赫副室長は、ダイヤを植える「機能炭素材料」チームの一員だ。李氏によると、ダイヤ「栽培」は食糧と同じく、「種」と「肥料」が必要だ。小さな天然のダイヤがこの「種」になる。

「まず天然のダイヤの粒を準備し、それからメタンガスを使う。メタンはエネルギーの作用を受け炭素のプラズマを生む。このプラズマは灰のように空気中で少しずつダイヤの粒に付着する」

 メタンガスから分裂した炭素原子が「ダイヤの種」に付着し、1時間0.007ミリのペースで「成長」する。実験室の環境であれば、1週間で1カラットのダイヤを「栽培」できる。李氏によると、このダイヤは天然のものと同じ化学成分で、そして純度が天然を上回るという。

「化学的には差がなく、いずれも炭素でつくられる。実際には一般的な天然のダイヤは、自然界における形成の過程で大量の不純物が交じる。一方で、人工制御を受けるダイヤはこの不純物が少なく、結晶格子の修飾もしやすい。人工ダイヤの純度はより高く作れるのに対し、天然ダイヤは制御しにくい。見つかったダイヤをそのまま使うしかない。人工ダイヤは基本的に複製品で、その質を制御できる。さらには色も制御できる」

 人工ダイヤの硬度と純度は天然ダイヤに匹敵するが、価格は6分の1しかない。李氏によると、ダイヤ「栽培」技術の成功後は、天然のダイヤを「種」とするまでもなく、より多くの人工ダイヤを作れるようになるという。これはつまり、技術の成熟により人工ダイヤのコストがさらに下がるということだ。ダイヤ「栽培」の目的は半導体の研究及び光学・熱学における応用などだ。

 李氏は「これを作ろうとしたのは半導体の研究に応用するためで、これには他にも高い光学性能がある。その光学・熱学の応用、及び電気学・半導体分野での応用を研究する。それから産業用ダイヤの加工で理想的なカッター材料になる。ダイヤはこれまでも産業界で大量に応用されていた。例えば以前であれば携帯電話の金属のケースはダイヤモンドカッターで加工されていた。しかしこれらは天然ダイヤだった。人工ダイヤを量産化できるようになれば、ダイヤを大きく作ることで加工効率を高めることができる。そのためこれは産業に大きな影響を及ぼす」と述べた。

 世論調査によると、回答者の68%が人工ダイヤは「本物ではない」とした。しかし高級品ブランド研究会社のMVIが行った研究によると、ミレニアル世代の7割が人工ダイヤのアクセサリーを検討するとした。

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