分野別第十二次五ヵ年計画
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国家気候変動対応科学技術発展『12・5』特定計画

2012年5月 科学技術部など16機関

概要

 「国家気候変動対応科学技術発展『12・5』特定計画」は、冒頭の章のサブタイトルが「挑戦とチャンス」となっているように、気候変動に対する取り組みについて意気込みが感じられる内容となっている。

 気候変動対応の科学技術戦略はトップダウン設計が不足し、科学研究、技術開発と応用の間の調整が不十分であり、科学研究の国際的視野が不足し、自主の技術イノベーション研究が不足し、先見性が弱い」と世界のトップレベルと比べると、まだ格差が存在することを率直に認めている。同時に「気候変動対応は、わが国の科学的発展を実現するための重大な需要である」と言い切っている。

 計画の内容はエネルギー分野も含め多岐にわたる。日本では開発が難航している「ナトリウム冷却増殖炉」や、観測とシミュレーションを支える高性能のアプリケーションソフトウェアとスーパーコンピューターシステムの開発も含まれている。


国家気候変動対応科学技術発展「12・5」特定計画

一、情勢‐‐挑戦とチャンス

(一)気候変動は全人類が直面する主要な問題

 20世紀来、全世界の気候は温暖化を主な特徴とする顕著な変動を経験しつつある。1992年の「国連気候変動枠組条約」と1997の「京都議定書」から、2010年の「カンクン合意」に至るまで、地球規模の気候変動及びその影響は日増しに世界の関心の焦点となっている。

 産業革命以来、全世界の大気中のCO2濃度はすでに約280ppm(100万分の1体積比)から2010年の389.8ppmに増加している。政府間気候変動専門委員会の第4次評価報告では、1906年から2005年までに世界の地表平均気温は0.74℃上昇しており、21世紀末までに世界の平均気温はおそらく1.1~6.4℃上昇し、海面は0.2~0.6m上昇するだろうと指摘している。気候変動はすでに、そして引き続き自然と社会・経済システムに対して重大な影響を及ぼしている。以上の科学的認識は、すでに国際社会および各国の気候政策制定と気候変動に関する国際事務処理の根本的な出発点になっている。

 気候変動は環境の問題であり、同時に発展の問題でもある。気候変動は現在の人類社会に対して巨大な挑戦を構成し、国際社会は気候変動の試練に対応するために積極的な緩和と適応の行動を採っており、これらの行動は人類が気候変動の壊滅的影響を回避する措置であるのみならず、いかに低炭素の発展を実現するかという問題も提起しており、将来の経済・社会の発展に影響を与えるだろう。

(二)気候変動対応は、わが国の科学的発展を実現するための重大な需要である

 気候変動は、国の経済安全保障と社会の持続可能な開発に関わっている。この100年近く、わが国の気候も温暖化の過程を経て、気候変動はすでにわが国の地表環境と自然生態系に深刻な影響をもたらし、そして社会・経済システムに影響を及ぼしている。急速に経済が発展している発展途上大国として、過去30年のわが国の温室効果ガス排出は急速に増加し、現在の年間排出量はすでに世界の上位に位置している。わが国のGDP当りエネルギー消費と温室効果ガス排出量は下がる傾向を呈しているが、エネルギー消費と温室効果ガスの排出総量は増加する傾向が続き、短期間内に改善することは難しい。

 中国政府は気候変動問題を非常に重視しており、気候変動対応の戦略と行動を積極的に実施している。わが国は、1993年に国家気候変動調整グループを設置し、2007年に温家宝首相がグループ長を務める国家気候変動対応指導グループを設置した。2007年、中国共産党第17回全国代表大会の報告では、「気候変動対応能力の建設を強化し、地球規模の気候保護に新たに貢献する」と明確に提起した。同年、「気候変動に対応する国家プラン」を発表した。2009年8月、第11期全国人民代表大会常務委員会第10回会議は、「気候変動への積極的な対応に関する決議」を採択した。11月、国務院常務委員会会議は、2020年までのわが国の単位GDP当たりCO2排出を2005年比で40%~45%削減し、非化石エネルギーの一次エネルギー消費に占める比率を15%程度に到達させ、森林面積を2005年比で4,000万ha増加させ、森林蓄積量を2005年比で13億m3増加させることを求めた。

 気候変動への積極的な対応は、わが国の経済・社会発展の大局と人民大衆の切実な利益、人類の生存と各国の発展には関わっている。気候変動への積極的な対応は、現在の世界の発展傾向に応じるための客観的要求であり、わが国が持続可能な開発を実現するための内在的ニーズと歴史的好機でもある。気候変動対応は多くの分野に関わる複雑なシステム工学である。科学的発展観を徹底的に実行し、そして緩和と適応をともに重視し、科学技術の進歩と技術イノベーションに依拠し、温室効果ガスの排出抑制と気候変動適応能力を増強しなければならない。構造調整と産業グレードアップを通じた省エネルギー・排出削減促進を堅持し、発展方式の転換を通じて持続可能な開発を実現する。

(三)気候変動に対応するために強力な科学技術支援が必要である

 気候変動対応は、科学技術の進歩とイノベーションをなくしてはありえない。気候変動の法則性を認識し、気候変動の影響を識別し、気候変動に適応して緩和させる技術を開発し、気候変動対応の適切な施策を制定し、気候変動対応に関する国際規則の制定に参加するなどは、いずれも気候変動に関する科学技術の力添えを必要とする。

 気候変動の挑戦に対応するため、世界主な先進国と一部の発展途上国が気候変動総合研究計画を続々と制定し、そして関連政策を実施し、基礎研究の強化と実用技術の研究開発を推進している。

 国際地球変動研究の提唱国であり、世界でも比較的早く気候変動研究を展開した国の一つとして、わが国は、気候変動分野の科学技術の進歩とイノベーション創出に努力し、関連する国際科学技術協力を積極的に推進している。「中国気候変動に対応する国家プラン」は、科学技術の進歩とイノベーションに依拠して気候変動に対応することを明確に提示した。「国家中長期科学・技術発展計画要綱(2006~2020年)」は、気候変動に関する科学技術の研究開発を、科学技術発展の優先分野および優先テーマの重要な内容として確定した。2007年6月、科学技術部、国家発展改革委などの14省庁は合同で、「中国気候変動対応科学技術特別行動」を発表した。

 この30年来、わが国の気候変動研究及びそれに関連した科学技術は大きく前進した。気候変動研究に関連する一群の研究機関と拠点を建設し、相当な規模の研究人材部隊を形成し、気候変動の観測およびモニタリングネットワークの枠組みを初歩的に構築した。気候変動の法則性、メカニズム、地域的対応、及び人間活動との相互作用などの面で一連の研究を展開し、国際的に公認される多数の研究成果を上げた。一連の再生可能な資源と新エネルギー技術を発展させ、一群の緩和・適応に資する効率的な実用技術を確立した。

 だが、世界のトップレベルと比べると、まだ格差が存在する。気候変動対応の科学技術戦略はトップダウン設計が不足し、科学研究、技術開発と応用の間の調整が不十分であり、長期的で安定したメカニズムの整備を強化する必要がある。科学研究の国際的視野が不足し、自主の技術イノベーション研究が不足し、先見性が弱い。緩和と適応に資する技術開発が停滞し、まだ十分に国の要請を満たすことができない。世界的に影響力のある機関が少なく、研究チームは最適化する必要がある。情報共有メカニズムは早急に整備する必要があり、資源の統合を強化しなければならない。

 「2・5」時期に、わが国の気候変動対応の科学技術活動を強化し、国の気候変動対応の戦略的ニーズに貢献するため、ここに「『12・5』国家気候変動対応科学技術発展特別計画」(以下、「特別計画」と略称)を制定する。

二、指導構想と目標

(一)指導構想

 科学的発展観を指針とし、「国家中長期科学・技術発展計画綱要(2006~2020年)」と「国民経済と社会発展の第十二次五カ年計画要綱」を徹底的に実行し、「世界を視野に入れ、大局に貢献し、統一的に計画を立て、重点的に突破し、交差統合をはかり、自主的イノベーションを創出し、能力を高め、人材を育成する」という原則に基づき、国の主要なニーズと世界科学技術の最先端に向けて、わが国の気候変動対応の科学研究レベルを向上させ、気候変動緩和・適応に関する技術開発のイノベーション能力を増強し、気候変動対応における科学技術のサポート・指導役を発揮し、経済発展方式の転換および経済・社会の持続可能な開発を促進する。

(二)基本原則

  1. 世界を視野に入れ、大局に貢献する。「気候変動対応能力の建設を強化し、地球規模の気候保護のために新たな貢献を行う」という要求に基づき、世界の最先端と国の主要なニーズに照準を合わせて、国内と国際という2つの大局に奉仕し、グローバルな視野で戦略的目標を絞り、世界の科学技術資源を十分に利用し、わが国の気候変動対応の科学技術行動を全体的に計画して手配する。
  2. 統一的に計画し、重点的に突破する。持続可能な開発の枠組みの下で気候変動に積極的に対応し、緩和と適応、当面の利益と長期的な戦略を統一的に考慮し、経済・社会の発展と生態文化の建設に貢献する。ウイークポイントに対して、力を合わせ、気候変動に対応するための核心的、緊急的、大局的な科学技術課題で重点的にブレークスルーを実現する。
  3. 交差統合を推進し、自主的な技術イノベーションを行う。わが国の気候変動に対するコアとなる科学・技術の課題に対し、各方面の科学技術資源を効果的に調整・統合し、自然科学と社会科学との結合を強化し、学際間の相互作用を通じて、創造的な技術イノベーションを促進し、気候変動対応に関する科学技術事業全体の飛躍的発展を実現する。
  4. 能力を強化し、人材を育成する。気候変動の観測、シミュレーション、実験、共有などの科学技術インフラ施設と、気候変動を緩和し適応する技術の開発能力育成を強化し、気候変動対応をサポートできる強力な科学技術支援体系を確立する。気候変動に対応する各種の科学技術人材の育成を強化し、人材に関する近代的インセンティブ・競争メカニズムを確立し、海外から優秀な人材と知恵を招致することに力を入れる。

(三)計画目標

 『特別計画』の全体目標は、わが国の気候変動分野における科学技術力を高め、世界トップレベルとの格差を縮小すること、わが国の気候変動緩和・適応技術のイノベーションと展開応用を推進し、わが国の持続可能な開発戦略の実施を支援し、「12・5」期間中と2020年までの単位GDP当たりのCO2排出、非化石エネルギーの一次エネルギー消費に占める比率、森林被覆率と蓄積量などの目標達成を支援すること、気候変動に対応する科学技術政策・法規を整備し、気候変動に対応する科学技術の国家管理体系を完備することである。具体的な目標は以下である。

  1. 気候変動の科学研究水準が著しく向上する。世界先進レベルに達した気候変動の観測・モニタリングプラットフォームと地球システムモデルが初歩的に確立され、温室効果ガス濃度モニタリング衛星の研究開発が成功し、そして応用され、気候変動に関する観測システム、高性能コンピューティングソフトウェアと関連のハードウェアデバイスの開発レベルが向上する。気候変動の事実、メカニズム、原因、シミュレーション、および影響評価と適応モデルなどに関する研究の水準が世界トップレベルに達する。
  2. 気候変動の技術イノベーションと科学的意思決定能力が著しく高まる。気候変動に対応する科学技術イノベーション体系の確立が絶えず完備され、低炭素技術と気候変動に適応する技術が大いに発展し、CO2排出の算定、検証と監督に資する科学技術支援体系が初歩的に確立され、科学技術と政治、経済、社会、外交、法律、政策の総合研究が強化され、わが国の気候変動の緩和・適応およびエコロジー開発戦略構想と対策の提出を強力に支援する。
  3. 気候変動研究に従事する人材育成、拠点整備と国際科学技術協力のレベルが向上する。学際的で分野横断のグローバル化したハイレベルの科学研究人材部隊が基本的に形成され、気候変動対応の科学研究拠点が建設され、科学研究資源の提供・共有能力が明らかに高まり、オープンな国際科学研究プラットフォームの建設が強化され、わが国の気候変動対応に関する科学技術の研究開発を力強くサポートする。
  4. 地球規模気候変動に対応する科学技術のマクロ的調整と管理能力が明らかに強化される。気候変動対応の科学技術事業に対する支援が絶えず強化され、基礎研究、技術開発、キャパシティビルディングと意思決定支援に対する統一調整が強化され、各分野、各部門の気候変動対応科学技術事活動に関わる協調・協力が強化され、気候変動対応科学技術の管理効果が絶えず高まる。

三、重点領域

(一)科学基礎

1.気候変動観測の理論、方法と技術

 気候変動の基本変数、および基本変数に対する有効な観測方法と技術を研究して正確に叙述し、既存の温度、降雨量、雲などの基本変数の観測技術、方法を評価・改善し、大気の温室効果ガス濃度などの大気成分変化に対する衛星観測と逆解析を強化し、気候変動の観測ネットワークと観測規範を完備する。

2.長シーケンスで高精度な過去の気候変動の再建

 長シーケンスで高精度な過去の気候変動を再建する新理論、新方法と新技術を発展させ、多種の気候変動記録プロキシデータの効果的な集積方法、過去の気候変動の歴史を研究する。

3.地球規模気候変動の法則性およびメカニズム

 地球規模気候変動の事実診断、法則と特徴分析を発展させ、自然の駆動力自体の法則と定量的記述、駆動プロセスとメカニズム、および駆動力と駆動プロセス間の相互作用、人間活動の気候に影響を与える方式、特徴と定量要因分析、人間活動と自然駆動力の相互作用を研究する。将来20~50年の自然的および人為的な駆動力の変化傾向、気候システムの駆動力の変化に対する応答、すなわち気候システムの各圏層の相互作用、気候システムの安定状態動作の法則、臨界閾値と自己適応機構、気候システムの非線形特性、突然変異とトリガのメカニズムを研究する。地球工学に関連する基礎理論の探索と研究を実施する。

4.地球気候変動データの総合集積

 気候システムコア要素の観測データの同化法、結合と集積技術を研究し、それらにはマルチソース、マルチスケールデータが同一の進化する地球システムにおける一貫的な表現が含まれる。異なる物理的メカニズム下の異なるモデルを、統一の地球システムモデルに統合する。多用途のデータ製品の形成、地域的炭素収支の定量認定および炭素吸収源の算定、気候に影響を与える人間活動データの統合、地球気候変動データネットワーク(ベース)の設計構築と共有を推進する。

5.地球システムモデルの発展と気候変動のシミュレーション・予測

 気候システムモデルの発展・充実およびシミュレーションを推進し、地球システムモデルの設計、コアとなる物理・化学・生物プロセスのパラメータ化およびその不確定性、重要な結合プロセス(例えば雲-アエロゾル-放射の相互作用など)に関する結合技術、地球システムモデルの高度集積環境創製と計算方法の発展、地球システムの重要な気候事件とプロセスのシミュレーション、気候変動の予報可能性および予測理論、方法と技術を研究する。

(二)影響と適応

 水資源、農業、林業、海洋、ヒトの健康、生態システム、重大プロジェクト、災害防止・軽減などの重点分野をめぐって、気候変動の影響メカニズムおよび評価方法に関する研究のレベル向上に力を入れ、適応理論と技術研究開発能力を増強し、典型的な脆弱地域・分野における適応実証を展開し、気候変動対応と地域の持続可能な開発に関する総合実証を積極的に実施する。

1.気候変動影響のメカニズムおよび評価方法

 気候変動および極端な気象現象の影響メカニズムに関する実験と総合評価模型の研究を強化し、気候変動影響の脆弱性とリスク分析を展開し、すでに発生した気候変動および全世界の持続的気温上昇が各分野と地域に与える総合影響を評価する。

2.適応理論と技術の研究開発

 わが国の部門、業界、地域による適応理論と方法学の研究を展開し、適応に関する意思決定支援システムを開発し、適応に資する資金と技術的ニーズを評価し、脆弱分野に向けた指向性の高い適応技術を研究開発し、極端な気象現象の予防および災害防止・軽減技術を開発し、気候変動に適応する技術体系を確立し、気候変動適応に関する技術基準を制定し、適応技術の統合と応用展開を強化する。

3.典型的脆弱分野および地域における実証

 農業、林業、水資源、ヒトの健康、生物多様性と生態系、重大プロジェクト、災害の防止・軽減などの主要分野と水資源の脆弱地域、自然災害頻発地域、農牧交錯地帯、海岸地帯および生態脆弱地域、チベット高原などの典型的地域について、適応対策と措置の研究を展開し、適応措置の費用対効果を分析し、気候変動に適応する技術と実証を展開する。

4.気候変動適応と地域の持続可能な開発

 気候変動が影響を及ぼす重点地域、脆弱な民衆と適応に関する優先項目を研究する。気候変動適応と地域経済・社会発展計画、気候変動適応と未発達地域の経済・社会発展計画との結合研究を強化し、気候変動適応政策の制定と立法に関する研究、および気候変動適応分野での国際共同研究を実施する。

(三)緩和

 温室効果ガスの排出削減と低炭素経済を促進する科学技術のサポート能力向上に力を入れ、非化石エネルギー・クリーンコール技術のイノベーションと市場化展開を推進し、工業、建築、交通など重点分野の省エネとエネルギー使用効果の向上に関する新技術の開発を強化し、林業のCO2吸収、工業のCO2隔離に関するコア技術を開発し、CO2の捕集、利用と密封貯留などのコア技術のコストダウンと市場化応用問題の解決に力を入れ、CO2排出集計モニタリング技術体系を確立し、国のCO2排出量とエネルギー消費量の拘束的指標を達成するよう支援する。

1.省エネルギーとエネルギー効率の向上

 循環型経済の発展とエネルギー利用率の向上を原則とし、工業、建築、交通などの主なエネルギー消費分野の個別技術、システム統合技術および基盤的コア技術を重点に、高エネルギー消費業種のエネルギーカスケード総合利用技術、工業余剰エネルギーと余熱の高度利用技術、建築とインフラ施設の省エネ技術、交通輸送手段の省エネ技術と新エネルギー利用技術を研究開発する。

2.クリーンエネルギーとクリーンコール

 クリーンエネルギー技術の大規模化と経済的利用を支援することを目指し、費用対効果の高い風力発電技術、太陽電池および利用技術と太陽エネルギー光熱発電技術を開発し、燃料電池、バイオマスエネルギー、原子力、水素エネルギー、地熱エネルギー、海洋エネルギーなどの開発利用技術の研究開発を強化する。現役の主要エネルギーのクリーン化と低炭素化を狙い、石炭のクリーンで効率的な利用に資する技術、石炭ベースのクリーンエネルギー生産技術と非通常天然ガス大規模開発利用技術の開発を強化する。

3.CO2吸収源増加、回収・利用・貯留

 生物学的炭素隔離工学技術を研究し、土地利用方式の転換と農業生産方式のコントロールを通じて、温室効果ガス排出を減少する技術を研究し、CO2の捕集、利用と密封貯留技術の研究と実証を展開する。

4.CO2収支のモニタリングおよび管理

 CO2排出源、CO2吸収の総合モニタリング技術体系を確立し、わが国の国情に合致した温室効果ガスインベントリーの作成基準と方法を研究し、わが国の地域、業界のCO2収支状況算定の方法と技術を研究し、温室効果ガス排出削減の推計、報告と精査のコア技術と管理体系の構築を支援する。

(四)経済社会の発展

 気候変動対応の主要な戦略と政策に関する研究を重点的に強化し、わが国の低炭素と持続可能な開発に資する科学技術支援体系の建設と総合実証を推進し、公衆の気候変動対応に参加する意識を高める。

1.国の重大戦略と政策

 気候変動対応に関わる制度、法律、政策、行動施策と評価体系の確立・改善を研究し、わが国の気候変動対応に適する国際貿易戦略と政策を研究し、わが国のCO2排出権取引市場の技術サポート体系の確立を検討する。気候変動適応の戦略措置と行動計画を制定し、気候変動に対応する重大な最先端科学技術発展戦略および地域の気候、資源、環境変化の法則、積載能力と調和した地域の持続可能な開発戦略を研究して提起する。

2.国際戦略および国際協力

 気候変動の背景下での国際政治経済の新しい秩序を研究し、それがわが国の経済、貿易、資源、エネルギーと生態系安全に与える影響を分析する。気候に優しい技術の転移および知的財産権保護戦略を研究し、気候、経済、社会発展の総合分析模型を研究開発する。世界と主要国の温室効果ガスに関する長期目標、排出削減の手段、緩和・適応のコストおよび気候変動対応の制度設計を分析し、気候変動に関する国際条約の変遷と発展の趨勢を研究し、わが国の気候変動対応の国際戦略を充実し、気候変動の影響を受けた極地保護と協力の戦略を研究し、気候変動対応の国際共同研究を積極的に推進する。

3.低炭素と持続可能な開発

 グリーン・低炭素開発の理論を研究し、わが国の温室効果ガス排出削減の潜在性、影響と社会経済コスト、収益を分析し、工業化、農業近代化と都市化の過程における排出削減戦略を研究し、低炭素開発のロードマップを打ち出す。気候変動の社会発展と地域住民の生計に対する影響を研究し、気候変動に適応する地域社会経済の構成を研究する。重点分野・地域の気候変動に対応する能力育成と実証を行い、インフラ施設と重大プロジェクトの気候変動に適応する技術と管理に関する研究を展開する。国の持続可能な開発実験パークでの気候変動に対応する政策、技術の総合実証を行う。

4.公衆の意識

 グリーン・低炭素と持続可能な開発の理念を普及し、全国民のグリーン・低炭素消費スタイルへの転換を促進し、科学普及を強化し、気候変動対応に関する教育普及体系と知識普及体系の整備を推進し、全国民の気候変動対応への積極的参加の意識を高め、社会組織の気候変動対応への参画行動を促進する。

四、重点業務

(一)基礎研究

1.地球気候変動の事実、過程とメカニズムに関する研究

 地球気候変動の事実、成因及びマルチスケールの相互作用を研究し、陸地と海洋の大気相互作用のプロセスとメカニズム及び地球気候との関係を探求し、地球気候変動の敏感性、突然変異およびその変化の予測可能性、地球変動に敏感な地域の気候と環境変化の法則及びその予測、太陽と地球の関係や地球深部プロセスの地球変動に対する影響を研究する。

2.人間活動の気候変動に与える影響に関する研究

 地球温室効果ガス排出の歴史、カーボントランスファーを検査(観測)する技術体系の確立を研究し、大規模な土地・近海利用変化の地球気候変動に与えた影響の研究を展開し、人為的なエアロゾル排出の地球気候変動に与えた影響、人間活動の20世紀の地球気温上昇に対与えた影響を研究する。

3.気候変動の影響及び適応に関する研究

 生物圏の構造機能の気候変動への応答とコントロール方法、雪氷圏の変化及びその影響、気候変動の水資源と海洋環境に対する影響及び人間の適応方法、極端な気象現象の進化法則・影響と適応、気候変動の食糧安全確保とヒトの健康に対する影響と適応、気候変動のわが国社会・経済の発展に対する影響と適応、気候変動経済学、気候システム管理と総合リスク対策、気候システムの地球変動に適応する弾力性と閾値を研究する。

4.気候システムに対する総合観測とデータ集計に関する研究

 地球気候変動のコアパラメータとプロセスに対する総合観測、高精度リモートセンサの原理研究およびリモートセンシングと地上観測データの校正を展開する。気候システムのマルチソース観測データの品質管理、同化、結合・集積および共有のメカニズムを研究する。

5.地球システムモデルの発展と数値シミュレーションに関する研究

 高分解能気候システムモデルの研究開発と気候予測を実施する。地球システムモデルの研究開発およびその効果的並列アルゴリズムと並列カプラーの開発を推進し、気候変動の陸地、海洋、生態系と生物地球化学プロセスに対する影響およびその気候に対するフィードバック効果の評価と気候システムの変化予測を展開する。

(二)緩和・適応技術

 複数の部門・分野をまたいだ実行の可能性が高く、広く応用が見通される気候変動の緩和・適応に資する技術を選択して重点的に支援し、集中的に開発、そして実証を展開する。

 気候変動の緩和に資する以下10件のコア技術を重点的に開発する。(1)高パラメータ超超臨界発電技術、(2)全体ガス化サイクル技術、(3)非在来型天然ガス資源の探査・開発技術、(4)大規模な再生エネルギー発電、エネルギー蓄積とグリッド接続技術、(5)新エネルギー自動車技術および低炭素代替燃料技術、(6)都市部のエネルギー供給者・使用者による省エネ・排出削減技術、(7)建築省エネルギー技術、(8)鉄鋼、冶金、化工と建築材料の生産過程における省エネルギーと余熱大規模利用技術、(9)農・林・牧畜業および湿地による炭素回収・貯留と吸収源増加技術、(10)炭素の捕集・利用および貯留技術。

 気候変動への適応に資する以下10件のコア技術重点的に開発する。(1)極端な気象現象の予測と早期警報技術、(2)乾燥地域の水資源開発と効果的利用、合理的配置と適切調整技術、(3)植物の干ばつ・高温耐性品種の選抜育種と病虫害防止技術、(4)典型的な気候に敏感な生態系を保護・修復する技術、(5)気候変動の影響とリスク評価技術、(6)ヒトの健康に関する総合適応技術、(7)典型的海岸地帯の総合適応技術、(8)極端な気象現象に対応する都市ライフラインプロジェクトの安全対策技術、(9)重点業界の気候変動に適応する基準・規範の改定、(10)気象改変技術。

 関連分野と部門において、以下の緩和・適応技術を発展させる。

1.エネルギー分野

 化石燃料の開発と利用では、非在来型オイルガスの探査、開発と処理の技術、石炭の開発過程におけるメタンガス排出抑制技術、炭層ガスおよび立坑ガスの排出採掘・利用技術を発展させる。高パラメータ超臨界発電のコア技術、全体石炭ガスサイクル技術を発展させる。天然ガスの分散型供給技術、石炭ベース低炭素代替燃料および化学製品生産のコア技術を発展させる。

 再生可能なエネルギーでは、水力エネルギー、風力エネルギー、太陽エネルギー、バイオマスエネルギーの高度開発利用に関する技術を大いに発展させる。水力エネルギーの開発利用では、大規模で復雑な水力発電所クラスターを適切に企画する技術、流域のカスケード水力発電所クラスターの多目的共同運行と適切調整技術、効率が高い水力発電技術を発展させる。風力エネルギーの開発利用では、大規模な風力エネルギーを利用するウインドファーム技術、大型海上風力発電技術、風力資源予測技術を発展させる。 

 太陽エネルギーの開発利用では、太陽光発電のコア技術、太陽熱利用技術、太陽熱発電技術を発展させる。バイオマスエネルギーの開発利用では、エネルギー植物の栽培技術、バイオマス成型燃料技術、バイオ燃料生産のコア技術と埋立地ガス、メタンガスの浄化とエネルギー化利用技術を発展させる。再生可能なエネルギーの製造・貯蔵・利用一体化に基づく燃料電池発電の統合実証を展開する。

 原子力技術では、第4世代原子力技術であるナトリウム冷却高速炉技術、超高温ガス冷却炉、一体化加圧水型原子炉技術、先進的な核燃料コア技術、大規模化水素製造技術を研究開発し、そして関連実証を実施する。

 エネルギーの輸送・配分では、大規模な間欠性電源のフレンドリーな接続と制御技術、グリッド最適化リソース配置能力向上技術、電気自動車の充電・電池交換および大規模のエネルギー貯蔵技術、電力供給の信頼性向上技術、ユーザーの双方向インタラクティブサービス技術、情報通信支援技術を代表とするスマートグリッド技術を重点的に開発する。

 省エネルギー技術では、効率的な汎用機械および補助装置技術、電力電子装置の省エネコア技術、低温余熱発電技術、ユーザーサイドの省エネ管理技術などを開発する。

2.工業分野

 鉄鋼工業分野では、粉炭の触媒による燃焼促進および排出削減のコア技術、マイクロ波冶金技術、無水石炭コークス製造技術、高炉スラグ余熱回収のコア技術、低品質熱エネルギーの回収および総合利用技術などを開発する。

 建築材料の製造と応用分野では、低炭素排出のゲル化材料、バイオマス材料と省エネおよび太陽エネルギー建築用の新型建築材料などを重点的に研究開発する。

 石油および化学工業分野では、新型の化学工業プロセス強化技術、工業排気ガスの効率的利用技術などを開発する。

 非鉄金属分野では、複雑な鉱物選別と濃縮技術を発展させ、高効率の省エネ採掘選別装置、非鉄金属製錬プロセスにおける省エネ・消費低減のコントロールと最適化技術、液体高鉛スラグの直接環元技術と炉形式を開発し、熱マグネシウム製錬工程設備の最適化をはかり、高性能で長寿命の動力電池用コア材料、余熱利用と省エネ技術、循環型再生可能な非鉄金属プロセス装置などを開発する。

 先進製造業分野では、低エネルギー消費、低排出の製造工程と装置技術の開発および応用実証を展開し、高エネルギー消費生産装置の省エネ・最適化設計、製造および応用普及を強化し、製造システムの省エネ・最適化運用技術および実証展開を強化し、資源リサイクル利用のコア技術および応用実証などを強化する。

3.交通分野

 従来型自動車の省エネ・排出削減技術、低炭素交通代替エネルギー技術、軌道交通と大型総合交通中枢の省エネ技術を開発し、新エネルギー自動車、電気自動車の重大な科学技術の産業化と動力電池ブレークスルー創出事業を推進する。

 環境にやさしい高効率の航空動力総合エネルギー管理技術、高バイパス比ターボファンエンジンの低排出燃焼室設計技術、高効率で低エネルギー消費の高バイパス比圧縮システム結合設計技術、高効率で低エネルギー消費の空気圧タービン設計技術、高効率の汎用航空機エンジン技術と航空機の軽量化低抵抗技術を開発する。省エネ船およびそのコア装置技術を開発する。

4.建築と住居分野

 大型コージェネレーション発電所のエネルギー利用効果と都市熱供給配管網の輸送能力を高めるコア技術の研究開発および実証を推進し、ヒートポンプを利用した各種熱供給ボイラーの改造と排煙潜熱の回収技術、集中的熱・冷房供給技術、分散式エネルギー応用技術、LED関連の光源、照明器具、制御と新しい照明設計手法などの建物省エネに関するコア技術、ゴミ汚水処理の資源化と低炭素化技術を開発する。北部地域の気候特徴に基づいて、北部の中小市町の高効率集中熱供給の熱源モデルを主とする都市エネルギー供給システムに向けた省エネおよび排出削減技術、都市集中暖房の使用者による室温調節技術を研究開発する。長江流域および長江以南地域の気候特徴に基づいて、住宅の分散式室内環境をコントロールする新しいシステムを開発し、適宜な地域で木造構造建築の研究と展開を推進する。

 農村部の建築保温技術を研究開発し、北部地域の「オンドル‐かまど」システムを最適化し、高効率でローコストのワラ圧縮成型技術と関連装置、バイオマス熱によるガス生産技術とシステムを研究開発し、農村地域のメタンガス生産のコア技術と実証を大いに普及展開する。

5.農・林業とその他の土地利用

 排出削減技術の研究開発では、生産過程における機械の省エネ・排出削減技術、反芻(はんすう)動物のメタンガス排出削減と動物廃棄物の資源化利用技術、わが国の国情に合致した農業ワラと林業バイオマスエネルギーの生産と利用技術、標準化建設およびCDM(クリーン開発メカニズム)方法論を重点的に開発する。

 適応技術の研究開発では、農業の極端な気象現象に対応するモニタリング・早期警報と災害防止・軽減技術の研究開発と応用普及を強化し、耕地の温室効果ガスの排出抑制技術と検査測定の方法論学を充実する。耐性植物品種育成に関する生物学技術と作物構造調整技術の研究開発を強化する。

 炭素回収・貯留と吸収源増加技術の研究開発では、中・低産耕地改造による増産と炭素回収・貯留と吸収源増加技術、造林、再造林、森林育成経営、森林保護・管理技術、森林退化地の植生回復と再建技術、草地、砂漠化地域の植生回復と湿原生態系の回復と管理プロジェクトの吸収源増加コア技術の研究開発を加速し、炭素吸収源となる漁業のコア技術を探求し、吸収源増加に資する近海水産養殖モデルを構築する。

6.海洋および海岸地帯

 近海生態系の炭素源評価と炭素回収・貯留のコア技術を実施し、海洋エネルギー利用技術を探求し、典型的な海洋生態系の保護、修復と適応技術の研究開発と実証を展開し、気候変動に密接な関係がある高潮、大波、赤潮などの海洋災害の早期警報コア技術の研究開発を強化する。

7.水資源

 気候変動のわが国の降水、水資源空間分布に与える影響を評価し、適応地域における旱・水害の水資源最適化と流域をまたいだ水移動配置計画を研究・制定する。洪水の資源化利用、海水淡水化、中水処理と応用技術、および空中雲に含まれる水資源の開発利用技術を研究開発する。気候変動の水利プロジェクトに対する影響評価と適応技術を研究し、凍結防止と耐高温の水利土木構造物の設計基準を研究制定し、高性能コンクリートと代替物の応用技術を開発する。重大な水害と旱害に対するモニタリング、早期警報と予防の技術開発を強化する。

8.生態系と環境

 気候変動の地域自然生態系と生物多様性に与える影響を評価する技術の研究開発を重点的に強化し、気候変動に適応する生態機能回復のコア技術と希少な絶滅危惧動植物の保護および回復技術を発展させ、気候変動がもたらす外来種侵入のリスク評価とモニタリング、予防コントロールの技術開発を強化する。

 温室効果ガスと主な汚染物質排出との関係を評価する技術、地域の温室効果ガス排出抑制と大気汚染共同整備のコア技術を重点的に研究開発し、重要工業における固定の温室効果ガス排出源を観測する技術、および製品の低炭素ラベリング・認証技術を開発する。

9.CO2回収・利用・貯留技術の開発と実証

 低エネルギー消費の燃焼前、燃焼後および酸素富化燃焼、炭素回収プロセス技術およびコア技術を研究開発し、貯留場所の鑑定・選定、CO2の地下流動モニタリング・シミュレーション、漏出リスクの評価・処理、測定・モニタリングなどのコア技術を研究して確立し、CO2を用いる採油強化、微細藻類を用いる製油と化学工業利用などのCO2利用技術の研究開発と実証を展開し、CO2回収・利用・貯留技術のロードマップおよび関連する法律法規の研究、発電、鉄鋼、セメント、化学工業などの重点業界をめぐるCO2回収・利用・貯留技術の総合集積と実証を展開する。

(三)経済社会の持続可能な開発

1.気候変動に対応するための戦略研究

 全世界の気候変動対応によってもたらされた国際経済社会発展モデル、競争力と競争構成、資源需給構成、貿易ルールなどの変化、およびそれがわが国にもたらす挑戦とチャンスを研究し、気候変動に関する国際交渉に掲げられた緩和メカニズム、技術移転メカニズム、資金メカニズム、適応メカニズムと炭素市場メカニズムなどを研究し、わが国の国益を守る具体的な交渉策略とプランを提出する。適応‐排出削減‐発展の結合模型と温室効果ガス排出手段、ピーク値を確立し、わが国の気候変動に対応するマクロ的政策の決定を支援する。わが国の各業界・地域における排出削減の潜在力と費用便益に関する分析と比較を行い、わが国の各業界の排出削減を促進するための法規、財政、金融、科学技術、市場などの総合メカニズムと制度的措置を提出する。

 主要国の気候変動科学技術の進展および政策を追跡調査し、わが国の主な業界の低炭素技術の開発レベルと世界先進レベルとの格差を分析・比較し、低炭素技術開発のロードマップを検討して制定し、重点業界の排出削減技術インベントリーと脆弱地域および分野別適応技術インベントリーを作成し、低炭素技術および適応技術の開発戦略を研究する。

2.重点業界の低炭素技術総合集積および実証

 重点業界の平均エネルギー効果と排出レベルを研究・分析し、石炭火力発電、鉄鋼、石油、化学工業、セメントなどの重点産業の低コスト排出削減の個別技術を集積し、異なる地域に適する排出削減技術モデルを確立し、そして応用展開する。スマート交通技術の実証と応用展開を推進し、異なるタイプの気候地域において、建築、コミュニティに向けた省エネ技術の総合実証を展開する。

3.地域の気候変動対応と持続可能な開発に関するコア技術研究・実証

 気候変動の予測研究、および異なる予測結果の比較分析を展開し、異なる地域の気候変動の動向を確定する。気候変動に適応する地域経済の構造調整を研究し、農業、林業、水利、海岸地帯および農牧交錯地帯などの気候敏感地域に向けた気候変動適応技術の集積と実証を行う。気候変動がヒトの健康や経済未発達地域の貧困層の生計に与える影響に対するモニタリング、評価と早期警報の研究と実証を行う。

4.炭素発生源と炭素吸収源に対する観測・統計・評価体系

 陸地生態系の炭素発生源と炭素吸収源に対するリアルタイムな観測、推算の方法と技術を研究し、温室効果ガス排出に対する測定、統計と綿密な調査の方法および技術体系を研究して確立し、エネルギー効果評価、エネルギー効果ベンチマーキング、エネルギーパフォーマンス契約(EPC)に関する技術支援体系を研究して確立し、省エネ・環境保全産業技術提供とCO2排出権取引技術提供の異なる地域における試行と実証を展開する。

5.重大プロジェクトの気候変動に対応するコア技術の集積と実証

 気候変動の三峡ダム、「南水北調」などの水利・水力発電プロジェクトに与える影響の評価方法、および適応技術に関する研究開発を展開し、気候変動の「西気東輸」などのエネルギー輸送プロジェクトに与える影響の評価方法および適応技術に関する研究開発を展開し、気候変動の「退耕還林」など重大生態系プロジェクトに与える影響の評価方法および適応技術の研究開発を展開する。

6.都市部の気候変動に対応する技術の集積と実証

 都市の高効率・低炭素運行に関わる企画・設計技術を開発し、都市改造過程に生み出された廃棄材料の利用技術を開発し、低炭素都市評価体系と経済管理メカニズムに関する研究を推進する。都市部のヒートアイランド効果抑制技術を研究開発し、市街地の冠水と高温スモッグに関連する技術を研究開発し、都市部の気候変動に適応する総合技術の集積と実証を実施する。

(四)国際科学技術協力

 国の科学技術計画を通じて、気候変動に関する国際科学技術協力を支援する。気候変動対応を優先分野として、二国間または多国間の政府間科学技術協力協定の枠組みに取り上げ、そして対外科学技術援助の重点分野にも位置づけさせる。主要国や国際組織及び国外の著名な研究機関と長期的に協力するよう奨励する。気候変動に向けた国際組織と国際研究プログラムに参加する。

1.主要な国際組織および国際研究プログラムに参加する

 国内需要、重点課題およびわが国の国連気候変動交渉・国際行動に参加する需要をめぐり、必要に応じて、気候変動分野の国際組織と国際研究プログラムに参加する。国際研究プログラムを適宜に提案し、わが国の研究者および研究成果の国際的影響力を高める。気候変動分野の国際的または地域的な科学技術組織、あるいはその出先機関を中国で設立することを推奨・支援する。わが国の研究者と科学研究管理者が、国際組織と国際研究プログラムに参加し、重要な研究または管理をリードするか実行するよう支援する。

2.中国の特色を持つ地域的気候変動共同研究を推進する

 チベット高原地域、東アジアモンスーン地域などの重点区域について、周辺諸国を重点に、わが国の気候変動に関する基礎研究能力と国際的な影響力の向上に役立つ共同研究事業を実施する。中国で気候変動国際(地域)研究センターを設置する。

3.基礎科学および観測分野で協力する

 気候変動の法則とメカニズム、地球システムのシミュレーション、気候の予測・見通し、気候変動の影響・評価などに関する基礎研究分野の重点課題について、気候モニタリングと検査測定の技術、温室効果ガスに対する衛星・航空リモートセンシング技術、および大気、海洋、陸地、生物に対する総合観測技術、気候予測技術、気候システムモデル、気候変動の影響メカニズムなどを含む共同研究を実施する。

4.緩和・適応に関するコア技術の導入・消化・吸収を踏まえた再イノベーションおよび共同研究開発を行う

 グローバルな科学技術リソースを十分に利用し、緩和・適応に関するコア技術の導入・消化・吸収を踏まえた再イノベーションおよび共同研究開発、特に戦略的新興産業の振興および主要業界の省エネ・排出削減に資する緩和技術、および脆弱地域・業界の適応技術開発を強化する。主な先進国と重要な国際組織との多様な協力体制の確立・改善を通じて、技術協力を展開し、企業が技術協力と研究開発、実証、産業化における主導的役割を発揮することを奨励し、複数の気候変動国際科学技術協力拠点を建設する。炭素の回収、利用、貯留において、主な先進国および国際組織と、研究開発、実証、キャパシティビルディングおよび基準、環境と安全政策などをはじめとする協力を進化させ、拡大する。

5.国際科学技術援助および南-南科学技術協力を実施する

 国際組織および先進国から資金と技術支援を引き続き要請し、国際資金の調達手段を積極的に開拓し、「国連気候変動枠組条約」と「京都議定書」で構築された資金、技術移転、キャパシティビルディング等の仕組みを十分に利用し、わが国の緩和・適応技術の導入・消化・吸収を踏まえた再イノベーション能力を高める。

 地域協力体制とBASIC4カ国(中国、インド、ブラジル、南アフリカ)協力体制などを基に、気候変動分野の南-南科学技術協力を進化させ、拡充する。アフリカ諸国、周辺隣国、島嶼(とうしょ)国、後発発展途上国と、観測、適応・緩和技術の転移・実証、人材育成などのキャパシティビルディングにおいて協力を強化する。BASIC4カ国による気候変動技術研究開発連盟の設立を推進し、国際気候制度の設計、交渉と技術議題の履行などに関する協力研究を強化する。「条約」あるいはその他の多国間、二国間の枠組みで気候変動に対応する適応技術の協力を強化し、地域の技術協力および適応研究センターあるいはネットワークを整備する。

(五)キャパシティビルディング

1.基盤整備を充実する

 既存の関連拠点プラットフォームの科学機器および設備を改善し、その安定した運転とサービス提供を確保し、既存の関連拠点プラットフォームの気候変動対応に関する研究開発の能力・レベル向上をはかる。観測とシミュレーションを支える高性能のアプリケーションソフトウェアおよびスーパーコンピューターシステムを開発し、高分解能物理的気候システムモデルを充実させ、生物地球化学モデルの研究開発を強化し、中国の気候変動総合観測・シミュレーションデータの共有プラットフォームを構築する。

2.総合モニタリングシステムを最適化・充実する

 重点分野におけるフィールド研究ステーション、モニタリングステーションの配置を科学的に計画し、機器装置と観測方法およびトレーサビリティ基準を統一し、データの収集・処理・共有基準を確立し、気候変動対応の計量及び基準体系を完備し、ネットワーク化した科学研究環境整備を強化し、フィールドステーションの安定した運転を保障し、気候変動対応のために研究場所、実験機器装置と資料、観測データなどの基盤的支援を提供する。ステーション配置の最適化を通じて、新しい観測技術を開発し、わが国の気候変動総合観測システムを完備し、データの同化、統合と再分析技術を開発し、マルチソースデータ同化を実現し、変数推定精度と極端な現象に対する予測・評価レベルを向上させる。

3.共同研究開発と技術融合を強化する

 重大な研究開発の目標をめぐって、研究実験拠点とプラットフォーム間の提携を強化し、共同研究開発、特別テーマの研究開発と技術融合を展開し、資源増量を科学的に配置する。フィールドでの観測・試験、基礎データの蓄積、科学研究とモデル拠点の整備を通じて、気候変動への適応・緩和技術の開発・普及能力を高め、新エネルギーの利用、炭素回収・貯留と排出削減、CO2の利用など多種の低炭素技術体系を形成し、わが国の気候変動対応に関する科学研究の独創イノベーション能力を向上させる。

4.国家気候変動対応科学研究基地の建設を推進する

 既存の国家気候変動研究機関と観測(監視)ネットワークに依拠し、部門・業界横断の気候変動対応共同研究と総合研究の展開を推進し、わが国の気候変動の基礎研究と応用研究を協調する。企業による業界の低炭素技術提携組織の設立、業界のオープンな技術イノベーションプラットフォームの設立を奨励し、低炭素技術イノベーション能力を全面的に向上させる。

 気候変動に関する科学データプラットフォームとデータ共有体制を完備し、気候変動分野の科学データプラットフォーム建設を強化し、ネットワーク化した気候変動科学技術資源共有体系・メカニズムの整備を推進し、気候変動対応に関する公共情報発信システムとサポート技術サービスネットワークの構築を推進する。

5.気候変動対応の人材育成を強化する

 わが国の気候変動に関連する専門学科の建設を強化し、気候変動に対応する総合的で専門的な人材の育成を加速する。若手人材の育成を強化し、気候変動研究の予備部隊を整備する。気候変動研究分野の人材の育成と導入を強化し、国の主体的な科学技術計画に支援されるプロジェクトと結び付けて、科学技術資源と国際協力資源を集結する。中央組織部が実施している千人計画などの各種ハイレベル人材の育成・導入計画と結び付けて、海外の優秀な人材と頭脳資源の導入を拡大することを通じて、自主的な創造能力が高く、国際的な影響力を持ち、科学研究をリードする人材と人材チームを育成する。人材の育成・導入に資する優遇政策を完備し、評価体系とバックアップシステムを確立・完備し、人材の安定化をはかる。わが国の研究者が国際的研究プログラムに参加することを奨励し、そして関連の国際組織での職位就任を積極的に推薦し、国際的な影響力を高める。

五、保障措置

(一)気候変動対応の科学技術事業協同イノベーションを強化する

 気候変動対応に関する科学技術の全体的配置、気候変動対応科学技術資源の統一的調整、気候変動対応に関する科学技術事業の共同イノベーションを強化して、国の気候変動対応事業に科学技術的に支援する。

 国の科学技術計画は、気候変動に対応する科学技術への投入を増やし、社会の力量と資源を指導・吸収し、計画の実施と目標の実現を促進する。気候変動に対応する基礎的で前向きな科学技術課題の研究を行い、重大なコアとなる最先端技術の研究開発と総合集積を強化する。各関連部門は、国のニーズと部門あるいは業界の特徴と結び付けて、気候変動に対応する科学と政策に関する研究を強化し、技術の研究開発、集積と実証および応用展開を強化する。各種の社会資源と民間の力量を積極的に指導・吸収し、気候変動に関する科学技術を支援し、各種のベンチャー機関、担保機関及び民間資本の気候変動対応産業へ支援するよう積極的に奨励する。

(二)気候変動対応に関する科学普及と広報活動を強化する

 「省エネ・排出削減に関する全国民科学技術行動プラン』を引き続き実施する。気候変動対応に関連する科学普及教材を編纂(へんさん)し、気候変動対応に関するモデル教育拠点を設立する。政府が主導し、テレビ、インターネット、図書、定期刊行物、新聞、画像・音声作品などのマスメディアを利用する気候変動対応に関する科学知識の普及と宣伝を実施する。各種の科学普及教育拠点の役割を十分に発揮し、科学普及ボランティア人材の育成を強化する。気候変動対応のモデル指導を強化し、気候に優しい社会道徳・文化を醸成する。

(三)地方の気候変動対応科学技術活動展開を奨励・支援する

 各地方は、現地の経済社会発展の実情、気候変動の影響および省エネ・排出削減の目標と結び付けて、科学的発展観を貫徹し、各方面の資源を統一し、投入を増やし、省エネ・排出削減技術と適応技術に関する研究開発、実証と普及応用を積極的に推進し、地方の気候変動対応科学技術能力を増強させ、気候変動対応における東部の発達した省の先頭・手本的な役割を果たすよう奨励する。