第22号:中国環境と日中協力を考える
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私は日本のここが好き! ~中国人が語るニッポンの美点~

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( 2008年7月20日発行)

私は日本のここが好き!
〜中国人が語るニッポンの美点〜

今井 寛
(中国総合研究センター参事役)
 こんな日本にも良いところがあるらしい!?

 日本で暮らし、様々な報道、論評、言説に接していると、自然と、この国はどうしようもなくひどい状況で未来も暗いと感じられる。

 街には無気力な若者があふれ、きちんとした職につくこともままならない。教育も貧困で、先進国はおろかアジアでも優秀な人材育成競争にも遅れをとってい る。天然資源も乏しければ、食料の自給率も先進国最低。官僚は汚職にまみれ、食品流通関係者には規範意識のかけらもない。これまで発展を支えてきた製造業 は沈没する船を脱するかのように中国やインドへ避難。少子・高齢化で社会の働き手はいなくなる。コミュニティは崩壊の危機に瀕しており凶悪犯罪は激増す る・・・

  問題山積だ。本当に厳しい。

  そんな或る日、新聞の書評欄(東京新聞)で、以下のような記事を見つけた。

「世界一の「一般人」がいる」 「本当に差別のない国」 「東洋でも西洋でもない、その昔の人の社会と現代の人の社会を同時に体験できる、世界で唯一の国」 「毎日の生活が無事に繰り返されていき、それによってきちんと仕事ができる」 日本滞在経験のある外国人54人から渡された日本の美点をめぐる日本再発見の言葉の花束
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 こんな日本でも褒めてくれる人がいるということが、何だかとても新鮮に感じられた。早々に本書「私は日本のここが好き!」(加藤恭子編・出窓社)を書店で買い求めてみた。

  内容は、世界各国から日本にやってきて滞在経験のある外国人54人に対するインタビュー集である。文藝春秋に掲載された特集に、新たなインタビュー記事を追加している。

 

 

中国からの来日者が評価しているところ

 ここで、中国からの来日者が日本人や日本社会の美点として挙げていることを、幾つか紹介してみよう。

「儀式を頑固に貫くところや、無意識に身体が動くところ、手を使ってものづくりするのが得意なところは日本人の職人気質ですよね」(男性・作家)

「日本には良いところがたくさんあると感じます。美しい四季と温暖な気候、親切心、心のこもったサービス、干渉し過ぎない人間関係・・・」(女性・大学非常勤講師)

「理屈に縛られて行動したり思考したりしない。柔軟性があり、情を大事にします。だから日本人は詩人的で感受性が豊かですね。そして自然体です」(女性・大学教授)

「日本人の無私の献身、意思の強さを深く思い知らされ、日本人に対する見方を変更するほどの大きな感動を覚えました。<中略> 自分には役に立ちそうもな いことに夢中になれる無心の境地、これは日本人の美徳ではないでしょうか」(男性・大学教授)

「人間はどこの国の人でも、良い環境に住みたいと思っています。所得が高ければいいというだけでなく、安全だとか、環境がいいだとか、秩序や精神衛生の面 も大切です。日本はこれらの点で中国と比較するとかなり優れていると思います」(男性・会社員)

 並べてみると、彼らが日本や日本人の美点として評価しているのは、概ね以下のような点である。

  • 美しい四季のある豊かな自然
  • 仕事や責任に対する実直さ
  • 情が篤くさりげない気配りができるところ
  • いつも謙虚な姿勢を失わないところ
  • 安全で清潔な環境  等々

         

 一人の日本人としては、日本人の持つ美質を褒められると素直に嬉しい。
ただ少々気になるのは(これも日本人の性か)、挙げられた日本の美点は、全て日本人が長い年月をかけて伝統の中で育んできたものである。近年、急速に失われているとも言われている。
つまるところ我々日本人は、世界中の人々が賞賛するような優れた資質や環境を長きにわたって維持してきたが、近年それを失いつつあるということか。
それとも、表面上失ったように見えるが、実は奥深いところで脈々と受け継がれているのか。
はたまた現代日本は、何か別の新しい優れたものを生み出しつつあるのか。

 いずれにせよ、中国をはじめとして各国から来た人々が賞賛している日本の伝統的な美点を活かすことは、いま現在、社会を覆っている閉塞感を打ち破るためのヒントとなるのではなかろうか。