第23号:スポーツ科学、中国の挑戦~北京五輪によせて~
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特集巻頭言:スポーツ科学、中国の挑戦~北京五輪によせて~

中国科学技術月報2008年8月号(第23号)  2008.8.20発行

~はじめに~

 界 が中国を注視している。人々に夢と感動を与えてくれる4年に一度のスポーツの祭典、夏季五輪2008北京大会が今、北京で開催中だ。世界204の国と地域 から1万6000人余りの代表選手が参加する今大会は五輪史上最大の規模である。アジアでは、20年ぶり、東京、ソウルに続く3回目の開催だが、中国に とって百年の宿願を果たしたといってよい。中国で縁起が良いとされる「8」の数字が重なる8月8日夜8時に北京のメイン競技会場「国家体育場」(愛称:鳥 の巣)で開会式が行われ、24日の閉幕まで17日間にわたって熱戦が繰り広げられている。

 国 が冬季オリンピックに初めて参加したのは1980年のレークプラシッド大会であり、夏季オリンピックへの初参加は1984年のロサンゼルス大会からであ る。以来、冬季オリンピックに8回、夏季オリンピックに6回参加している。中国はまだ参加回数は多くないが、2000年夏季五輪シドニー大会で金28、銀 16、銅15枚を手にし、合わせて59枚のメダル総数で3位となり、2004年のアテネ大会でこれまで最多の金32、銀17、銅14を獲得、金メダル数と メダル総数ともに2位に躍進し、強豪国としての不動の地位を築き上げている。アジアの中で最も早く、1912年から夏季オリンピックに参加している日本が 夏季五輪アテネ大会までに獲得した金メダル数は114枚、中国より2枚多く、メダル総数は335枚、中国より49枚多かったが、北京五輪が始まった8月 10日に中国のエアピストルの郭文○(王へんに君)選手がもたらした115枚目の金メダルで、中国の金メダル総数は初めて日本を上回った。メダル総数でア ジアのトップになるのは時間の問題だと思われる。飛ぶ鳥も落とす勢いの中国は、開催国の利もある今北京大会で若しや金メダル数・メダル総数ともに1位にな るのではとの夢を膨らませている。

 国は80〜90年代に比べ て、近年スポーツ競技のレベルが飛躍的な進歩を遂げている。それは単なる「数の力」によるのではなく、中国が世界の先進的な経験を参考にし、挙国体制のも と、科学技術手段をスポーツ競技に取り入れ、科学技術によるスポーツ人材育成とナショナルチーム強化を強力に推進してきた成果が現れたと専門家は指摘す る。一方で、中国が勝ち取った成果に対する政府の投入が膨大すぎたと指摘する中国の専門家もいる。

 ま れ、北京五輪も熱戦たけなわとなり、閉幕まで後数日と迫っている。日中両国の選手はともに全力を尽くして頑張っている。大会10日目のメダル獲得数速報に よると、中国は金35枚で1位、次いで米国が19枚で2位、日本は8枚で、豪州・韓国と並んで5位。メダル総数では中国が61枚で、米国の65枚に次ぐ2 位、日本は20枚で現在7位である。残る競技も選手たちに温かい声援を送り、選手たちとともに夢と感動を共有していきたい。

 国総合研究センターでは、このタイミングに、このアジアでの祝福すべき大イベントの開催にちなんで、日中双方の専門家に「スポーツ科学、中国の挑戦 〜北京五輪に寄せて〜」を テーマに中国のスポーツ科学への取り組みと将来展望、或いは日本のスポーツ科学の現状と課題等について書いてもらい、8月特集号にまとめて読者の皆さんに お届けすることになった。この機会にご多忙にもかかわらず、私達のために特集号記事を執筆された日中両国の専門家諸氏に衷心より深甚なる謝意を表したい。

中国総合研究センター


icon2  「科学スポーツに向けた中国の取り組み」

葛 進 (中国科技日報記者)


icon2 「中国陸上競技の新たな挑戦」

魏 文哲(北京体育科学研究所助手研究員)


icon2 「ポスト五輪時代の中国スポーツ」

李 祥晨 (国家体育総局体育科学研究所スポーツ・システム・シミュレーション・ラボラトリー責任者)
鍾 明宝 (聊城大学教授、修士課程指導教官)


icon2 「中国スポーツ情報科学の展望 〜デジタルオリンピックとバーチャルリアリティ技術〜

潘 志庚(国家体育総局体育科学研究所特任教授研究員)


icon2 「競技スポーツ科学の最前線」

平野 裕一(国立スポーツ科学センター スポーツ科学研究部長・主任研究員)


icon2 「スポーツテクノロジーの現状と将来展望」

宮地 力(国立スポーツ科学センタースポーツ情報研究部副主任研究員)


icon2 「日本のスポーツ科学について」

阿江 通良(筑波大学人間総合科学研究科体育科学系教授)