中国スポーツ情報科学の展望

〜デジタルオリンピックとバーチャルリアリティ技術〜

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( 2008年8月20日発行)

中国スポーツ情報科学の展望
〜デジタルオリンピックとバーチャルリアリティ技術〜

潘 志庚 
(国家体育総局体育科学研究所特任教授・研究員)

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1. 概説

  “デジタルオリンピック”は2008年オリンピックにおける注目すべきス ポットライトであり、バーチャルリアリティ(VIRTUAL REALITY, VR)の助けを借りることで、おびただしい数の人が部屋から一歩も外へ出ずに、受動的な観衆を務めることを可能にするだけでなく、オリンピックを支援する 活動により能動的に参加することを可能にし、バーチャルなオリンピック活動に参加し、距離感ゼロの接触を通して、“デジタルスポーツ”、“バーチャルオリ ンピック”の競技がもたらす新鮮さ、刺激および楽しさを、身をもって体験することさえも可能にする。
バーチャルリアリティを選手の補助トレーニングに用いることで、選手の成績を効果的に高めることもできるのである。

1-1 バーチャルリアリティ技術

 バーチャルリアリティはバーチャル世界を創り出し、体験できるコンピューターシステム である。ここでの“バーチャル世界”はバーチャル環境とも呼ばれ、リアル感のある立体グラフィックを指すが、それはある特定リアル世界の本当の再現であっ ても、純粋な構想の世界であっても良い。オペレーターは視覚・聴覚および触覚などを通して双方向通信をし、それによって“没入感”のあるシーンを生み出す ことができるので、VR技術が人間と機械の相互関係に新たな双方向メディアを提供している。通常、VRシステムにはマルチアウトプット形式(例えばグラ フィック・音声・文字など)とマルチインプット処理装置の能力があり、しかも衝突測定・リアルタイムの相互作用・視点コントロールおよび複雑なモーション モデリングなどを行うこともできる。目下、VR技術は軍事シミュレーション・エンターテイメント・ゲーム・教育・医学・リモコンロボット・バーチャルデザ イン・バーチャルプロダクトなどの分野で広く応用されている。VR技術の研究は、多学科にまたがるという特徴を体現しており、それはコンピュータ技術・コ ンピュータグラフィックス・コンピュータネットワーク技術・画像処理およびパターン認識・インテリジェントインターフェース技術・生理学・マルチセンサー 技術・音声処理技術および音響技術といった技術の急速な発展に伴って現れた多学科の総合技術である。この技術の商業化のペースは速まっており、そのことで ますます多くの研究者がVR技術の研究に加入するであろう。関連技術の絶え間ない進歩に伴って、VR技術は普及し、人類の生存の仕方を変えるであろう。

 

1-2 デジタルオリンピックとバーチャルリアリティ

  “デジタルオリンピック”は2008年オリンピックにおける注目すべきスポットライトであり、“ハイテクオリンピック”時代の特徴である。通常の意味で は、“デジタル”オリンピックは、コンピュータ・通信・インターネット・デジタルテレビおよびモバイルネットワークなど現代の情報デジタル技術を道具とし て利用し、デジタルエンターテイメント・着信モーション・着信メロディ・オンラインゲーム・電子競技など大衆に歓迎されるネットワークおよびデジタル技術 の手段を用いて、オリンピックに関する知識の普及・オリンピック理念の発揚・オリンピック精神の宣伝など大衆が幅広く参加する双方向のエンターテイメント 活動を展開することを指す。

 新たに完成した“デジタルオリンピック村”というプロジェクトでは、ユーザーはパソコンの前に座り、マ ウスを操作することで、北京市全体を余すところなく見渡すことができる。天安門・王府井・後海・中南海がありありと目に浮かび、西三環・中央電視塔・北京 電視台・安貞橋が活き活きと“スクリーン”に浮かび上がり、そしてまた、北京大学の未名湖や博雅塔・清華大学の緑の木立や芝生・中国科学院の科学研究ビル の1棟1棟が一望のもとに見渡せるのである。

 以上述べた機能の実現は、かなりの程度バーチャルリアリティ技術に依存しているので、以下にデジタルオリンピックにおけるバーチャルリアリティ技術の主な応用事例を紹介する。

 

2. デジタルオリンピックにおけるバーチャルリアリティの応用

2-1 スタジアムと体育館のバーチャル表示およびマスゲームのレイアウト
2-1-1 スタジアム・体育館の建築計画とバーチャル表示

  一般の都市建築計画に似て、オリンピック用のスタジアムと体育館の建設計画の関連性と将来性は比較的高いので、可視化技術に対する需要も比較的切実であ る。スタジアムと体育館の建設においては、計画の意思決定者・設計者・管理者および大衆が、それぞれに異なる役割を演じるが、彼らの効果的な協力がスタジ アムと体育館計画の最終的な成功の前提なのである。VR技術はこの協力のために理想的な懸け橋を提供し、VR技術を応用することによって政府の計画部門・ プロジェクトディベロッパー・エンジニアおよび大衆が任意の角度から、リアルタイムに双方向から計画の効果を見ることができ、スタジアムと体育館の形態を よりよく把握でき、設計者のデザインの意図をよりよく理解できる。このような意思決定者のマクロ戦略がスタジアムと体育館の建設計画のより有機的な構成部 分となることで、大衆の参加も真に実現できるであろう。これは、例えば平面図・完成イメージ図・(砂土で作った)地形の模型ないしはアニメーションなどと いった伝統的な手段では到達できないことである。

 オリンピックをより効果的に宣伝し、より多くの人にオリンピックのスタジアムと体 育館について理解してもらうために、国内の多くの機関が一部の有名なスタジアムと体育館についてデジタルモデルを作ったので、どの角度からでもざっと見た り観察することができる(図1に示す)。

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2-1-2 マスゲームのバーチャルレイアウトおよび訓練のプロトタイプシステム

  マスゲームはスポーツと芸術が高度に結び付き、体操の動作を主とした群衆によるスポーツ上演プロジェクトである。それは数十人、数百人、さらにおびただし い数の人々が、大きなスタジアム(体育館)で体操を主体とした各種各様のスポーツ・芸術形式および隊形の変化・模様と造形を通し、音楽・道具・服装、さら には背景・シーン(舞台)および照明など芸術的装飾を組み合わせて構成するスポーツ芸術的な集団上演プロジェクトである(図2)。マスゲームの演出および リハーサルは非常に込み入っており、時間を費やす作業である。バーチャルリアリティ技術では、スポーツシミュレーションにおける応用の将来性が有望であ り、バーチャル群衆シミュレーション技術は、マスゲームの演出とリハーサルに応用されることで、演出およびリハーサルの質を向上させ、演出スタッフおよび リハーサルスタッフの作業効率を向上させるであろう。マスゲームのレイアウトおよび訓練シミュレーションは大量のバーチャル群衆運動・動作および隊列のレ イアウトにまで及んでいるが、その重要技術は大規模シーンのライブレンダリング技術・運動のモデリング・経路計画および衝突の回避などである。

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2-2 VRによる補助スポーツトレーニング

  競技スポーツのトレーニングシミュレーションでは、バーチャルリアリティ技術を利用することにより、マルチセンサー方式でもって関係者(コー チ、振付師および選手)にコーチのトレーニングの意向もしくは選手のトレーニングプロセスを示し、同時に関係者も自然にシミュレーションシステムと双方向 通信を行うことができる。このVRに基づいた競技スポーツのシミュレーションシステムは選手の科学的トレーニングの水準を向上させるであろう。以下にこの 分野を応用した成功事例を紹介する。

2-2-1 3次元トランポリン運動シミュレーションとシミュレーションシステム

 トランポリン運動種目はアクロバティック系のスポーツ種目で、2000年のシドニーオリンピックで初めてオリンピック種目として採用されたが、こ の種目にはトレーニング中に高い難度とリスクが存在する。中国科学院計算所が開発したデジタル3次元トランポリン運動シミュレーションとシミュレーション システムは、トランポリン選手が科学的トレーニングを行うのを効果的に援助することができる。

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 このシステムはデジタル3次元人体運動のコンピュータ・シミュレーション技術、人体運動生体力学データおよびリアル人体運動データを基礎とし、3 次元方式による迫真のシミュレーション、トランポリンの技術動作のデザインによって、一とおりの技術動作の振り付けをシミュレーションで生成し、同時に人 体運動の動力原理の検証、技術動作の分析によってこれを補助し、最後にシミュレーション動作と実際のトレーニング動作を同じスクリーン上で同時に対比する ことで、より効果的な指導的意義を持つ。

 
2-2-2 バーチャル自転車

 自転車運動はオリンピック種目としてオリンピックで一定の地位を占めているが、2008年のオリンピックに直面して、我が国のオリンピックチームが、自 転車チームを含めて人に誇れる成績を獲得しようとするならば、運動トレーニングの水準を絶えず向上させ、トレーニング環境を絶えず改善しなければならな い。しかし、室外のトラックレースおよびロードレース種目のトレーニングとして、しばしば天候など外界の条件の制限を受ける。この他に、例えば時間差調整 トレーニングといった特殊要求など、自転車運動の特徴のために、運動量測定および監視測定コントロールについてしばしば一定の制限を受ける。そこで、実際 のトラック・ロードのコースをシミュレートした情報を持ち、選手の運動状況もシミュレートでき、さらにリアルタイムで運動量の監視測定もできる総合バー チャルトレーニングシステムの研究開発が重要である。そして、バーチャル自転車システムはこの分野のニーズを満足させることができるのである。

han4  システムのハードウェア部分は一台の自転車で、それにはセンサーもしくはサンプリングカードが含まれ、リアルタイムでアングル・角速度お よび心拍数などを含むデータを採集することができる。その後にこれらのデータをシリアルポート(もしくはその他のインターフェース)を通してパソコンに送 る。ソフトモジュールが受信したこれらのデータに基づいて、自転車の特定シーンにおけるリアルタイムのシミュレーションをする。

 トレーニングとレースをより効果的にシミュレートするために、システムが分散型シミュレーションの支援も提供することで、多くの選手がローカルエ リアネットワークあるいは広域エリアネットワークを通して同じトラック・ロードのコースでトレーニングおよびレースにも参加できるようにし、同時に選手の トレーニングおよびレースのデータを保存することで、統計分析に備え、指導者がより効果的に選手のトレーニングを指導しライバル選手を分析するのに役に立 つ。

 

2-2-3 バーチャルネットワークマラソン

 このシステムでは、個人がコンピュータネットワークおよびスクリーンのバーチャルシーンを通して、ジョギングマシンあるいはフィットネスマシンの 助けを借りて健康増進・エンターテイメントおよび競技を行うことができる。このようにこのシステムは補助トレーニングに用いられるだけではなく、より重要 なのはエンターテイメントの手段となることができることである。システムには3つのモデルがある。すなわち、個人トレーニング、ネットサーフィンおよびオ ンライン競技である。個人トレーニングモデルではジョギングマシンなどのハードウェアとシステムを通して双方向通信を行うことができ、しかも、システムは トレーニング時のスピード・心拍数などの情報についてリアルタイムで表示すると同時にユーザーのトレーニング情報履歴を記憶することができる。ネットサー フィンモデルでは、多くのユーザーがシーンの中で同時にネットサーフィンすることができ、ユーザーはあるシーンから別のシーンへ切り換え、ある特定の物体 の前まで走って行って物体の詳細情報の観察を選択することができる。競技モデルでは、ネットワークの助けを借りて、選手間でマラソン競技を行うことがで き、ゴールまで走ると、システムがユーザーの所要時間に基づいて、順位表を提供してくれる。

 図5は我々のバーチャルネットワークマラソンのシーンで、シーンは北京市のシーンをシミュレートして組み立てたものである。

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2-3 デジタルオリンピックミュージアム

  我が国が初めて請け負ったオリンピックは2008年に北京で開催される。当初、オリンピック開催地に立候補した時に、“バーチャルオリンピックミュージア ム”の建設という新境地を打ち出して、IOCの極めて大きな関心と注目を引いたことが、中国が開催権を獲得する上で大きな助けとなった。この計画は国家科 学技術部・教育部・北京市科学委員会の大きな支援を得た。バーチャルオリンピックミュージアムは、世界初の多元化という背景のもとでオリンピックの歴史と 発展を全面的に紹介するシステムとなるであろう。それを通してオリンピックや生活など各方面に対する多元文化の影響が十分に反映されるであろう。2005 年、国家自然科学基金によって“バーチャルオリンピックミュージアム重要技術研究”および“遠隔没入型バーチャルオリンピックミュージアム重要技術研究” が重点プロジェクトに連なり大きな支援を得たが、この2つのプロジェクトの委託機関はそれぞれ北京航空航天大学および浙江大学であった。

  バーチャルオリンピックミュージアムの参観者はインテリジェントナビゲーションの案内を通して訪問することもでき、あるいはバーチャルアバターのコント ロールを通してバーチャルシーンの中で好きなようにネットサーフィンをし、バーチャルオリンピックミュージアムの参観を実現することもできる。バーチャル オリンピックミュージアムではオリンピックについての3次元情報遠隔サービス・オリンピック競技種目のシミュレーション・バーチャルオリンピックの芸術作 品展示・歴代オリンピックの歴史再現・オリンピック競技のハイライトシーン再現・歴代オリンピックスタジアムおよび体育館のバーチャルサーフィンなどを実 現する。

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  バーチャルデジタルオリンピックミュージアムでは分散型バーチャルリアリティ技術を採用し、インターネットを利用することで、異なる地点に位置する人がオ リンピックミュージアムを参観できるようにした。システムは主にサービスポートとクライアントポートに分かれ、サービスポートは主に異なるユーザーにサー ビスを提供する。クライアントポートは主にシーンサーフィン・サービスポートとの通信を処理している。シーンサーフィン全体は4つのパートに分かれる。す なわち、第1パートは周囲のシーンで、表示されるのはミュージアム周辺の風景である。ミュージアムの主な建築物・芝生・樹木・潅木・街灯・池が含まれ、階 段もある。第2パートはミュージアムの1階で、聖火展示ホールであり、表示されるのは歴代オリンピックの聖火およびその紹介である。第3パートはミュージ アムの2階で、表示されるのは中国のスポーツ文化であり、古代・近代・現代の3つの部分に分かれている。第4パートはミュージアムの3階で、表示されるの はオリンピックと関係のある品々である(図6)。

3. 関連VR技術

 上記の紹介から我々が見ることができるのは、バーチャルリアリティ技術をデジタルオリンピックにおいて使用することで、デジタルオリンピックが大 いに輝きを放つであろうということである。当然、そこではシーンのモデリングおよびレンダリング・バーチャル人間技術・運動データのキャプチャー技術な ど、関連技術の支援と切り離すことができない。以下において、これらについて簡単に紹介する。

3-1 シーンのモデリングとレンダリング技術

 バーチャルリアリティシステムにおいて、モデリングとライブレンダリングはしばしば基本的な技術となる。例えば、デジタルオリンピックミュージアムで は、現実に存在するものの中から大量のマルチメディアデータを獲得する必要があり、その後にこれらのデータに基づいてモデリングとライブレンダリングを行 うのである。

 幾何のモデリングおよびレンダリング技術に基づいて、既に何年にもわたる研究の歴史があり、多くの既成の技術は直接使用することができる。レンダ リングを加速するのに、通常はマルチレベル詳細度モデル(LOD)を使用する。ある物体の異なるLODを設定した後、我々はそのうちのどのレベルをレンダ リングもしくは混合するかを決定しなければならず、常用の計測方法では距離に基づくものと投影面積に基づくLODを選択し、異なるLOD間で往復して切り 換え、連続的な過渡現象を維持しなければならない。通常我々はレンダリングシステムに固定の映像重複周波数があることを望むが、LODおよびカット割り可 視化などの技術を使用することで、シーンに対して固定の映像重複周波数のレンダリングを行うことができる。

 (コンピュータグラフィックスの)イメージに基づいたモデリングとレンダリング技術(IBMR)では幾何モデリングに替えてイメージを採用し、伝 統的なレンダリングプロセスに替えてイメージ空間の変換操作を採用するが、このようにIBMR技術を応用することがリアルタイムでグラフィック生成を実現 する効果的な解決方法である。

 レンダリング効果を高め、リアル感を高めるために、シャドウ技術を使用することもできる。截頭錐体に基づいた方法を使用することでシャドウを木目 テクスチャ平行四辺形としてレンダリングすることができ、それによって比較的高い効率に達することができる。しかし、生じたシャドウが一連の点光源の重ね 合わせのように見え、また、ある限られたグレースケール・勾配の間でシャドウが数値化されてしまうことという欠点がある。研究者は解像度が異なる多くの シャドウ画像を導入して透視によるゆがみを解決するが、計算ではGPU上に反映することができず、双方向技術に応用するのには向いていない。

3-2 バーチャル人間技術

 バーチャル人間運動とコントロール技術には主に、バーチャル人間のモデリング・運動制御・モーションアニメーションおよびバーチャル群集シミュレーショ ンが含まれる。バーチャル人体のモデリング方法は、主に双方向方式に基づいた人体造形方法・3次元測量に基づいた人体再構築方法・イメージに基づいた人体 再構築方法および人体変形技術などがある。人体変形研究分野は、人体がゆがみを生み出す原理から出発して、主に3種類に分類される。すなわち、骨格運動を することで生じるゆがみ、人体の筋肉収縮によって生じるゆがみ、人体のサイズ(例えば、胴回りや長さなど)のパラメータの変化によって引き起こされるゆが みである。

 運動制御は主に3つの分野に渉る内容である。すなわち、1.バーチャル人間運動。主に重要フレームアニメーション・モーショントゥーインアニメー ション・運動キャプチャーなどがある。2.バーチャル人間運動に対して制御を行う。主な内容には、運動の修正・運動の連動・運動の合成・運動の再構築・運 動経路計画・運動様式などが含まれる。3.運動データに対して保存を行う。

 個体モーションデザイン分野では、モーション集合体選択という基本原則を使用することができる。すなわち、各問題域について、インテリジェント エージェントがその目標を完成できるようにする最小モーション集合——基本モーション集合が存在し、それ以外のモーションはその集合体から導き出すことが できる。モーションアニメーションの研究はモーションデザイン・階層構造およびモーション選択決定メカニズムという3分野の内容を巡って展開される。バー チャル群衆シミュレーションの研究は人類の社会性に基礎を置いている。バーチャル環境において、群衆(Crowd)の中には多くのグループ(Group) が含まれる場合があり、各グループには同じもしくは異なるモーションモデルが存在する場合が考えられる。また、グループの中には多くの個体 (Individual)が含まれる場合があり、さらにその個体にも同じもしくは異なるモーションモデルが存在する場合が考えられる。

3-3 運動データのキャプチャー技術

 スポーツの運動に対してシミュレーションを行う時には、しばしば関連する運動データのキャプチャーと切り離すことができない。人体の運動については、運 動キャプチャー技術を通して獲得する。運動キャプチャー技術(Motion Capture)はセンサーを利用して3次元形式でリアル人体の動作を記録し、その後にコンピュータ経由で記録されたデータに基づいてスクリーン上のバー チャル人間を動かす。この方法の最大の長所は人間(トレーニング器械を含む)のリアル運動のデータまで捉えられることで、生成する運動は基本的に人間(も しくは器械)の運動の“複製”なので、それによって効果は非常に迫真性を帯び、しかもトレーニングの科学性を保証することができるのである。

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 バーチャル球技運動(例えば、バーチャルボーリング)においては、球体運動速度を測定しなけ ればならない。このような運動分析に対しては、一般的にはビデオ・カメラの入手する1枚1枚のビ デオデータから、目標の物体を抽出し、その後にボールのモーションパスを計算する。

 バーチャル自転車もしくはバーチャルマラソンなどのシステムに対しては、我々は運動装置(自 転車・ジョギングマシンなど)に作用して生ずる各種運動パラメータも抽出し、コンピュータにインプ ットし、バーチャル環境に作用させ、人とバーチャル環境の双方向通信も実現しなければならな い。バーチャル自転車では、運動データをセンサーもしくはサンプリングカードを通してリアルタイ ムにコンピュータへ採集するが、これにはアングル・角速度および心拍数の採集などが含まれる。 アングルはアングルセンサーを通して自転車のハンドルの回転角度を電気信号に転化し、併せて サンプリングカードに転送する。角速度は角速度センサーを通して後輪の角速度を電気信号に転 化し、サンプリングカードに転送する。心拍計を通して選手の心拍数に対してリアルタイムで採集 を行うが、現在ある自転車エルゴメーターの心拍数採集システムを採用してもよい。

3-4 運動シミュレーション技術
(1)バーチャルボーリング

  バーチャルボーリングゲーム機は身体の鍛錬とゲームを有機的に1つに結び付けている。ユ ーザーが2mのレーンにリアルのボーリング球を投げ、Easy Bowlingシステムがディスプレイの上 端に設置されたカメラ(camera)を通してボールの速度と方向を測定する。いったんボールの運動 パラメータを獲得すると、ボーリング球の運動状況およびボールとバーチャルピンの衝突状況をリ アルタイムにシミュレートし、最終的に倒したピンの結果をレーン端末の大スクリーンに表示する。 図8はシステムの説明図である。システム全体が占める空間が少なく、設置が簡単なので、家庭 用健康器具として開発しやすい。目下、システムはまだネット環境にまで拡張されていない。

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(2)バーチャル卓球
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   バーチャル卓球はCAVEを通したゲームである。このシステムでは、ビリヤード・卓球がコンピュータを通して合成されており、ユーザーはCAVEにおい て位置データ追跡装置を装備したラケットを使用してバーチャル上の対戦者と試合を行う。CAVEのこのパノラマ立体ディスプレイおよび自然な双方向通信に よって、卓球の試合は非常に迫真性を帯びる。

 

 

4. 総括

 本文ではデジタルオリンピックにおけるバーチャルリアリティの運用について紹介し、いくつかの関連技術を簡単に分析してみた。2008年のオリン ピックが北京で開催されるのに伴って、国内のデジタルオリンピックにおけるVR技術についての深く掘り下げた研究が必ず促進されるであろうということが予 測される。オリンピックの各準備活動においてVR技術を応用することで、バーチャルオリンピックを実現し、オリンピックの各活動におけるハイテクノロジー の利用度を高めることができる。ハイテクオリンピックはVR技術にやりがいのある課題を提起しており、ハイテクオリンピック自身もVR技術に大きな実験場 を提供している。VR技術を応用してオリンピックの各スタジアムおよび体育館の建設工事プロジェクトに対するシミュレーションを行い、バーチャルオリン ピック村の3次元アニメーションモデルを制作し、インターネット上で表示して同時に広く修正意見を求めることで、オリンピックの各プロジェクトに対して真 にダイナミックな計画・建設・運行および管理を行うことができた。VR技術を利用して、中華文明・オリンピック100年の歴史・競技のハイライトシーンな どを3次元アニメーションでデザインし、インターネット上にオリンピックバーチャルミュージアムを設立したので、ユーザーはバーチャルミュージアムの各展 示ホールをネットサーフィンすることができる。

 デジタルオリンピックではVR技術を利用してバーチャルオリンピックを実現し、オリンピックの各準備活動におけるハイテクノロジーの利用度を高 め、2008年の北京オリンピックの各準備活動を効率的に完成させると同時に、より多くの人がバーチャルオリンピックを通してオリンピックを理解し、オリ ンピックに参加できるようにし、このバーチャルオリンピックの形式でオリンピック精神を具体的に表現するのである。


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