7.原子力開発分野
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7.2.1 原子力開発分野の現状

(1) 原子力発電

1)原子力発電所の実績

 中国電力企業連合会によると、中国では2006年、2007年と2年続けて1億kWを超える発電所が新たに運転を開始し、2007年末時点での合計発電設備容量は7億1329万kWに達した。電源別の内訳は、火力発電5億5442万kW(総発電設備容量に占める割合77.7%)、水力発電1億4526万kW(同20.4%)、原子力発電907万kW(同1.3%)などとなっている。

 2007年の総発電電力量(3兆2559億kWh)に占める各電源の割合は、火力発電82.9%、水力発電15%、原子力発電1.9%となった。火力発電のうち、石油と天然ガスの占める割合は両方合わせても数%程度に過ぎず、ほとんどが石炭火力である。

 国家エネルギー局によると、2008年9月までの原子力発電電力量は517億kWhを記録し、前年同期に比べて13%増加した。このうち送電網に供給された電力は487億kWhとなり、前年同期比13%増となった。発電所の性能指標となる平均稼働率は、前年同期から2.7ポイント上昇し88.7%を記録した。

2)原子力発電所の運転・管理

 中国の原子力発電所は、国が定めた原子力安全法規に従い、安全確保を最優先に運転が行われている。これまでに、各原子力発電所間で運転経験を共有し、安全性を全体的にレベルアップすることをねらった「原子力発電所運転経験交流管理弁法」と「原子力発電所運転経験交流実施細則」が制定、実施されているほか、原子力発電事業者間の情報交換を促進するための「中国原子力発電運転情報ネットワーク」が運用を開始している。

 こうした努力の結果、中国の原子力発電所は世界的に見てもトップレベルの安全実績を達成している。計画外の自動スクラム(停止)件数は、基数の増加にもかかわらず減少傾向を示しており、2002年(稼働中5基)が7件であったのに対して、2006年(稼働中9基)は2件であった。

 原子力発電所での異常事象の発生件数も顕著に減少してきている。8段階で評価される国際原子力事象評価尺度(INES)に基づくと、レベル2以上の事象は1件も報告されていない。2008年9月までの実績でも、異常事象が13件発生しているが、すべてレベル0以下の事象である。なおINESでは、レベル0を「安全上重要ではない事象」、レベル1から3までを「異常な事象」、4から7までを「事故」として定義している。

 そうしたなかで中国では、運転中の原子力発電所の稼働率をさらに向上させる動きが活発化している。稼働率向上には、「計画外停止の回避」、「燃料交換停止期間の短縮」、「長期サイクル運転の導入」が大きく貢献する。

 中国有数の原子力発電事業者である広東核電集団有限公司は、高燃焼度燃料を用いた18ヵ月(長期)サイクル運転を大亜湾発電所で実施している。同社は、大亜湾発電所での成功を踏まえ、嶺澳(Ⅰ期)、嶺澳Ⅱ期発電所でも採用を予定している。

3)原子力発電所の国産化

 「原子力発電中長期発展規画」では、原子力発電開発にあたって技術路線を統一し、原子力発電の安全性と経済性を重視したうえで、「中国を主体として外国と協力することを堅持するとともに、外国の先進的な技術を導入し国内の組織を統一して消化・吸収する」という原則が明らかにされた。

 また、「さらに新しいものを創造し、先進的な加圧水型炉(PWR)のプロジェクトの設計、設備製造、建設、運転管理の自主化を実現する」という方針が打ち出された。

 中国では2008年11月現在、11基の原子力発電所が稼働している。このうち、完全な自主設計と言えるものは秦山(PWR、30万kW)しかない。秦山Ⅱ期(同、65万kW)も自主設計だが、フランスの技術をベースにしている。これ以外の原子力発電所はフランス、カナダ(CANDU炉)、ロシアから輸入した。

国産化率は、秦山発電所の70%が最も高く、フランスから輸入した大亜湾発電所はわずか1%、また同発電所の8年後に運転を開始した嶺澳発電所でも30%に過ぎない。国内の原子力発電所としては初めて「CPR1000型炉」を採用し、2005年に着工した嶺澳Ⅱ期発電所では1号機で50%、同2号機で70%に達する。

 中国は、遼寧省で建設中の紅沿河原子力発電所Ⅰ期プロジェクト(PWR、100万kW級4基)を国産化率引き上げの実証プロジェクトとして位置付けている。同発電所に採用される原子炉は、計画中の多数の原子力発電所で採用が予定されている「CPR1000型炉」で、主要設備に限った国産化率を85%以上としたうえで、1・2号機については70%、3・4号機については80%の国産化を達成することを目標として掲げている。プロジェクト全体として国産化の目標は75%以上に設定されている。

また、紅沿河Ⅰ期プロジェクトでは、原子力級バルブの国産化率が60%に達する見通しとなった。従来は、原子力2級と3級のバルブの96%、原子力1級のバルブの100%を輸入に頼っていた。

4)原子力発電所の投資・収益

 中国では健全な原子力発電基準・規格体系が構築されていないとの理由から、「原子力発電中長期発展規画」では、「原子力発電の基準と安全体系が完全になるまで、国は原子力発電所の建設、運転・管理、運営に参加する企業の資質について適切に管理する」との方針が明らかにされた。こうしたことから、他の発電プロジェクトが国家発展改革委員会の承認事項であるのに対して、原子力発電プロジェクトは国務院の承認事項となっている。

 建設に多額の費用を要する原子力発電所は地元に対する経済効果も大きいため、地方政府も原子力発電所の誘致には積極的な姿勢を示しており、原子力発電開発は事業者と地元政府の二人三脚の形で行われている。

 一方で、中央政府の意向が具体的に反映されたプロジェクトもある。5大発電事業者の1つ、中国華電集団公司と河南省の洛陽市政府は2008年1月3日、同市での原子力発電所建設に合意した。市政府は、最大限の努力を払う意向を表明したが、河南省発展改革委員会は中央政府の方針にしたがい、中国華電集団公司の実績不足を理由に同プロジェクトを支持しない考えを示した。

 しかし中国では、発電事業者にとって原子力発電を外した事業展開は考えられない情勢となってきている。中国華電集団公司は2008年10月20日、遼寧省東港市政府との間で、遼寧東港原子力発電プロジェクトの枠組み協定に調印した。同社は10月13日には第1期原子力発電人材養成訓練を開始するなど、原子力発電所の導入に向けて着々と準備を進めている。

 同社以外の5大発電事業者である中国華能集団公司や中国電力投資集団公司、中国大唐集団公司、中国華能集団公司も積極的に原子力発電プロジェクトを展開している。

 なお中国では、原子力発電所については5大発電事業者よりも広東核電集団有限公司と中国核工業集団公司の方が実績を持っており、今のところ2大原子力発電事業者としての地位を確立している。また、原子力発電プロジェクトを進めるにあたっては、5大発電事業者や地元の有力企業と組むケースが一般的になっている。

 5大発電事業者による原子力発電事業への積極的な参入は、中国政府が原子力発電の開発を強力に推し進めていることだけが理由ではない。国内産業の平均利潤率が10%程度であるのに対して、原子力発電産業の利潤率は30%を超えており、事業者にとって魅力的な事業となっていることも理由としてあげられる。

 中国では、原子力発電所の経営は、国務院が定めた「以核養核、滾動発展」(原子力発電所の運転で得られた資金で次の原子力発電所を建設する)という方針のもとに行われている。しかし、そうしたアプローチだけでは今後予想される多数の原子力発電所の資金を調達することはできない情勢となってきた。

 「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」では、原子力発電所建設にあたっての資金調達問題に関して、投資主体の多元化を積極的に推進し、国による投資、銀行貸付、自己資金とエクイティファイナンスなどを相互に結合させた投融資制度を確立する方針を打ち出している。

(2) 核燃料サイクル

1)核燃料サイクル・フロントエンド

① ウラン資源

 中国は、ウランの確保にあたって、①国内生産の拡大をはかる②外国での開発を積極的に進める③国際貿易を進める――ことを3本の柱に据えている。

 国防科学技術工業委員会(当時)によると、中国の確認ウラン資源量は約10万トンUと推定されているが、世界全体では上位10カ国には入っていない。年間生産量は約800トンUとみられており、原子炉所要量の半分程度が輸入によって賄われている。

「原子力発電中長期発展規画」の中で見込まれている2020年時点で4000万kWの原子力発電所の需要を賄うためには年間1万トンUが必要になると予測されている。

 国内生産の拡大については、資源探査の努力が着々と実を結び始めている。中国の核燃料サイクル事業全般をてがける中国核工業集団公司によると、新疆ウイグル自治区の伊犁地区で、国内初の万トン規模のウラン鉱床が発見された。また内蒙古自治区の鄂爾多斯地区でも国内最大規模のウラン鉱床が発見されたという。同鉱床の埋蔵量は数万トンに達し、中国のウラン探査史上、最大の発見とみられている。

 同社によると、内蒙古自治区のオルドス盆地でも大規模なウラン鉱床が確認されたという。具体的な埋蔵量については明らかにされていないものの、最低でも現在の需要を賄うのに十分な量だとしている。同社は2008年9月4日、内蒙古自治区政府との間で、ウラン資源探査等に関する枠組み取決めを締結した。

 広東核電集団有限公司も2008年4月2日、新疆ウイグル自治区政府との間で、ウラン資源開発と電源開発プロジェクトに関する戦略的協力枠組み取決めに調印した。ウラン資源開発だけでなく、風力発電や水力発電、太陽エネルギー等の開発にあたって幅広い協力を行うという内容で、同社が資金や人材の投入だけでなく管理も行う。

表7.4 中国の原子力発電設備容量と天然ウラン所要量の実績・予測
  2002 2003 2005 2010 2020
原子力発電設備容量(万kW) 440 610 870 1600 4000
天然ウラン年間所要量(トンU) 790 1098 1566 4000 10000
原典:「加快推進我国核電自主開発建設的進程」(胡鈺、科技日報、2005年4月22日)
   「認清形勢 把握機遇 努力提高我国ウラン資源保障水平」(孫勤、ウラン鉱地質、2005年21(4))等
出典:「中国原子力ハンドブック2008」(テピア総合研究所)

 国内のウラン生産の拡大だけでは、今後、飛躍的な拡大が計画されている中国の原子力発電所の需要を賄うことはできない。このため中国政府は、外国からのウラン調達にも積極的な動きを示している。

 世界最大のウラン資源国であるオーストラリアを訪問した中国の温家宝首相は2006年4月3日、平和利用などを条件に中国がオーストラリアからウランを輸入することでハワード首相(当時)と合意した。

 そうしたなかで、2007年4月の全国党大会でウラン開発禁止政策を四半世紀ぶりに撤廃した労働党が同12月に政権に返り咲いた。ウラン政策転換の中心人物は、労働党党首で親中派として知られる現首相のラッド氏であった。

 2008年に入っても、中国政府のウラン調達を視野に入れた動きは衰えを見せていない。中国政府は2008年3月、有望なウラン鉱床を抱えるアルジェリアとの間で民事用原子力協力協定に調印した。また、8月にはヨルダンとの間でも原子力協力協定に調印し、これを受け中国核工業集団公司とヨルダン原子力委員会は9月、ウラン資源開発等で中国側が協力するなどとした平和利用議定書に調印した。

 フランスときわめて密接な関係を持つ広東核電集団有限公司は2008年10月7日、原子力発電から核燃料サイクルまでを手がけるフランスのAREVA社との間で戦略的パートナーシップを強化する2件の契約を結んだ。

 それによると、AREVAが保有しているウラン採掘企業、UraMin社の株式49%を広東核電集団有限公司と中国政府投資ファンドが取得し、UraMin社が手がけるプロジェクトについてはAREVA社がこれまで通り運営する一方で、生産量の半分超を中国側が引き取ることになった。

 オーストラリアに次ぐ世界第2位のウラン資源を抱えるカザフスタンとの協力も強化された。中国の温家宝首相は2008年10月31日、カザフスタンの首都アスタナでマシモフ首相と会談し、戦略的パートナーシップを強化することで合意した。

これを受け、広東核電集団有限公司とカザフ国営のカザトムプロム社との間で、ウラン資源開発や核燃料の生産、天然ウランの長期取引等に関する取決めが調印された。また、中国核工業集団公司との間でも、長期にわたった原子力プロジェクトの実施に焦点を定めた協力取決めが調印された。

② 製錬・転換

 「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」では、ウランの製錬ラインを新たに建設し、建設中のウラン転換ラインを完成するとともに、重要設備の研究・製造に加え、主要技術の研究を行い転換設備の生産工程の技術水準を引き上げるという目標が示された。

 製錬は、採掘されたウラン鉱石を精製し、純度を高めて粉末状のウラン精鉱(U3O8)を作る工程である。また転換は、ウラン濃縮の実施に必要な工程で、粉末状のウラン精鉱をガス状の六フッ化ウラン(UF6)にする工程を言う。

 製錬については、衡陽と撫州にそれぞれ1100トンU/年規模の工場が操業しているとの情報がある。また、転換については、甘粛省の2ヵ所の工場を合計した能力が年間2000トンUに達するとみられている。このほか中国核工業集団公司は、3000トンU規模の転換工場が2008年に建設を終了し、試運転を経て操業を開始したことを明らかにした。

③ 濃縮

 中国では今後、原子力発電の拡大にともないウラン濃縮需要が2010年時点で2500トンSWU(分離作業単位)、2020年時点で7000トンSWU程度に達すると予測されている。一方で、2020年時点の原子力発電設備容量を7000万kWまで拡大できる見通しが確実になってきているため、濃縮役務の所要量もさらに増大すると見込まれている。

 中国は従来、ウラン濃縮法としてガス拡散法を利用していたが、効率が悪いため、甘粛省蘭州のガス拡散濃縮工場は1997年に運転が中止された。その後、ロシアの遠心分離技術を採用した濃縮工場を建設するという契約が1990年代に締結された。

 契約に従い、陝西省の漢中にある中核陝西ウラン濃縮公司の工場に500トンSWU分が据えつけられ1997年から2000年にかけて操業を開始した。甘粛省の蘭州でも500トンSWU規模の工場が2001年に操業を開始している。

 そうしたなかで2007年11月、ロシアのテクスナブエクスポルト(Tenex)社と中国原子能工業公司との間で、漢中に500トンSWU規模の遠心分離濃縮工場を建設するにあたってロシアが技術支援を行うという枠組み協定に調印が行われた。2008年5月には、総額10億ドルの建設契約が正式に結ばれた。

 中国は、大亜湾原子力発電所の濃縮役務所要量の30%を欧州の濃縮事業者URENCOから調達しているほか、2010年から11年間にわたってTenexから低濃縮ウランを調達することでも合意している。

 中国の核燃料サイクル事業を担う中国核工業集団公司の邱建剛・副総経理は、国産化を進めるとともに技術導入を行うという戦略に従い、国内だけではなく外国の市場をにらみながらウラン濃縮能力の整備・拡張を行う意向を示している。

同氏は、2010年から2020年にかけて新規工場を続々と建設・操業し、濃縮能力を飛躍的に拡大したうえで、余剰能力を外国のユーザーに対して提供し、中国がアジアのウラン濃縮センターとしての地位を確立する考えを明らかにした(「全方位立体経営確保核電発展的燃料供応」、中国核工業雑誌第七期、2008年9月9日)。

④ 核燃料の成形加工

 「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」では、改造と新設によって、四川省の宜賓にある中核建中核燃料元件有限公司の核燃料工場と、内蒙古自治区の包頭にある中核北方核燃料元件有限公司の核燃料工場を整備する方針が明らかにされた。

 四川省の宜賓工場は年間200トンUのPWR(加圧水型炉)用燃料の製造能力を持ち、これまで秦山Ⅰ期と同Ⅱ期、大亜湾、嶺澳の国内PWRに加えて、中国が供給したパキスタンのチャシュマ原子力発電所(PWR、30万kW)に核燃料を供給してきた。

 しかし、原子力発電開発の拡大にともない、国内の核燃料需要が大幅に伸び、2008~2010年までの需要を賄うことができない事態が予想されたため、宜賓工場では2005年から生産ラインの拡張が進められ、2008年10月30日にPWR用燃料の新しい生産ライン(400トンU)が操業を開始した。

 また、宜賓工場ではロシア型PWRである「VVER-1000型炉」燃料の生産ラインの建設も行われている。計画では2009年から操業を開始し、2010年にも同型炉を採用する江蘇省の田湾原子力発電所向けに出荷される予定になっている。

 一方、秦山Ⅲ期(CANDU=カナダ型重水炉、70万kW×2基)向けの核燃料を2003年から製造している包頭工場(年産200トンU)では、年産400トンU規模のPWR用燃料生産ラインの建設が行われている。

 包頭工場ではこのほか、国の重大科学技術プロジェクトとして位置付けられている高温ガス炉向けの核燃料の製造も行う。新しい生産ラインの建設は、2009年4月にスタートする予定になっている。

 同工場を運営する中核北方核燃料元件有限公司は、「AP1000型炉」向け燃料の製造でも中心的な役割を果たすことになった。同型炉を含めた第3世代原子力発電技術の国産化に必要な体制整備の責任を負っている国家核電技術公司は2008年5月、中核北方核燃料元件有限公司と中核建中核燃料元件有限公司との間で、「AP1000型炉」の核燃料を製造する中核包頭核燃料元件股份有限公司を共同で設立する出資協議を締結した。

新会社の登録資本は2億元で、北方核燃料元件有限公司が50%、国家核電技術公司が35%、建中核燃料元件有限公司が15%を出資する。

 核燃料の被覆材に使われるジルコニウムと制御棒に使われるハフニウムの工場の建設も決まった。国家核電技術公司の傘下企業である国核宝チタン・ジルコニウム業股份公司と河北省唐山市の南堡経済開発区管理委員会は2008年4月、同開発区に原子力級ジルコニウム・スポンジ工場を建設する実施契約を締結した。

 同工場は、第3世代原子力技術の国産化プロジェクトの一環で、米ウェスチングハウス社の技術が導入され、「AP1000型炉」向けのジルコニウム・スポンジが製造される。工場は二期に分けて建設されることになっている。

 なお、「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」では、高性能燃料集合体と関連する被覆・構造材料の研究に加えて、MOX(混合酸化物)燃料集合体の設計・製造および主要設備の研究を行い、ウランとプルトニウムのリサイクル実現に向けて技術的基礎を固めるとの方針が明らかにされている。

2)核燃料サイクル・バックエンド

① 再処理

 中国は1983年、国務院の科学技術指導グループが招集した専門委員会の場で、核燃料サイクル確立に向け、使用済み燃料を再処理する方針を決定した。その後、「中国原子力平和利用『第10次5ヵ年』発展規画綱要」では、核燃料サイクル産業と原子力発電の協調発展の必要性が言及された。

また、「原子力発電中長期発展規画」では、リサイクル路線の堅持が再確認されるとともに、「使用済み燃料再処理基金」の徴収の必要性が明記された。それによると、「第11次5ヵ年」期間中に関連の研究作業をスタートし、2010年以前の実施を目指して努力するとの方針が示された。同規画には、再処理専門会社の設立も盛り込まれた。

 中国では現在、甘粛省の蘭州に建設された再処理パイロットプラント(年間処理量50トンHM=重金属)でホット試験が行われている。同プラントでは、次のステップとして100トンHMまで設備容量を拡張することが計画されている。

 「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」では、再処理パイロットプラントの建設を加速し、通水作動試験と酸を用いた化学試験を終えてから、手直しを含めた総合調整試験を行いホット試験の検証を行うとの目標が示されている。

 同規画は、パイロットプラントに続く商業用再処理プラント(処理能力800トンHM)について、事前準備作業を行うとともに基準を検討、制定したうえで立地点の選定を行い、技術路線を確定するとの方針を明らかにしている。

 商業用再処理プラントは甘粛省に立地されることが決まっており、すでに調査作業や予備実行可能性調査、建議書の作成が終了し、建議書は国家発展改革委員会に提出されている。

 甘粛省の徐守盛・省長は2008年4月、中核404有限公司の商業用再処理プラントの建設予定地を視察した際、国が進める再処理プロジェクトに対して甘粛省としても全面的に協力する意向を表明した。

 一方、原子能科学研究院の4大重要施設にあげられている「核燃料再処理放射化実験施設」の建設が正式にスタートした。中国核工業集団公司が2008年3月に明らかにしたもので、中国の使用済み燃料再処理技術の進歩と産業の発展に大きく貢献すると期待されている。

② 放射性廃棄物の処理・処分

 「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」は、原子力発電の拡大にともなって発生量が増加することが確実な放射性廃棄物の処理・処分について、中レベルと低レベルの放射性廃棄物用の処理施設および有機液体放射性廃棄物焼却施設を建設・運転するとの方針を示している。

 また、極低レベル放射性固体廃棄物処分場を建設するとともに、全国規模で中・低レベル放射性廃棄物処分場の計画・研究を実施し、華東地区と西南地区で処分場の建設を開始することを明らかにした。

 中国では、西北地区と広東の北龍地区の2ヵ所で、中・低レベル放射性廃棄物処分場が操業している。西北処分場は1998年に2万立方メートル分が完成し、最終的に20万立方メートルまで拡張される計画になっている。

 北龍処分場は大亜湾原子力発電所から約5キロ離れた場所にあり、2000年に完成した。まず8800立方メートル分が建設され、最終的に24万立方メートルまで拡張されることになっている。

 再処理にともなって発生する高レベル放射性廃棄物については、最終的な安全処理・処分技術を確保したうえで、液体廃棄物の新しい処理技術ならびに固化体の地層処分技術の研究を行うことになっている。

 一方、「原子力発電中長期発展規画」によると、2020年以前に「高レベル放射性廃棄物最終処分場地下実験室」を建設するとともに、「高レベル放射性廃棄物最終処分規画」をとりまとめることになっている。

 なお、「放射性汚染防止法」は、中・低レベル放射性廃棄物については「国が定める区域において浅地層処分する」としている。また、高レベル放射性廃棄物とアルファ放射性固体廃棄物については「集中的に深地層処分する」と規定している。このほか同法には、環境保護当局の認可を得て、放射性固体廃棄物の専門貯蔵・処分機関を設立する規定が盛り込まれた。

 リサイクル政策を採用する中国では、使用済み燃料は廃棄物とはみなされていない。中国核工業集団公司によると、2020年の原子力発電設備容量が4000万kWの場合、それまでに発生する使用済み燃料の量は7500トン、また6000万kWの場合には1万トンに達すると予測されている。

③ 廃止措置(デコミッショニング)

 中国で最も古い原子力発電所は1991年10月に臨界に達した秦山Ⅰ期(1号機)であり、廃止措置の実施はまだだいぶ先のことになるが、「原子力発電中長期発展規画」は、原子力施設の廃止措置(デコミッショニング)に備えた中国政府の基本方針を明らかにしている。

 それによると、原子力発電所が商業運転を開始した時点において、原子力発電原価の中から廃止措置費用を強制的に徴収し積み立てるとしている。具体的には、中央財政に「原子力発電廃止措置特別基金口座」を設立し、各原子力発電所の運転期間中に徴収する。徴収基準と実施方法については、国家発展改革委員会が財政部と国家国防科技工業局が共同で検討し確定することになった。

 一方、2010年までを視野に入れた「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」では、原子能科学研究院や清華大学などの研究炉の廃止措置に関して事前準備作業を行う方針が明らかにされた。

 また同規画によると、ウラン鉱の採掘等にともなって廃棄された鉱石や鉱滓などの管理が継続して実施されるとともに、環境の復旧が行われる。このほか、各種原子力施設については、それぞれの特徴を踏まえてソース・ターム(source term=放射性物質の種類、化学形、放出量)の測定、設備の除染ならびに解体などの廃止措置技術の研究および廃止措置設備の研究・製造が行われる。

(3) 新型動力炉の開発

1)高温ガス炉

① 高温ガス炉の位置付け

 中国政府は、原子力技術路線として「熱中性子炉(PWR)-高速中性子炉-制御核融合炉」を堅持する方針を明らかにしている。一方で、1000度C近い温度の熱が取り出せる高温ガス炉の開発も積極的に進めている。

 国務院が2006年2月9日に公布した「国家中長期科学技術発展規画綱要」では、高温ガス炉を用いた原子力発電所が16の重大特定プロジェクトの1つとして選定された。

「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」は、「すでに建設された10MWの実験炉を基礎として、一層の自主的な研究開発により、出力200MWの高温ガス炉実証炉を建設し、中国が独自に知的財産権を持つモジュールタイプの高温ガス炉技術の産業化を実現し、中国の高温ガス炉技術を世界のトップ水準に維持する」と述べている。

 また同規画では、高温ガス炉の高温熱を用いた熱化学法による水素製造技術とプロセスに関する研究を行い、主要技術の把握に努め、関連する試験装置建設にあたっての条件を定めるとしている。

② 高温ガス炉実験炉「HTR-10」

 高温ガス炉実験炉「HTR-10」(熱出力10MW)は、「国家ハイテク研究開発発展計画」(「863計画」)に加えられている。「HTR-10」の開発は清華大学が担当し、1994年12月に国家核安全局から建設許可を取得した。以後、95年6月の着工から、2000年12月21日の初臨界達成を経て、2003年1月に蒸気タービン発電に成功した。

 設計から完成までに17年と2億7500万元を要した。2007年2月27日には、「国家科学技術進歩賞」を受賞した。

③ 高温ガス炉実証炉「華能山東石島湾(栄成)Ⅰ期発電所」

 中国の5大発電事業者の1つ、中国華能集団公司は2006年12月、中国核工業建設集団公司と清華大学との間で、高温ガス炉実証炉と位置付けられている華能山東石島湾(栄成)Ⅰ期発電所(出力20万kW)の実施主体となる華能山東石島湾核電有限公司の出資協議書に調印した。高温ガス炉の建設・運転新会社には、中国華能集団公司が47.5%、中国核工業建設集団公司が32.5%、清華大学が20%出資する。

 同発電所の総工費は約32億元(約480億円)と推定されており、80%以上の国産化率を達成することが期待されている。2009年9月に着工し、2013年11月に運転を開始する計画になっている。原子炉出口温度は750度C、設計寿命は40年が見込まれている。

 華能山東石島湾核電有限公司は2008年10月、中核能源科技有限公司、清華大学核能・新能源技術研究院との間で、EPC(設計・調達・建設)総請負枠組み取決めを、また上海電気集団、ハルビン電站集団を含む国内の原子力発電設備製造業者との間で主要設備発注契約を結んだ。

 なお、同発電所サイトでは、合計出力で400万kWの高温ガス炉が建設されるほか、中国華能集団公司によって100万kW級のPWRが6基建設されることになっている。

2)高速炉

① 高速炉の位置付けと実験炉「CEFR」

 中国政府は、現在の熱中性子炉(PWR)から核融合炉へとつなぐ原子炉戦略の中で、高速(増殖)炉を最重要な炉型と位置付けている。

 中国の高速炉開発は1960年代半ばに基礎研究からスタートした。1987年からは「国家ハイテク研究開発発展計画」(「863計画」)に組み込まれ、1993年にかけて各研究所・大学等で応用基礎研究が実施された。こうした研究に合わせて、1990年からは高速炉実験炉「CEFR」(熱出力65MW、電気出力20MW)の設計が始まった。

 「CEFR」は、ロシアの高速炉原型炉「BN-600」(電気出力60万kW)をモデルにしている。「CEFR」は863計画の中でも最大のプロジェクトの1つに数えられており、これまでの投資額は約14億元に達している。設備の国産化率は70%に達するとみられている。

 当初の計画では、2003年の臨界達成が予定されていたが、計画は大幅に遅れ、2009年6月の臨界を経て、2010年に送電を開始することが見込まれている。実験炉を建設している中国原子能科学研究院によると、内蒙古蘭太実業股份有限公司のナトリウム工場で2008年5月9日、「CEFR」の冷却材として使われる原子炉級ナトリウムの出荷式典が行われ、第一陣として18トンが建設現場に向けて出発した。最終的に336トンのナトリウムが運ばれる。

② 実験炉以降

 中国政府は、実験炉「CEFR」以降について具体的な計画は公表していない。「原子力発電中長期発展規画」でも言及されておらず、また「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」でも「原型炉建設に向けて事前研究を行う」と述べられているに過ぎない。

 国防科学技術工業委員会(当時)は2005年9月28日、高速炉開発を「実験炉-原型炉-実証炉」の3段階で進める戦略を定めたことを明らかにした。また、原型炉の出力は約60万kWで建設時期は2020年としていた。

 そうしたなかで、福建省への高速炉原型炉の建設が浮上してきた。中国核工業集団公司が2008年10月30日に明らかにしたもので、福建省発展改革委員会と共同で開催した高速炉技術発展研究討論会で、高速炉原型炉の建設を早急にスタートする必要があるとの合意が得られた。

 会合では、同省の三明市に原型炉を建設するにあたっての予備実行可能性評価が報告された。出席者からは、国際協力を進める必要性のほか、三明市が原型炉の建設に適しているとの判断から、地元政府に対して立地面での協力が要請された。

 中国原子能科学研究院の万鋼・副院長は2008年8月15日、同研究院が2007年以降、「国家高速炉発展規画(2007-2035年)」と「高速炉技術研究開発中長期規画(2007-2020年)」の建議書案を作成し、関係者へ報告を行ったことを明らかにした。

 なお2007年12月26日に公表された「エネルギー白書」では、最先端技術と基礎科学分野の研究強化に関して、ガス冷却高速炉の設計および核心技術の研究開発を加速する方針が示された。

表7.5 中国の高速(増殖)炉発展戦略
  熱出力/電気出力(MW) 設計開始年 建設開始年 完成年
1.CEFR 65/20 1990 2001 2010
2.CPFR/CDFR
CCFR(商業炉)
1500~2250/600~900
/n×600~900
2007
2015
2013
2023
2020
2030
3.CDFBR
CCFBR(商業炉)
2500~3750/1000~1500
/n×1000~1500
2015
2020
2021
2025
2028
2032
CEFR:実験炉、CPFR:原型炉、CDFR:実証炉、CDFBR:高速増殖炉(FBR)実証炉出典:「2007-2008核科学技術 学科発展報告」(中国科学技術協会主編、中国核学会編著、中国科学技術出版社、2008年2月)

3)超臨界圧水炉

 中国核学会が運営するウェブサイト(http://www.ns.org.cn/index.aspex)が2007年8月21日付けで明らかにしたところによると、科学技術部は超臨界圧水炉を「国家重点基礎研究発展計画」(「973計画」)に組み入れることを承認した。

 それによると、上海交通大学清華大学北京科技大学華北電力大学、中国核動力研究設計院、中国原子能科学研究院、上海核工程研究設計院、中科華核電技術研究院が共同で提案した。上海交通大学の程旭教授がリーダーを務める。プロジェクトの総額は3000万元(約4億5000万円)と見積られている。

 超臨界圧水炉は、第4世代原子炉の中で唯一の水冷却炉で、超臨界圧水を冷却材としており、炉心で加熱された冷却水の全量がそのままタービンへ送られる貫流直接サイクル型の原子炉である。現在の軽水炉よりもシステムが簡単で熱効率が高く、大幅な経済性の向上が期待できる。

(4) 原子力安全確保と防災

1)原子力安全確保体制

 中国では、国家核安全局が独立した原子力安全監督権限を持ち、国内の原子力施設の安全確保について独立した監督を行っている。実質的な業務は、「国家核安全局」という名のもとに環境保護部が行っている。

 中国の原子力安全法規によると、国家核安全局が発給する「原子力安全許可証」の所有者(あるいは申請者)が原子力安全確保に関して全面的な責任を負っている。

 「原子力安全許可証」は、申請者が原子力安全に関係する特定の活動(原子力発電所の立地点の選定、建設、検査・調整、運転、廃止措置、核物質の所有、使用、生産、保管、処理・処分等)に従事することを国の監督機関である国家核安全局が承認する法的文書である。国家核安全局が審査、承認、発給する許可証には以下のようなものが含まれる。

  • 原子力発電所の建設許可証
  • 原子力発電所の運転許可証
  • 原子力発電所の運転員資格証明書
  • 原子力発電所の立地点選定審査意見書
  • 原子力発電所の燃料装荷承認書
  • 原子力発電所の廃止措置承認書

 国家核安全局による審査・承認手続きにおいて、国務院の関係部門だけでなく原子力発電所立地点の所在省・自治区・直轄市政府に対しても諮問が行われる。

2)原子力安全文化

 中国政府は、原子力安全確保を最優先課題として位置付けており、安全文化および安全文化の醸成を非常に重視している。

 「原子力発電中長期発展規画」でも、「安全第一という原子力発電の発展原則を堅持し、原子力発電の建設、運転、原子力発電設備の製造許可、炉型と立地点の選定、管理モデルの決定などの作業において、『核安全一票否決制』を貫徹する」という基本的方針を示している。「核安全一票否決制」とは、原子力安全に関する1つの項目でも基準に達しない場合には不合格にするという考え方である。

 中国の原子力安全文化活動は1991年にスタートした。とくに事故の報告と分析に重点を置き、透明性を堅持し、原子力関係者の思想の転換を重視してきた。また、安全や品質に関する意識、改善の継続など、安全文化の基本的要件を分かりやすいスローガンにして、安全文化の推進事業を原子力発電所全体に徹底させた。

3)原子力防災

① 原子力緊急時対応システム

 原子力緊急時対応システムである「核緊急指揮プラットフォーム」のⅠ期工事が終了し、2007年8月7日に試運用を開始した。同プラットフォームは、秦山、大亜湾、田湾の原子力発電所だけでなく、各省の緊急指揮センターと結ばれており、原子力発電所の運転状況のほか、放射線や気象データをリアルタイムで入手して関係者に伝えることができる。

 中国の原子力緊急事態の対応にあたっての法的根拠となっているのが1993年の「原子力発電所の原子力事故応急管理条例」である。同条例では、原子力緊急事態に備えた準備を怠らないことに加えて、①指揮の統一をはかり、全力をあげて協力する②公衆と環境を保護する――という方針が打ち出された。

 「原子力発電所の原子力事故応急管理条例」に基づき、原子力緊急事態に対しては、「国家原子力事故対応」、「原子力発電所所在省(自治区、直轄市)対応」、「原子力発電事業者対応」という3段階のステップで対応することになっている。

② 原子力発電所の所内および所外緊急時計画

 原子力発電事業者は、原子力発電所で発生する可能性がある事故に焦点を定めて、サイト内での緊急時計画を、また地方政府はサイト外の緊急時計画を作成することになっている。国レベルでは、国家原子力事故緊急調整委員会が緊急時計画を作成する。この3つの計画は、相互に密接な関係を持つだけでなく、それぞれの実施手順が定められている。

 原子力発電事業者の緊急時計画は、国家核安全局によって審査、承認される。原子力発電所所在地の省政府の原子力事故緊急時計画は、国家原子力事故緊急調整委員会が審査、承認する。また、国レベルでの国家原子力事故緊急時計画は、国務院が審査、承認することになっている。

 地方政府は、原子力発電所の周辺住民に対する原子力安全と放射線防護に関する基本的な知識の普及・教育の責任を負っている。また、緊急時における警報や避難、放射線予防薬剤の服用などの応急措置に関する知識の普及や指導も行う。

 原子力発電事業者は、地方政府と住民との連絡を強化することによって、原子力安全と原子力緊急事態等についての理解向上に努め、住民の恐怖を取り除き、仮に原子力事故が発生した場合でも住民が適切に対応できるようにする役割を担っている。

 中国では、緊急時対応模擬訓練が定期的に行われている。国家原子力事故緊急調整委員会は、ニーズに応じて単一の項目について、組織ごとに模擬訓練を年に1回実施している。通信模擬訓練はさらに頻繁に行われている。

 1つの部門による1つの項目についての模擬訓練は、当該部門によって実施されるが、2つ以上の部門にまたがる場合は、国家原子力事故緊急調整委員会の事務局が調整を行う。

 総合模擬訓練(国家レベル+省レベル+原子力発電所レベル、国家レベル+省レベル、国家レベル+原子力発電所レベル訓練)ならびに複数の部門間での合同模擬訓練は、一般的に3~5年に1回実施される。

4)原子力損害賠償

 中国では、原子力損害賠償制度に関する法律は未整備であり、国務院が1986年に公布した第44号文書で基本方針が示されていたが、2007年6月30日、国務院は国家原子能機構に対する回答(国務院文書〔2007〕64号)の形で、原子力損害賠償に関する新しい方針を示した。

 以前の方針では、原子力事業者の損害賠償額は1件の事故あたり1800万元(約2億7000万円)が限度額となっていた。また、賠償額がこれを超えた場合に国が支援・補償する額は3億元(約45億円)と定められていたが、いずれも引き上げられた。

 具体的には、1件の原子力事故によって生じた損害に対する、原子力発電所の運営者および使用済み燃料の輸送、貯蔵、再処理の運営者の最大賠償額は3億元(約45億円)となった。

 また、その他の運営者の最大賠償額は1億元(約15億円)と定められた。こうした最大賠償額を超える事故が起こった場合の国による補償額は8億元(約120億円)に引き上げられた。なお、国務院の回答文書は、「原子能(力)法」のドラフト作成の任務を負っている国家原子能機構に対して、ドラフトの起草に際して損害賠償に関するこれらの内容のほか、訴訟の時効、裁判所に管轄について明確に規定しなければならないとの見解を示した。