ライフサイエンス分野(国際比較)
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Ⅰ. 環境技術分野全般

環境技術は他の技術開発と違い、社会や経済の状況、規制に対する考え方などに大きく左右される。中国の環境技術力はそれ程強くない。

 本分野における欧州と日本はほぼ互角であり、米国は産業技術力で劣るものの、それ以外は互角である。韓国及び中国はこれら三極とは差がある。

 研究開発戦略センターの冊子には、中国の環境技術の状況について、次のような記述がある。

「環境技術の特徴は、まずは、個々人の健康や生命に対するリスクを削減する目的で導入される。すなわち、大気汚染対策と日常的に使用する水の質を確保するための汚濁対策が中心となる。現時点で、中国を訪問された際、水道水を飲むことは多くの地域でお薦めできないが、富裕階級に限らず多くの人々が、ボトルウォータを買うという方向で、なんとか対処しているのが現状である。1960年代の日本であれば、すべての住民の健康を考慮して水道水の品質が守られたが、現時点の中国の状況は、そのような方向性ではない。

 中国の大気汚染についても、特徴的なことが課徴金制度(「排汚費」と呼ばれる)である。すなわち、排出基準を守らない場合には、ある種の罰金を支払うが、その金額がかなり低めに設定されており、石炭を燃焼させる場合に発生するイオウ酸化物についても、排出防止装置を運転するよりも、罰金を支払った方が安いとされている。このような状況では、高価な技術が導入される可能性は低い。

 中国の基本的な考え方は、先富論にある。まずは、経済成長し、その後に環境問題などの社会的ひずみを解消すればよいとの考え方であって、日本の経済成長を見本にしたといえるだろう。この考え方が、中国でも通用するかどうか、すなわち、日本では比較的短期間に汚染レベルの低減が行われたことが、中国のようにゆっくりと流れる大河を抱える国でも実現できるのかどうか疑わしい。環境研究面で協力し、それによって、技術の導入を加速することが必要だと思われる。」