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第109回CRCC研究会「211」「985」「二つの一流」と中国のハイレベル大学建設について(2017年10月16日開催)

「211」「985」「二つの一流」と中国のハイレベル大学建設について

開催日時:2017年10月16日(月)15:00~17:00

言  語:日本語

会  場:科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール

講  師:胡 志平氏: 中華人民共和国駐日本国大使館公使 参事官

講演資料:「 『211』『985』『二つの一流』」と 中国のハイレベル大学建設について
胡志平氏講演資料( PDFファイル 1.2MB )

講演詳報:「 第109回CRCC研究会講演詳報」( PDFファイル 15.4MB )

大学評価システムで日中協力を 胡志平駐日中国公使が提言

中国総合研究交流センター 小岩井忠道

 駐日中国大使館の胡志平公使参事官が10月16日、科学技術振興機構(JST)中国総合研究開発センター主催の研究会で講演、ハ イレベルの大学構築を目指した国家政策が着実な成果を挙げている現状を詳しく紹介するとともに、効率的な大学評価システム構築などの課題を解決するため、日本との協力強化の必要を強調した。

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 中国政府は、中国の特色を備えた世界レベルの大学構築を目指し、「211プロジェクト」と「985プロジェクト」という二つの大きな計画を実施してきた。1 995~2011年に558.86億元を投入した「211プロジェクト」では、重点大学として116、重点学科として1,000の大学、学科が指定され、先進レベルに近づきあるいは追いつく成果を挙げている。< /p>

 北京大学の創立100周年記念式典で江沢民国家主席(当時)が発表したことから「985プロジェクト」と名付けられた教育振興行動計画は、「211プロジェクト」の116の大学から39の大学を選び、さ らに先進的な新しい学科構築を加速した。イノベーション人材養成や学術リーダーの育成、さらには国際交流協力の拡大なども狙っている。1999~2012年に実施されたこの計画には、1,119億元が投入された。< /p>

 39大学の中でも政府が中国を代表する大学として特に力を注いだ北京大学清華大学が英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」の世界大学ランキングで2010年の47位、54位から、2 017年には27位、30位にそれぞれ順位を上げたことを示す表などを挙げて、胡氏は両プロジェクトの成果を強調した。

 胡氏が紹介したデータの中には、国全体の研究開発における大学の貢献度の大きさを示す数字も含まれている。中国の科学、技術分野それぞれの最高研究機関である中国科学院中国工程院のメンバー、中 国科学院士と中国工程院士のうち大学から選ばれた院士の数はそれぞれ578人(全体の44.1%)、423人(同42.1%)に上る。「211」、「985」両プロジェクトの指定大学から選ばれた研究者が、中 国科学院士のうちの91.7%、中国工程院士のうちの81.6%と圧倒的な比率を占める。

 国際情報サービス会社「クラリベイト・アナリティクス社」の論文データベース「Science Citation Index Expanded」に収録されているSCI論文のデータや、特 許に関するデータも大学の実力向上を裏付ける数字として示された。中国発のSCI論文のうち、大学の研究者が第一著者となっているのは約22万本。これは中国全体の82.8%を占める。一方、特 許登録数約13万6,000件(中国全体の16.0%)、技術売買契約数5万7,000件(同18.6%)、技術売買契約の金額約314億3,000万元(同3.2%)という数字も併せて示し、「特許、技 術売買契約は少ない」ことを氏は認めた。

 こうした現状を紹介した上で、今後の課題として氏は、大学側に「一流大学構築案の着実かつ柔軟な実施・実現」、政府側にも大学に対する「客観的効率的な評価システムの構築」、「評価基準の作成」、「 第三者評価機構の育成」という取り組みを急ぐ必要があることを指摘した。その上で氏が強調したのは、中国と日本の連携の必要。自主運営する力が弱いという共通の課題が両国の大学にあることを指摘し、「 政府の支援を受けるには政府の方針の影響を受けざるを得ない。その上で、それぞれの大学が特色を出さないと大学は生きていけない。大学評価の方法をはじめ、日本はこれまでいろいろな改革の実績を持つ。こ れまでも日本と中国は教育改革の課題について意見交換を続けてきたが、お互い大学の発展を図るため協力を強化したい」と、胡氏は講演を締めくくった。

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(写真 CRCC編集部)

阮湘平

胡 志平 (こ しへい) 氏:
中華人民共和国駐日本国大使館公使 参事官

略歴

1965 年3月生まれ
1986 年 7 月 北京外国語大学日本語科卒
1986 年 8 月 中国教育国際交流協会就職
1990 年 9 月 河北省獲鹿県教育委員会教育改革委員会副主任
1991 年 9 月 中国教育国際交流協会日本担当
1992 年 3 月 中華人民共和国駐日本国大使館教育部三等、二等書記官
1996 年 10 月 中国教育部外事局来華留学課副課長
1998 年 9 月 中国教育部国際合作交流局来華留学課課長
2002 年 4 月 中華人民共和国駐日本国大使館教育部一等書記官
2007 年 7 月 中国教育部国際合作交流局一等書記官
2008 年 6 月 孔子学院本部副幹事長兼国家漢語国際普及指導グループ弁公室副主任
2015 年 12 月~ 中華人民共和国駐日本国大使館公使参事官