中国研究会開催報告&資料
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第85回CRCC研究会「中国の宇宙開発動向 2015」/講師:辻野 照久(2015年 6月15日開催)

「中国の宇宙開発動向 2015」

開催日時・場所

2015年 6月15日(月)15:00-17:00

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール

講演資料 「 中国の宇宙開発動向 2015」( PDFファイル 2.74MB )

※講演詳報は後日掲載予定

講演詳報 「第85回CRCC研究会 詳報」( PDFファイル 8.06MB )

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講演レポート

中国総合研究交流センター

 世界の宇宙開発動向を調査・研究している宇宙航空研究開発機構(JAXA)の辻野照久氏(調査国際部特任担当役)は6月15日、科学技術振興機構(JST)中国総合研究交流センター(CRCC)主催の研究会で「中国の宇宙開発動向2015」と題して講演し、“竹のカーテン”に包まれた中国の宇宙開発について、独自の調査によって収集した大量のデータを示しながら報告した。

 辻野氏はまず、中国の宇宙開発の概況に触れ、同国の打ち上げた累積衛星数が2014年末で235機(うち静止衛星は59機)に上り、ロシア・米国に次いで世界第3位になっていると指摘。「中国の宇宙開発は飛躍的に発展する段階を迎えており、技術的失敗などで停滞気味の米国およびロシアに割り込んで各領域で世界のトップに立つ勢いをみせている」との分析を示した。

 同氏はまた、「中国は2003年に世界で3番目の有人宇宙飛行を成功させて以来、陳腐化したロケットや設備で最大限の成果を上げているが、新しいロケット・打上げ基地・衛星バス・独自の宇宙ステーション・有人月探査などの開発プロジェクトを同時並行で進めている」と強調。直径5メートルの世界最大級のロケット「長征5型」が2016年に海南島に新設された文昌基地から打ち上げられる予定になっていると語った。

 中国の有人宇宙飛行や独自の宇宙ステーション建設計画について、辻野氏は「有人宇宙船の打上げは2015年にはないものの、2016年には『神州11号』と『天宮2号』の打上げが計画されている」とし、「2020年ごろには独自の宇宙ステーションを運用することになろう」との見通しを示した。同氏によると、中国の宇宙ステーションはモジュール3つで構成され、「天宮」と名付けられ、貨物輸送船「天舟」も新たに開発されているという。

 同氏はさらに、中国の月探査計画に言及。「『嫦娥』5号が2017年にサンプルリターンに挑戦、「『嫦娥』4号が2020年ごろ、月面でのミッションを公募して月面着陸し、2025年から2030年ごろ、有人月面基地で短期滞在から長期滞在へ向かうだろう」と述べた。

 同氏はこのほか、中国の地球観測衛星、航行測位衛星、通信放送衛星、宇宙科学衛星、宇宙開発組織、国際協力などについても紹介した。

(文・写真 CRCC編集部)

当ウェブサイト掲載 辻野照久氏執筆レポート

辻野照久

辻野 照久(つじの てるひさ)氏:
宇宙航空研究開発機構(JAXA)調査国際部特任担当役

略歴

1950年大阪府出身。大学教養課程で中国語を履修。1973年東北大学工学部卒業、日本国有鉄道入社。1986年より宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構:JAXA)。2 011年よりJST/CRDS特任フェローとして世界の宇宙技術力比較調査や中国の天体望遠鏡LAMOSTの現地調査、タイ及びブルネイの科学技術情勢の調査などを担当。J AXAでは調査国際部調査分析課特任担当役として世界の宇宙開発動向調査を担当。文部科学省科学技術・学術政策研究所客員研究官も兼ねる。