日本発の研究成果を中国の大学企業に説明
2016年 5月12日 馬場 錬成(中国総合研究交流センター上席フェロー)
日本の大学・高専・企業などで研究開発した技術を中国に移転するための日本技術説明会が、5月8日(北京市)、10日(山東省済南市)で開催され、多くの具体的な話や研究交流が展開された。
北京では、全国農業展覧館新館セミナー室で行われたが、発表した機関は表1の通り。
機関名 | 発表内容 |
香川大学 | 食品素材中の高付加価値成分の分離、精製技術 |
電気通信大学・TLOキャンパスクリエイト | 先端レーザ樹脂溶着技術・ 推進コンソーシアム |
福井大学 | 資材を使用したカドミウム吸着実験について展示 |
株式会社 堀場製作所 | 環境計測における最新技術の紹介 |
高知大学 | 過熱水蒸気を利用した酸化物の低温合成 |
富士電機 | PM2.5分析技術 |
鶴岡高等専門学校 | 農業用低価格センサー開発と実証試験 |
小山高等専門学校 | 微生物による発酵食品の開発 |
福井高等専門学校 | 自立型除草ロボット |
茨城高等専門学校 | 栗皮むき機 |
富山高等専門学校 | 耐災害のための通信技術とソフトウェア |
開会に先立ちJSTの齊藤仁志副理事(産学連携担当)が、日中の産学連携の現状と今後の展望と期待について挨拶した。続いて日本側の各機関がパワーポイントを使って研究成果の内容を発表した。
写真1 北京会場での技術説明会
発表内容は、情報通信、環境保全、ライフサイエンス、装置、防災、農業など多岐にわたった。いずれも中国でも活用できる技術を意識して発表したものだ。
たとえば土壌の汚染からカドミウム米が市場に出回ることで、日中共に問題になっているが、福井大学URAオフィスの福山厚子研究員は、貝 化石による植物へのカドミウムなど重金属の植物へ吸収するのを抑制する研究成果を発表した。また福井工業高等専門学校の亀山健太郎准教授は、水田用の小型除草ロボットを開発した経緯を説明した。
堀場製作所の村田道生さんは、環境計測の最新技術の開発成果を発表した。PM2.5の質量濃度と元素濃度の連続測定装置など中国の環境対策にマッチした技術の提供で課題の解決に貢献したいと発表した。
まただれでも栗の鬼皮と渋皮を除去することに苦労している体験があるが、茨城高専の岡本修准教授は、栗皮むき装置の開発を発表した。日本では栗ご飯や栗を材料にした各種和菓子など栗を多く利用しているが、生 栗の単価が安く栗農家の収入が増えない。そこで熱を加えながら自動的に栗の皮をむく装置を開発した。この装置を使うと1個当たり15秒でむくことができるという。消 費電力を低減化し装置も小型化して小規模農家でも導入できる装置の開発を手掛けているという。
写真2 開会の挨拶をするJSTの斎藤副理事
写真3 済南市・山東大学での技術説明会
一方、山東省済南市でも5月10日に技術説明会を行った。会場は山東大学知新楼3Fホールで、多くの中国側関係者が集まり、北京と同じテーマの説明内容に熱心に聴き入った。
日本技術説明会(済南)発表機関・・・鶴岡高等専門学校、小山高等専門学校、福井高等専門学校、茨城高等専門学校、富山高等専門学校、高知大学、堀場製作所、富士電機(中国)有限公司、香川大学、電 気通信大学(TLOキャンパスクリエイト)、福井大学 (計11校、機関)