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日本の大学・高専発技術に高い関心 杭州で「研究成果・技術フェア」

2017年 5月16日 倉澤 治雄(中国総合研究交流センター上席フェロー)

 「日中大学フェア&フォーラム」は3日目の15日、場所を杭州に移して、日本の大学・研究機関による「研究成果・技術フェア」が行われた。

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写真1 研究成果・技術フェア メイン会場

 浙江省政府関係者からの祝辞の後、中国総合研究交流センターの有馬朗人センター長があいさつに立った。この中で有馬センター長は、「日本の科学技術は大問題を抱えている。か つて論文数で世界第2位だったが、今は第5位だ。日本の高等教育に対する財政支出はGDPのわずか0.6%で、OECDの中で最低だ。しかも国公立大学への交付金を毎年1%ずつ減額するという、最 もやってはいけないことをしている」と、厳しく警鐘を鳴らした。

 今回のフェアは浙江省科学技術庁の強いイニシアチブで実現した。周国輝庁長は講演で、北京で開催されている「一帯一路フォーラム」との関連に触れ、「今回のフェアは、習主席の提唱する『平和の道』『 繁栄の道』『開かれた道』『文明の道』という考え方に呼応している」と、開催の意義を強調した。

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写真2 周国輝庁長

 この後、凌雲経済与信息化委員会副主任が浙江省の経済状況を説明、日本側からは4名の専門家が講演を行った。

 独立行政法人中小企業基盤整備機構の渡部寿彦理事は、「中小企業は産業の基盤である」と述べたうえで、380万社ある中小企業のうち、140万社を黒字化させる「日本再興戦略」について紹介した。

 公益財団法人北九州産業学術推進機構の松永守央理事長は、高度成長期に大気汚染や水質汚染で悩まされた北九州が、約20年で公害問題を解決した時の取り組みについて当時の写真を示しながら紹介した。「 当時は息をするのも苦しかった。汚染を抑えることでGDPが上昇することから、グリーン・イノベーションと言える」と経験を語った。

 公益財団法人日本技術士会の奈良人司専務理事は、技術士制度について紹介した。その中で企業部門の研究者数が、2000年と比べて中国では17倍に伸びているのに対し、日 本では1.2倍でしかないと懸念を表明した。

 最後に科学技術振興機構の齊藤仁志副理事が産学官連携の取り組みの中で、2011年の東日本大震災後、被災地の企業を支援するため、震災復興センターを創設した経験を語った。齋 藤副理事は当時の写真を示しながら、「震災を風化させてはならない」と強調した。

 会場は、約400人の参加者であふれ、日中双方の講演に熱心に耳を傾けていた。

 午後行われた「技術説明会」には、香川大学、熊本大学、新潟大学、電気通信大学、福井大学、首都大学東京、岩手大学、東京理科大学、鹿児島工業高等専門学校のほか、合わせて15の大学・研究機関から、独 自に開発した技術の説明会が開かれた。食品関連技術、光触媒、新材料、それに機械関連のプレゼンが注目を集めた。

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写真3 香川大学農学部松本由樹准教授による技術説明

 また商談会には33大学・研究機関等が参加、中国側企業・大学とのマッチングや商談が行われた。

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写真4 シーズ展示会場

 食品関係のプレゼンを行った新潟大学のブースには、20社を超える企業、大学が列を作ったほか、同じく食品関係技術の紹介をした香川大学、医療関連の立命館大学、光触媒の東京理科大学、ロ ボット関連の和歌山大学など、10社を超える企業・大学から引き合いがあったという。

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写真5 新潟大学の展示物

 浙江省は習近平主席がかつて党委員会書記を務めたことから、イノベーションに賭ける熱意は強い。日本側参加者からは、改めて中国の発展の速度に驚きの声が聞かれるとともに、相 互信頼に基づいた協力関係の構築が重要との声が多く聞かれた。