日中大学フェア&フォーラム開催報告&資料
トップ  > イベント情報>  日中大学フェア&フォーラム開催報告&資料 >  【速報】日中大学フェア&フォーラム in イノベーションジャパン2017 - #03

【速報】日中大学フェア&フォーラム in イノベーションジャパン2017 - #03

2017年09月05日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

日本との協力に高い関心示した初出展大学

 8月31日、9月1日の両日、東京国際展示場で開かれた「日中大学フェア&フォーラム in イノベーション・ジャパン2017」の今年の特徴の一つは、初めて出展する中国の大学・研究センターが多かったことだ。主催者の科学技術振興機構(JST)が、これまで参加したことがない地方の大学に積極的に働きかけたことによるもので、30の出展大学・センター中、初参加が16と半数を超す。これら初参加機関の担当者からは日本の企業との協力・連携を望む声も多く聞かれた。

 多くの訪問者を集めた貴州省黔南民族師範学院のブースには、茶やイチョウの葉など20種類の植物から得た材料だけでつくられたヘアケア製品がずらりと並ぶ。学院が協力して設立された貴州苗源実業有限公司が開発した試作品で、同有限公司の鄭武栄総経理は「ヘアケアのほかにフケ防止と白髪染め効果もある。来月、商品として販売できる許可が下りる予定。日本のメーカーや商社でわれわれの製品の付加価値をさらに高めてくれるところがあればぜひ一緒にやりたい」と日本との協力に大きな期待をかけていた。

image

写真1 黔南民族師範学院のブース

 鄭氏の日本に対する関心は自社製品の売り込みにとどまらない。「日本の大学や企業のブースを回り、導入できそうな水処理技術を探した」と、水処理という中国で需要の大きい新たな分野での日本との協力にも強い意欲を示した。

 貴州省からは、貴州科学院所属の貴州省工程複合材料センターも初めて出展し、技術発表会でも陳興江主任がセンターの活動を詳しく紹介していた。センターの主要業務はポリマーに関する研究・製造だが、陳主任は貴州苗源実業有限公司同様、ヘアカラー(白髪染め)製品も紹介した。この製品は、市場に出回っている化学製品と異なり、植物からの抽出物しか使っていないのが、貴州苗源実業有限公司の試作品と共通の特徴だ。陳主任によると「発がんリスク、アレルギーを起こす化学物質を含まず、効果は化学的ヘアカラーに匹敵し、持続性はより高い」という。

image

写真2 貴州省工程複合材料センターのポスター

 日本企業との連携については、貴州省工程複合材料センターの期待も大きい。通訳として訪問者との応対に当たっていた張○(金が上に一つ下に二つ)さん(中央大学に留学中)によると、「貴州省では提携する企業が見つかりにくい」とのこと。「センターのヘアカラー製品は、アレルギーを起こす物質や重金属を含まず、髪の毛に浸入しやすい」ことを強調するとともに、提携できる日本企業の出現に大きな期待を示していた。

 技術発表会では、貴州省工程複合材料センターの他、同じく初参加の内モンゴル自治区対外科学技術交流センターやチベット大学もそれぞれ教育や研究活動に加え、国際交流の現状について報告した。内モンゴル自治区では故遠山正瑛・元鳥取大学農学部教授が砂漠の緑化に大きな貢献をしたことが知られる。尹暁紅内モンゴル自治区対外科学技術交流センター副主任は、遠山氏の業績に詳しく触れたほか、同自治区の豊富な資源の一つであるレアアースの輸出の半分が日本であることなど日本とのつながりの深さを強調した。尹氏は、日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)の意義についても詳しく述べるなど、日本との人的交流に対する期待の大きさも示した。

image

写真3 内モンゴル自治区対外科学技術交流センターによるプレゼンテーション

 初参加の大学・センターに対し関心を示した日本人訪問者も多い。薬草に関する仕事で海外に出かけることが多いという人が、チベット大学のブースを訪れ、チベット特有の薬草や食物について質問する姿も見られた。「初参加だったので、ブースの展示も大学全体の活動紹介が主になってしまったが、次回以降は、具体的な研究成果の紹介にも力を入れた方がよい」と、チベット大学のブースで対応に当たっていた中国人留学生が感想を述べていた。

image

写真4 チベット大学のポスター

 中国科学技術大学の出展ブースでは、同大学博士課程大学院生の申書偉さんが、今回の成果を次のように語っていた。中国科学技術大学は初めての参加ではないが、申さん自身は初の来日という。

image

写真5 中国科学技術大学のポスター

 「実物を持ってきた人の指の人工筋肉に関心を持ってくれた日本企業の人がいた。私自身としては日本の大学、企業のブースを見て、協力できる分野がいろいろあると知った。3Dプリンター、細胞再生、AI(人工知能)、医療ロボットなどだ。3Dプリンターでは実際に山形大学の方から協力したいとの話をいただいた」